表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/362

35

この話からしばらく違う視点が混ざります。

上手く着地できるように頑張ります。

 俺の名前はコビー。


 このアルガスで冒険者になって10年、15歳で成人してから近くの商店で働いていたが、冒険者になる夢を忘れられず17歳でアルガスの盾の門を叩いた。最初は簡単な依頼をこなしつつ俺は体を鍛えた。


 そしてついにレベルは40を突破し、俺は気の合う奴らとパーティーを組んだ。パーティー、『暁の砂嵐』はこれから更なる高みを目指していく。


 同時期に冒険者になったこいつらとはお互い切磋琢磨し高め合ってきた。Dランクパーティーになっても俺たちは決して浮かれず更に上を目指すために励んだ。ダンはタンク、ルナはヒーラー、ロビンは魔法使い、そして俺が戦士だ。


 毎晩のように酒場で将来の夢を語り合い、共に笑い、共に泣き、時には喧嘩もした。だが俺たちは常に繋がってるとそう信じあえた。


 少し風向きがおかしいと感じ始めたのは1年ほど前からだった。ロビンがギャンブルにのめり込みはじめた。最初は少額で俺たちも笑い飛ばす程度であったが、ロビンは毎晩のように賭場へ通うようになった。基本俺たちは互いの金はきっちり4等分してお互いの使い道には関与しない。そう言う約束だった。


 とは言え、その異常なほどの傾倒ぶりに心配するなと言う方がおかしい。俺はリーダーとして彼に状況を聞いた。だが大丈夫、心配するなと言うだけだった。


 日を追うごとにロビンの顔つきは変わっていった。魔法使いとしては陽気な彼であったが次第に無口になった。怒りっぽくなり、とうとうルナに金を無心するようになった。


 そして俺はパーティーの会議でロビンを問い詰めた。俺たちには目標がある。お前は何をやっているんだ?もう少しでCランクになれるかもしれない。でも今のままじゃダメだろうと。


 元々短気なロビンは激昂した。自分の金を好きに使って何が悪い。お前たちのように冒険ばっかりやってられるかと。金さえあれば危険な冒険もしなくて済む、賭場では俺みたいな男にも女がすり寄ってくる。金だ、金なんだと。

 

 俺たちの話は平行線のまま終わった。まさかこんなことで、こんなことで俺たちのパーティーが解散の危機を迎えるなんて想像もしていなかった。ロビンが出ていったあと俺たちは誰も口を聞かなかった。


 ルナはギルドに行くと言い出した。ルナの敬愛するサティさんに相談したいと。


 サティさんはギルドの冒険者兼ギルド長の秘書をやっている狐獣人の女性だ。パーティーは組まずフリーの冒険者で、25歳の若さでその強さはレベル50以上は間違いなく、ソロでもAランクに届く強さはあると言う噂だ。


 女性冒険者ならだれもが憧れるクールビューティー、それがサティさんだ。男性冒険者に限らず街の金持ち連中からも、数々の求愛を受けているが、その全てを袖にしている。まぁ、彼女ほどの女性を惚れさせることが出来る男性がこの世にいるのか疑問に感じるほどだ。


 ルナがどんな話をサティさんにしたのかは聞いていない。ロビンの賭場通いも暁の砂嵐にとってマイナスと映るかもしれない。でも、俺たちはロビンを放っておけなかった。


 サティさんが言うには、そう言う人間が何か変わろうとしたら、根底から自分を覆すほどの強烈な()()()が必要だろうと。周りが何を言っても無駄だと。自分が何より変わりたいと言う強烈な意志の力が必要なんだと。きっとそうなんだろう。だけど俺たちには......その方法が分からなかった。


 そんなある日、ロビンが仕事を持ってきた。儲かる仕事があると。男爵家の積み荷をウエストアデルに運ぶまでの護衛だ。報酬は金貨200枚。破格の値段だ。4人で割っても金貨50枚。


 数年は仕事をしないで済む金額だ。金はウエストアデルに到着後、即金で払うとの事。守るべきは積み荷と金貨200枚。大きな仕事だ。


 しかし、ウエストアデルまでの道は険しく盗賊が出るとの話もある。魔獣もいるだろう。俺たちは悩んだが、結局この話を飲むことにした。片道10日ほどかかる予定だが、全く商人が行き来しないのかと言えばそうではない。


 旅人も行きかっている。大丈夫だ、そう自分にも皆にも言い聞かせた。その間ロビンが賭場に行かないだけでも良いかとも思った。何かのきっかけになれば良いと思ったんだ。


 そして当日。俺たちは門の前に居る。


 男爵家の馬車はすごく立派で、俺たちはその横を馬に乗って伴走する。積み荷は馬車の中に入れているが大切なものなので決して開けないようにと厳命された。それはもちろんだ。依頼主の言う事には従うさ。


 御者はセバスチャンと名乗った。カイゼル髭が似合うダンディな紳士に見える。そして隣にはローズと名乗るメイドさんが居た。日々の料理も含め身の回りの事は彼女が対応してくれるとの事。大変恐縮であったがセバスチャンのご好意に結局甘えることにした。


 頑張らないとな。俺は皆と決意を新たにした。


 あとロビンは左の頬がかなり腫れている。依頼を決めた日はロビンが受付に行ったのだが、その次の日に会ったら顔が腫れていた。それはそれはすごい腫れ方だった。一瞬、誰だか分らなかったほどだ。


 理由を聞いても何も答えず、警備に相談に行くかと言っても拒否され、結局その日は日時だけ確認をして解散となった。ロビンはその後熱が出て2日ほど寝込んだそうだ。あれからまた数日が経ったが腫れは引かずどす黒く変色している。


 まさか賭場絡みで借金がかさんでいるんだろうか。何かおかしなことに巻き込まれてなければいいんだが......俺たち3人は心から心配した。


 男爵家側は特にその事について何も言ってこない。冒険者とは危険な稼業だからこんなこともあるのかと思ってくれているのかもしれない。


 そして俺たちは出発した。




お読み頂きありがとうございます。

評価やブックマークを頂ければ励みになります。

どうぞよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ