55
今日も投稿出来ました。
「あの、お取込み中すみませんね。ちょっとお邪魔しますよ」
「なんだ、テメェは?」
「いえ、この家に用事があってきたんですけど、思わぬ犯罪現場に出くわしてね。おっさん、お前がやってんのは立派な犯罪だぜ? 警備を呼ばれる前にさっさと帰れよ」
「はぁ? 何言ってんだテメェは? おい、お前ら、そいつつまみ出して、ついでに小遣いでも貰っとけ」
「へい、おい、お前、俺らが金貸しのグスタフ一家ってこと分かって言ってんのか? ちょっとこっち来いやぁ」
そこにクロが割って入るが俺はそれを制止する。
「クロ、まだいい。ちょっと待て」
と男が殴りかかってきた。2,3発もらっておいた。ワザとだけど。
「このおっさん、突っ立ってるだけだぜ。あぁ? なんだ? 狼野郎?」
クロが男の後ろ襟首を持ちながら言う。
「ヒロシ様、もうよろしいですよね?」
「いいぞ、クロ。やっておしまい」
とその瞬間、男が入り口のドアをぶち破って飛んで行った。ドアが壊れてしまったようだ...死んでないよね?
「クロ、殺しちゃダメだよ?」
「こんなクズ別に死んでも良いかと、いえ、分かりました。では死なない程度に」
「このヤロウ何しやがった!」
他の2人もクロに迫ってくる。その手にはナイフが握られている。クロは余裕をもってその手を払うと、右足で男の腹の辺りを膝で蹴り上げる。明らかに男は蹴られた衝撃で宙に浮き、そのまま頭を掴まれて床に叩きつけられる。『バキッ』と言う鈍い音と共に床に穴が開き、男の頭が見えなくなった。死んでないよね?
「えーと、クロ? 殺しちゃダメだよ?」
「いえ、相当加減しているのですが...あまりの手ごたえの無さにですね...」
クロは首を捻っている? おかしいな? と言う感じだ。
「て、て、テメエら何者だ? グスタフ一家だぞ? テメエらどうなるか分かってんのか?」
「うーん、この状況でどうなるか分かってんのかって聞かれてもな。お前は分かってんのかね? まぁ、いいや。こっちはクロに任せるよ。俺はあのブタの相手をしてくる」
「分かりました」
とブタのグスタフの方に振り向いた時に後ろから鈍い音が何回か聞こえて静かになった。グスタフは立ち上がりながら何か喚いている。
「このヤロウが! 誰だお前らは? お前ら仲間に襲わせてやるからな? 昼も夜も一日中狙ってやる!」
「そう言うのは後で聞くから早くそこをどけよ」
俺は腹に軽くパンチを入れ、頭が下がったところを横から顔面を蹴りつけた。グスタフは錐揉み状にすっ飛んでいき、壁を破壊して半分抜けた辺りで停止した。あれ? 死んでないよね?
「大丈夫かい?」
俺は身を起こしかけている女性に声を掛けた。
「ありがとうございます、本当に助かりました。でも申し訳ありません。恥ずかしながらお金がないもので、あなたにお礼をすることが出来ないのです」
「あぁ、そんなことは気にしなくていいよ。ちょっとあなたに会うためにカールに連れてきてもらったついでだ」
「カールに?」
「あぁ、そうだ、カールお前よく飛びかかっていったな。偉いぞ! でも、危ないから無理はしちゃダメだけどな」
「ありがとう、おじさんと狼のお兄さん。本当に助かった」
「「ありがとうございます」」
2人の姉妹もお礼を言ってくる。しかし、クロはお兄さんで俺はおじさんか。まだ30前のはずなんだけど。まぁいいか。
と、そこに警備が入ってきた。誰かが騒ぎを聞いて通報したのだろう。
「何事か!」
「警備の方ですか、私はクロードと申します。そちらの男たちがこの家で暴れている所を偶然に居合わせまして、彼女たちを助けたところです」
「む、そうか。しかしお前はなぜこんな場所にいる? お前もそいつらの仲間ではないのか?」
「仲間じゃねぇぜ警備の旦那! 俺たちこの女に金を貸してるんだ。その話をしている時にいきなり後ろから襲ってきやがったんだ!」
グフタスと他の男が目を覚ましたようだ。
「どちらの言い分が正しいかは詰め所でゆっくり聞かせてもらう。おい、お前たちこいつらを捕縛せよ」
隊長らしき人間が声を掛けると控えていた他の警備のメンバーが近寄ってきた。
「仕方ないですね、あなたが隊長で間違いありませんか?」
「そうだ。こら貴様、懐から手をどけろ!」
「違います、武器ではありません。これです」
クロは懐から一枚のメダルを取り出した。
「貴様! バカにするな! ロングフォード家直轄のこの街で、賄賂など受け取る者など居らんわ! 引っ立てろ!」
「流石です、感服しました。なら尚の事このメダルを見た方が良い。あなたのような人間が間違ってはいけない」
「なに? メダルなぞ...こ、これは! あなたは男爵家の人間ですか、いや、ございますか!」
クロが見せたメダルは上流階級だけが発行できる特殊なメダルである。メダルは男爵階級から持つことが出来、様々な用途に使用することが出来る。このメダルを持つ者は、この場合男爵家、または男爵家が認めるごく限られた者だけとなる。そのメダルを持つ者に不敬を働いた場合それはそのまま男爵家に対しての不敬となる。
「私はクロード、執事です。こちらのヒロシ様が、ゾイド・ロングフォード男爵より賓客として迎えられております。このメダルはその証。それを強盗とは些か彼らも度が過ぎるというもの」
「まさに本物。ロングフォード家の家紋も入っている。と言う事は、こいつらが嘘をついていると言う事か。男爵家を強盗呼ばわりとは貴様らタダでは済まされんぞ!」
「いや、違う、男爵家なんて知らなかったんだよ。なぁ、おい、助けてくれ! おい! お前聞いてんのゴハッ!」
あ、隊長が怒った。グスタフをぶん殴ったぞ。
「ロングフォード様の賓客に対して何たる口の利き方だ! 早く連れて行け!」
「彼らはヒロシ様へ直接的な暴行を加え、また我々の友人の女性にあらぬ借金をでっち上げ乱暴しようとしておりました」
「違う! 借金は本当にあ、ガハッ」
あ、隊長がまたグスタフをぶん殴ったぞ。
「黙れ! 貴様、男爵家ゆかりの者に暴力など...許せん! その首、明日まで繋がっていると思うな!」
警備たちは男たちを連行していく。
「それでは、ヒロシ様、クロード様、我々は失礼致します。何かあれば詰所まで来てください」
「隊長殿、大変助かりました。これで皆を労って下さい」
クロードはポケットから銀貨の入った小袋を取り出し隊長に握らせる。
「い、いえクロード様、このような...」
「これは賄賂でもなんでもありません。迅速な対応をして頂いたお礼です。受け取って頂かないと私が旦那様に怒られてしまいます」
「そうですか...では有難く頂戴致します。では、失礼させて頂きます」
隊長は見事な敬礼と共に去って行った。
引き続きよろしくお願い致します。