表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/362

今日最後の投稿となります。

 なんだこれは。もう何度目だろうか、このセリフ。でも仕方ないだろう。拡げた地図には大陸がある。海もある。山もあるさ。恐らく世界地図だろう。でもそれは俺が知っている世界ではない。


 そもそも日本がない。


「どうした? それでお前はどこから来たのだ?」


「ない」


「ない?」


「いや、無いというかなんと言うか、この地図には載ってないようだ」


 どうする? 言うか、考えつくことを。しかし、自分でも状況が飲み込めない今、全てを話すのは正解なのか? 俺は考えた末に答えた。


「東の遠い島の出身なんですがね。田舎者でどの辺りかまではちょっと......」


 どうだ?


「ふん、まぁ良い。見たところ盗賊やらの類いではなさそうだしな。ここ最近物騒なんでな。気を悪くせんでくれ」


 そういうとじいさんは棍棒の柄を持ちかえて、ドスンと床に置いた。重そうだな。よくじいさんが持てるな。床に置いたとは言え警戒は解いてなさそうだが。


「ここにくる予定だったのかしら?」


「いや、日本に帰る途中だったはずなんですけど......」


「小僧、名前は何と言うのだ?」


「相原比呂士です。あ、苗字が相原で、名前が比呂士です」


「苗字があるのか? 小僧はそのニホンという国の貴族か?」


「いえ、そういう事はないですけど」


「小僧、今起きたばかりだがもう少しここで休んでいると良い。だが明日にはギルドに一緒に来てもらうが、良いな?」


「ギルド......ですか? はい、わかりました」


「では、そうだな、しばらくしたらまた来るからもう少し休んでおけ」


-------------------------------------------------------------------------------------


 1階に下りた後、ゾイドとソニアはリビングで向かい合っていた。


「どう思う?」


「まぁ、そうねぇ。悪い人ではないとは思うわ」


「それは同感じゃ。悪党から出る独特の悪意ってものは感じられん。だがいくつかおかしな点もある」


「そうね、まずはニホンという国ね」


「そうだ、意識しているのかどうなのか分からんが、本当の事は話していないように思える」


「それも同感だわ。嘘をついてないとすると、話せないのかしら?」


「それも分からん。ただ地図を見てニホンが無いと言ってたじゃろ? あれはおかしい。そもそもニホンと言う国に帰る人間が地図にも載ってない国に飛行船で帰るじゃと? 飛行船が飛ぶ国じゃぞ? 町や村なら地図に載ってないのもまだわかるわい。しかし国が載ってないってことはありえん」


「そうねぇ」


「またどこから来たかも分からんと言う。記憶喪失でもないようじゃがこの国も知らんと言う。隣国についてもじゃ。おそらく奴はあの地図をみても何にも分からんかったんじゃないかと思う。だがあいつは言葉が通じるじゃろう? 何故通じる? たまたまニホンという国と同じ言語だったというのか? ありえんわい」


「この大陸は共通言語だけどねぇ。確かに何故話せるのかしら? 本当はやっぱり貴族で高度な教育を受けているんじゃないかしら?」


「そうなのかのぅ。だがそのわりにはギルドも知ってるかどうか怪しい感じだったように感じた。高度な教育を受けたものがギルドも知らないのか?それともニホンにはギルドが無いとでも言うのかの?」


「でもこの大陸の人間でないことは本当の事かも知れないわ。かわいい顔をしていると思うけど、顔の形と言うのかしら? この国や大陸の顔立ちではないと思うわ。あと、服装にしてもそう。あんな服や靴なんて初めて見たわ。ここはいろんな街や時には国から冒険者が立ち寄るけど黒目、黒髪なんて人は初めて見たもの」


「わしも長い事生きておるが、小僧のような人間は初めて見た。が、実は奴のよく分からん話の内容と黒目、黒髪という事を踏まえて少し気になるというか思い当たる事があるにはあるんじゃ」


「そうなの? なによそれって?」


「まぁ、ご先祖様のレベルの話じゃ。」


「もしかして勇者とか、魔族とか言う話じゃないでしょうね?」


「うむ、実はそれと似たようなものなんだがの。ご先祖様の話じゃ」


「ご先祖様の話は知らないけど、魔族とか勇者はちょっと飛躍し過ぎじゃないかしら? 確かに勇者や魔族の中にはこういう特徴を持った者がいたと聞くわ。でも見た感じなんていうのかしら? そういう乱暴な人には見えないわ。まぁ人それぞれでしょうけど」


「それはワシもそう思う。魔族ならとっくに暴れててもおかしくないからの。後で本人に聞いてみるのが一番早いか。本当のことを話すかどうか分からんが」


「その後どうするの?」


「内容にもよるがやはりギルドに連れていくしかないのう。その後で小僧の処遇については自然と決まっていくであろうよ」


「そうね。あら? シェリーは?」


「今そこにいたが、ロイの所に行ったんじゃないのか?」


「ロイもそろそろ起こさないと。おじいちゃん続きはまた後でね」


 ソニアは立ち上がるとロイの部屋へと歩いて行った。その姿を見ながらゾイドは独り言ちる。


「アイハラ ヒロシか......あと気になるのは名前じゃな。苗字持ちであるが貴族ではないという。更に名前自体も相当珍しい。隠すならわざわざ突飛な名前は名乗らないはずじゃしの。遠い昔の話とはいえご先祖様の話も気になる。ただの気のせいで済ませてよいものか......」


 ソニアがロイの部屋に向かう途中、彼のいる部屋から声が聞こえてきた。シェリーの声だ。


「それでね、お母さんはまだシェリーは一人でお買い物に行ったらダメだって。シェリーはもう大丈夫なのに。ロイもそう思うでしょ?」


「ぼく分かんない」


「もう!」


「はは、シェリーちゃんは大丈夫かも知れないけど、お母さんの言うことは聞かなくちゃいけないよ?それにおじいさんも言ってたけど外は危ないみたいだよ」


「でもね、シェリーは本当に......あっ、お母さん!」


「ここに居たのね。あら、ロイも。ごめんなさいね、迷惑じゃなかったかしら?」


「いえ、もう頭も冴えてきてますし痛い所もないので大丈夫ですよ。むしろ話し相手になってもらえて僕も嬉しかったです。お二人とも賢いお子さんですね」


「ありがとう、そういってもらえると嬉しいわ」


「ソニアさん......ですよね。改めてお礼を。本当にありがとうございます。倒れてたのであればそれこそ強盗にあってもおかしくなかった。こんなどこの誰とも知らない僕を保護して頂いて本当に感謝しています」


「いいのよ。家の前で倒れているのに放っておくわけにもいかないでしょう?それにおじいちゃんもあんなだけど、一日くらい休ませても大丈夫って言ってたし。おじいちゃんが見ず知らずの人を泊めるのって珍しいのよ? 昔は元冒険者でそれなりに腕もたつ方だったから大丈夫と思ったんじゃないかしら?」


「あ、そうなのですね。おじいさん......は確かゾイドさんでしたっけ」


「ええ、両親は私が小さい時に死んでしまったの。その後祖父母に育てられてね。祖父は冒険者で祖母は昔は食堂兼宿屋を切り盛りしてたの。ここのことよ? 名前はレザリア。今は食堂で朝食の用意をさせているわ。あとで紹介してあげるわね」


「ありがとうございます。よろしくお願いします。ここ宿屋だったんですね」


「そうよ。まぁ色々あって少しずつ大きくなってね。さ、シェリー、ロイ、朝食の準備がそろそろできるから行くわよ。ヒロシさんにはあとで持ってくるようにしますね」


「いえ、ソニアさん。僕はもう大丈夫ですので一緒について行って構いませんか?」


「あら、本当に? ならいいわよ、ついてきて。」


 そうして俺は皆と部屋を出て食堂へと移動した。




読んで頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ