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354 アリアナの秘密

お待たせして申し訳ありません。

よろしくお願いします。

 アリアナを探すようにマスカレードは辺りを見回しながら言う。我に返ったセリーヌ女王は意を決して声を上げた。


「アリアナ? ええ、もちろん。アリアナ! こちらへ!」


「陛下、私は今そこへ出られるような姿ではありません。何卒ご容赦を......」


 傷は治っているようだが、アリアナは変化が解けていなかった。彼女はその醜い体をマスカレードの前にさらしたくないのだろう。


「そこにいるのか? すまないがこちらへ来てくれないか」


 アリアナはその場で少し逡巡したものの、やがてマスカレードの前へと歩いて来た。


「ア、アマデウス様。申し訳ございません。とんだお目汚しを」


「お目汚し? 何を言っているのだ? お前を見て醜いと思う者などどこにもいない。それに俺の事はマスカレードと呼んでくれないか? アマデウスと言われるとどうもむず痒い」


「分かりました。しかしそのような事は......マスカレード様には申し訳ないのですがこの姿を見て醜くない等と私にはとても......」


「それはお前自身の記憶、そして認知の問題だ。それにお前がノーワンの言惑を解かなければ被害がどこまで広がっていたのか分からん。礼を言わせてくれ」


「有難きお言葉、しかし私は......申し訳ありません。上手く変化が解けず......」


「自分を卑下する事はない。お前は自分が何者か分からないと言ったそうだな。無理もない。お前のような特徴を持つ種族は大陸を見渡してもどこにもいないからな」


 その言葉を聞いてセリーヌ女王が慌てた様子で声をあげる。


「ア、アマデウス様! 例えどのような姿でも、彼女は、彼女はセントソラリスの聖騎士です。信頼できる女性なのです!」


「すまん、少し言い方がまずかったようだな」


「え?」


「どのような姿でも......か。それだけでセントソラリスの女王が素晴らしい人格者だと分かる。アリアナよ、お前の変化は既に解けているのだ。それこそがお前の真の姿なのだ」


「そ、そんな......」


「早合点するな。まだ続きがある。先ほども言ったが、それはお前自身の記憶と認知の問題だ。恐らくお前は()()()()()()()()()()()()のだろう。つまり()()()()()()()()のだ。その後で記憶を失い、ある時何かの拍子に人化が解けたという訳だ。お前を含めセリーヌ女王も焦った。お前の身に何が起こったのだろうとな。違うか?」


「その通りです」


「記憶を失くしたせいで自分を人族だと思っていたお前はその姿になり焦った。当然人間だと思っていた皆も同じだ。しかしその中でセリーヌ女王はお前を一人の女性として認め、その実力を認め、その人格を認め、パラディンとしたのだ。女王がお前の存在を正しく認めたのだ。記憶を失くしたお前にとっての最大の幸運はセリーヌ女王がお前を差別せず、一つの個として正しく認識した事だろう」


「......」


「流石は一国を統べる王と言うことだな。だがこれは仕方のない事なのだが、女王はお前を認めたわけではあるが、その姿、そうだな......言うなれば人族として何かの呪いを受けたとして認識したのだ」


「そうなのではないのですか?」


「そうではないのだ。少し長引いてしまったが......つまりだ、お前は人族ではないのだ」


「え?」


「そもそもそこが間違いの元という事だ。呪いではない。しかし実際に頭に角を持ち、手には鉤爪、背中には翼を生やし、長い尾も生えている。現存する種族に当て嵌まらないとしたら一体なんだ?」


「もしかして......私も悪魔なのでしょうか?」


「違う。断じてな。しかし呪いと考えても無理もないだろう、そもそも認識されていないのだからな。エルフと同じくその種族は長い歴史の中で既に絶滅していると思われているのだ。人族ではない。リザードをはじめとした魔族でもない」


「それでは一体私は......」


 そこでマスカレードはセリーヌ女王へ目線をやるとそこからゆっくりと周りを見渡し、最後に国境付近の空へと目線を向けた。そして再びアリアナへと目を向けると話し始める。


「神々から与えられたその無尽蔵の力は時に掟を破る者に鉄槌を下すという。森の民と同じく神々の守護を与えられ、その神聖なる場所を守り続けてきた伝説の種族」


「場所? 種族?」


「時に天使となり森を守る彼らを森の守護者とするならば、空を守る彼らはそう......空の守護者だ」


「彼ら? 空の守護者?」


「そうだ。その者達は神々が愛する天空を守護しているのだ。まさに天空の覇者と言うに相応しいその力、そして美しいその肢体は大空を駆け、その存在は生態系の頂点に君臨すると言っても過言ではない」


「ちょ、少し待って下さい。何を言っているのか私には......」


 周りを囲む皆もその話についていけない。皆がマスカレードに注目する中で彼はその視線を気にする事なく言葉を続けた。


「伝説を生き、天空を統べる世界最強の種族。彼ら、いやお前たちは......竜族だ」


「は?」


「アリアナ、お前は竜族なのだ」





お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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