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投稿出来ました。
今日はこれで最後です。
「気が付いたか?」
「ヒロシ様...」
「あいつは...ジャギルは?」
「あそこで今ケビン様たち冒険者組と警備隊が残党を捕まえている。アイツは今しがた連れていかれたよ」
「そう...ですか」
「あのまま俺が殺しても良かったんだけどな。これまでの罪を考えると、男爵家に任しておいた方が良い。それに、お前はよくやった。ギリギリの勝負だったがお前は見事に仇を取ったんだ」
俺はワシャワシャとクロの頭を撫でてやった。クロは嫌がるわけでもなく身を任せている。
「あの時、意識が飛びそうになった時ヒロシ様の声が聞こえました。あれが無かったら僕はどうなっていたか分かりません」
「そうか...死線を越えて、お前はこれからまだまだ強くなる。お店の事も含めてこれからもよろしく頼むよ。まぁ、今は傷を癒せ」
俺がニカッと笑うと、クロもつられたようにニコッと笑った。
「あ、ここに居たのね?」
サティがやってきた。
「どうなの?クロ大丈夫なの?」
「あぁ、大丈夫みたいだな」
「サティさんにもご心配をお掛けしました」
「気にしなくて良いのよ。格上の相手にあなたは良くやったわ。ただ次からはもう少し楽に勝って頂戴ね。見てるこっちがハラハラしたわ」
「はは、サティ様はお厳しいですね。はい、これからも頑張ります」
「ふふ、そうね、獣人化できるようになるまでは鍛えてあげるわ」
「ヒロシ様、少しよろしいですかな?」
セバスさんがやってきた。後ろには暁の砂嵐の4人がいる。
「暁の皆さんが、是非ご挨拶にと」
「え?いいよう。そんなのガラじゃないですよ」
「ダメよ。何言ってんの?しっかりしなさいよ」
サティに突っ込まれるヒロシ。
「あの、ヒロシ様、オレ、暁の砂嵐のリーダをやってる。コビーと言います。ポジションは戦士です。こっちがダン。盾役です。『はじめまして』で、こっちがルナ、ヒーラーです。『初めまして...』、最後にこいつがロビン、魔法使いですが、ヒロシ様とは面識があるの...かな?」
「そうだ、アニキは俺の心を正気に戻してもらった恩人だ。アニキ、その節は本当にお世話になりました。俺...勇気を出してギルドに言って良かった」
「そうだな、お前は芯まで腐ってなかったってことだ。まぁ、これからはしっかりと頑張る事だ。それがお前を心配してくれてる人たちへの罪滅ぼしとなる」
「はい、アニキ!俺、頑張ります!」
「質問させて欲しい事は色々あるんですけど、ロビンとは何かあったんですか?」
「ああ、ちょっとな。でもそれは俺から話すべき内容じゃないと思うから、気になるなら後で本人に聞いてくれないかな?」
「は、はい。あと、サティさんと...」
「そうです!」
横からルナって子がコビーを押しのけて出てきた。コビーの顔が『ちょっと突然どうしたの?』って顔になってるぞ。この子はなんだろう、見たまんまなんだろうな。兎の獣人だ。大きめの耳がピンっと立ってる。あれ???もしかして怒ってんの?
「ヒ、ヒロシ様とサティお姉さまはどういうご関係なんですか!」
おっと、非常にセンシティブな問題にいきなり触れちゃうかね? 剣を捧げる意味を聞いてからこっち、俺は返事を保留したままだ。今は全力で避けたい、その話題は。セバスさんカモーン! プリーズ! と思ったら、サティが出てきた。
「ルナ、久しぶりね。でも、その質問はダメよ?」
「お、お姉さま。でも...」
「ダメよ。ダメなものはダメなの。ね?賢いルナならわかるでしょ?」
サティは手の裏側でそっとルナの頬を撫でる。
「あう。お、お姉さまぁ...」
ルナは真赤になって黙ってしまった。うさ耳がへにょんと垂れたぞ。何か俺は見てはいけないものを見てしまった気がする。そう、めくるめく百合の世界を。
「ヒロシ様は冒険者なのですか?」
ダンが聞いてきた。寡黙そうな男だ。まさに盾役って感じの男。結構鍛えてるな。良い体つきをしている。違うぞ? 俺は薔薇ではない、決して。
「冒険者の登録はしているが、はたして冒険者と言えるかどうか」
「しかし、先ほどの戦闘を見せて頂いた限りではかなり高ランクの方とお見受けしました」
ダンは見た目通りお堅い?と言うか礼儀を重んじるタイプのようだな。印象は悪くない。そして責任感の強いコビーがリーダーか。上手く他の3人をまとめている感じがする。
「レベルについてはよく分かってないんだよ」
「あの、それでは一度近い内に僕たちのパーティーと模擬戦をして頂けませんか?」
流石コビー。手っ取り早く来たね。
「うーん、どうしたものか」
「お願いします、ほら、ダン、お前からもお願いしてくれ!」
「ヒロシ様、もしよければ是非一手ご指導頂ければ幸いです」
「ロビン、お前も言え!」
「アニキがダメなら俺からは無理に言えねぇ」
「おまえ、ホント何があったんだよ?いや、今は良いか。ルナ! お前からもって...ルナもダメか。サティさんとのひと時を邪魔したら機嫌を直すのに時間が掛かる...クソッ。ヒロシ様、この通りお願い致します!」
ルナって子、さっきからサティに抱き着いてずっと胸のあたりに頬ずりしてんだよな。サティも髪の毛を撫でてあげてるし。邪魔しちゃイカンって雰囲気は確かによく分かる。
「まぁ、手の空いている時なら別に模擬戦位ならいいよ。でも、俺もサティと同じでパーティーとか組んでないからなぁ。その辺は後で考えるか」
「ありがとうございます!でも冒険者で普段活動していないってことは騎士様ですか?それとももっと上と言うか、別の職業と言うか...」
「騎士? 騎士なんてとんでもない! 俺は『Nameless』っていうお店の社長だ。大きな宿屋で『銀龍の鱗』ってあるだろう? あの隣に店があるからいつでも来てよ」
「へ? お店の社長? 商店の会長って事ですよね? まさかこれだけ強い人が商人だったなんて...」
そう、俺はひょんなことから異世界にきて社長になった男だ。
これで一旦区切りとなります。
お付き合い頂きありがとうございます。
次回からは別視点でのお話が少し続きます。
引き続きよろしくお願いします。