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「ぐおおおおおおおお!」
森の中へ消えた三人であるが、その姿が完全に森の中へ消えた途端ヒロシが馬上から転がり落ち苦しみ始めた。
「ど、どうされたのですかヒロシ様! どこか? どこか痛むのですか!?」
「シンディさん、放っておいても大丈夫です。アレですよ。カッコつけすぎた反動ですよ」
「苦しそうですが大丈夫でしょうか?」
「ええ、それはそれは苦しい事でしょう。それほどまでに今回はやらかした感がありましたからね......」
「例えば?」
「まあ一つ目は、アマデウスですかね」
「ギャアアアアアア!」
「しかしそれはヒロシ様が言ったわけでは......」
「だけど皆がそうと認識してしまいましたからねぇ......否定の仕方も温いんですよ」
「確かに。他には?」
「天使たちが作った花道を歩いてしまった事もそうですねぇ」
「クオオオオオオオ!」
「しかしそれもヒロシ様が頼んだわけでは......」
「だけどその中を歩く様を見る限りまんざらでもなかったでしょう? ちょっと悦に浸ってた感は否めません。まんまとノール長老の策にネギを背負って飛び込んだ形ですね。カモですよカモ。その手に鍋とダシまで持っているんじゃないかと思うほどでしたからね」
「確かに。他には?」
「もうやめてくれぇぇぇぇ!」
転げまわるヒロシを横目にシンディは冷静にクロへと質問を投げ続ける。普段は空気の読めるシンディではあるが今だけは好奇心の方が勝ってしまっているようであった。
「『セントエルモに火を灯せ』ですかね」
「グヒイイイイイィィィ」
「あれは確かにご自分で言っておられましたね」
「おまけに大聖堂発言ですからね」
「ええ。大聖堂の名称まで指定する徹底ぶりでした......」
「フオォォゥゥゥゥヒィヒィ」
「極めつきがあります」
「なんでしょうか?」
「こいつはスゴイですよ、破壊力抜群です。それらに関する事ですが、あろう事かご自分で......あっ、サティさん。追いかけてきてくれたんですね」
クロが振り向くとサティがホスドラゴンに乗って追いついてきていた。
「ええ。クロちゃんもシンディも今回は本当お疲れ様だったわね。え? ええ、シュバルツ陛下とダルタニアス王にも断ってきたから大丈夫よ。ここまではサリエルに通してもらったのよ。彼らはエルフの姿でおまけに天使の装束だったでしょう? ヒロくんが消えたら彼らも消えないと」
そこでサティは横でグッタリしているヒロシを見つけた。
「で、どうしたのよヒロくんは?」
「確かに天使達も消えた方が良いのでしょうね。あ、ヒロシ様ですか? いえ、実は斯々然々で今ヒロシ様が苦しくなっている理由をシンディに話していた所ですよ」
「なるほどねぇ。でも大丈夫? ヒロくん痙攣してるじゃない」
「おほほぉぅ。サティ......来てくれたのか。コイツを......コイツを止めてくれぇ」
「まぁ自業自得とはいえ、クロちゃんもそろそろやめてあげなさいよ」
「そうですね。それではこの辺にして......」
「それよりヒロくんどうするのよ? 自分で『おかしな商人に頼め』とか言っちゃって。アナタ何考えてんのよ? 大丈夫なの? おかしな商人ってヒロくんの事でしょ?」
「あっ、サティさんそそそそれは!!」
「ギヒイイイイイィィィ!」
「なによ? あっ、ちょっと大丈夫? しっかりしなさいよ! ヒロくん? ヒロくん!?」
「サティさん、それは今回の目玉に相当する発言ですよ......」
「そうだったのね......気を失ってしまったみたいだわ。仕方ないから運びましょう」
「ま、まさか気を失ってしまうとは。サティさん、ヒロシ様が本当にお強いのかたまに分からなくなります」
「シンディ、それでいいのよ。ヒロくんはこれ位が丁度良いのよ。でしょ?」
「そうですね。そう言えば虫もお嫌いでしたし。確かにこのようなヒロシ様の方が安心できる気がします」
「そう言う事よ。えーとそうね。折角森を通れるんだからアネスガルドへ戻るより一度ドルスカーナへ行ってソニアを拾いましょう。サリエル良いかしら?」
「もちろんでございます。奥方様もお喜びになりましょう。しかし皆様が戻られるのが遅れるのもよろしくはないでしょう。ここはスーハイミに迎えに行かせては如何でしょうか?」
「そうね......ありがとう、助かるわ」
「サティさん、それでは私もスーハイミさんに着いて行ってソニア様を迎えに行きます」
「シンディ、ありがとう。確かにそっちの方がソニアも安心するわね。そうしましょうか」
「はい。それでは行って参ります」
そうして、シンディはスーハイミと共にドルスカーナへと向かった。そしてサティにお姫様抱っこされてグッタリしいるヒロシ達は来た道を引き返し皆達と合流を果たすことになる。
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