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「おお、サティ戻ったか! どうだヒロシは居たのか? ん? おおどうした! ヒロシは気を失っているのか? 大丈夫なのか!?」
サティに抱えられたヒロシを見てシュバルツ王とダルタニアス王が叫ぶ。
「はい、大丈夫です。気を失っているだけの様です。森の近くで倒れておりました。恐らくは......えっと、何故かしら?」
上手く言い訳の思いつかないサティに助け舟を出したのはセントソラリスのセリーヌ女王であった。
「アネスガルドのファティマが放った魔法に巻き込まれていたのが見えた。恐らくその余波で飛ばされたのではないだろうか?」
「え? ええ、そうかも知れないわね。きっとそうね」
「彼がその商人のヒロシと言う者なのですか? 彼はアネスガルドの陰謀を暴き今回の作戦の大功労者と聞いております。また様々な知恵をお持ちだとか?」
横から顔を出したのはアネスガルドのキャサリン王妃であった。
「ええ、彼がヒロシです。そしてこちらは彼の執事であるクロードです。もう一人護衛のシンディがいるけど彼女は......えっと、彼女はどこに行ったのかしら?」
上手く言い訳の思いつかないサティに助け舟を出したのはノール長老であった。
「彼女は今サーミッシュと共に彼の奥方様であるソニア殿を迎えてに行っておるはずじゃ。きっと会いたいだろうと思うての」
「え? ええ、そうなのね。そう言う事だわ」
そんなこんなで無事合流を果たしたヒロシ達。セリーヌ女王とキャサリン王妃から謝罪や感謝の言葉を受け取ったシュバルツ王とダルタニアス王は、まずはまだ混乱が静まらぬアネスガルドの王都ハイランドにドルスカーナと協力して騎士団を配置する事を約束。そして復興に際して必要に応じて協力を惜しまない事も改めて約束した。
今後の復興に関してはまずはセントソラリスで関係者による会議を行う事を取り決め、両陛下は人員も含めた援助体制を纏めるため一度自国へと戻る事を決めた。
セントソラリスへ残る者はドルスカーナよりロッテン内務卿、リンクルアデルからはゴードン内務卿とNamelessのメンバー、そしてヒロシ達である。アンジェとボニータについても両陛下の説得空しく、最終的に残る事が決まった。
二人の内務卿はその任を一時的に他の大臣及び両陛下が代行する事により、まずはセントソラリスとアネスガルドに対して何が出来るのかを協議し進めるため、この地にヒロシ達と残るように両陛下より命令が下されたのだった。
そして話が終わるとノール長老はアリアナを連れて森へと向かう。掟を前面に押し出し詳細を話すことを避けた長老であったが、彼女を連れて竜族に会いに行く事は明白であった。
少数民族サーミッシュのノール長老は最後までエルフの姿にならなかった訳であるが、それを差し引いても今回果たした役割は大きく、サーミッシュ、いや、天使が舞い降りる大森林にあるドルツブルグは改めてその存在感を世界に示したと言えるだろう。
リンクルアデルとドルスカーナ両陛下は飛行船に乗り帰路へと着く。両陛下の取った行動と彼らの部隊の活躍は同じく吟遊詩人に謡われ、特に無類の強さを誇ったロイヤルジャックであるアッガスとボニータ、そして冒険者サティの話は一際大きく伝えられた。
また、聖騎士アリアナを守るため、一番最初にその剣を抜いたウインダム一番隊隊長であるセイラムは、その美しい戦闘衣装と能力そして騎士道の鏡として民衆から多大な人気を博す事になる。
アネスガルドには暫定的に今いるウインダムとロイヤルジャックが交代要員及び増員が来るまで滞在を継続。その間に三大鬼やファントム達と共に王妃のサポートを行う事が決まった。
そして数日後には取り決め通り話は進み事態は収束してゆく。その中でセントソラリスでソニアと再会したヒロシもまた喜んだ。来訪時に賓客扱いとされたソニアと子供達であるが、長居してはこれから始まる復興活動の邪魔になるとの判断から長期の滞在はせずあくまで短期としたのだった。
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実はブリザードの被害がなくなりアネスガルドからの陰謀から解放された今、復興に向け尽力すべきはセントソラリスではなくアネスガルドであった。
ノーワンが推し進めた民族至上主義により各国へと戦闘活動を進めた結果で国力は大きく低下しており、また自国に魔獣を解き放った事による被害は甚大。更に王が崩御している事や内務を司る者の不在などキャサリン王妃からすると出口の見えないトンネルに放り込まれたようなものであった。
セントソラリスは自国の復興よりアネスガルドを優先してもらうよう会議の中で進言した。キャサリン王妃は涙を流しながら感謝を伝え、またリンクルアデルとドルスカーナもそれに賛同する形となった。
復興作業が進み始める中、しばらくしてアリアナが仲間を連れてセントソラリスへと戻ってきた。その仲間とは竜であった。
突然セントソラリス上空に現れた竜に城内は一時騒然となる。城内広場へ降り立ったその竜の背にアリアナを見つけ彼女の帰還を知ったのである。その掟より多くの事を語る事はなかったが、アリアナの記憶は戻っていた。
本来竜族は下界での生活を許されるものではないらしい。しかしこれまで記憶を失ったアリアナを手厚く保護してきたセントソラリスへの大恩の礼としてアリアナのセントソラリスへの生活が認められたのだった。
本来覆る事がない掟がこの時に認められた理由......そこにはノール長老より竜族の長へとヒロシの話がされているのだが、その場でその件について語られる事はなかった。アリアナ帰還前にノール長老、竜族そしてヒロシとの会合があった事はアリアナさえも知らない事であった。
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復興作業が進むにつれ街は活気を取り戻してゆく。アネスガルドの街並みは美しく蘇り、復興を足掛かりに他国への友好関係も深まってゆく。
アマデウスが森へと消えた後、それ以降その姿を見た者は誰もいない。目撃情報は数あれど表舞台から姿を消したのは大国を揺るがすような事件が起きていないからかもしれない。
各国に悪魔に対しての神託が降りたという事もなく新たに悪魔が顕在したという話もない。国や街はその輝きを取り戻し、民は当り前の日常へと戻っていく。
そして月日が流れ......今
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