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よろしくお願いします。

 そして白い影はチラッと後ろに控えるサーミッシュへと視線を投げる。その視線に気づいたサリエルが素早く近づく。


「貴方達がここに来られたという事は......あの方ももうすぐそこに?」


「ええ。まずは彼女を後方へ。それまでは私たちが彼を止めます。お願いしても?」


「もちろんです。断る理由がありませんな。全てはあの方の思うがままに」


 サリエルが手を上げるとサーミッシュが現れ重症のアリアナを後方へと移動させる。それを見ながら白い戦士は冷静に今の現状を分析する。


 リンクルアデル騎士団が居るとはいえ、先ほど合流したシュバルツ王やダルタニアス王の護衛を離れるわけにはいかないだろう。サーミッシュも主の命の下、両陛下とセントソラリス王家を守ることを優先させるだろう。......おそらく護衛を無視して積極的に戦闘に参加しするとは考え難い。


 セントソラリス最強と思われるアリアナが重症の今、私達、サイレンスができるのは時間稼ぎ。主が到着するまでこの男の足止めするのが最適解ではないか。


 そこまで考えると彼女は視線をノーワンへと戻し、蒼の戦士に加勢するため突進する。


「この戦いは一騎打ちでは? 貴方達は神聖な一騎打ちを邪魔するというのですか?」


「ここまで好きにしておいて今更一騎打ちもないだろう?」


「確かに貴方達程度が何人来ても大した違いはありませんがね」


「なにを!」


 二人は互いにノーワンの死角へと回り込みながら攻撃を仕掛ける。時には剣で、時には体術で。しかしノーワンはそれすらも悉く捌いてゆく。体に当たっている攻撃は確かにあるのだ。しかし彼の肉体が変化しているのか、それともスキルなのか? ダメージが入っているようには到底思えない。


「くそ、どうなっている?」


「確かに大した攻撃力だ。私の正面に立たないように工夫をしているのも良い。中々戦いなれているではありませんか。しかしどうも貴方達はもう一歩踏み込んでくるつもりがないようだ。それでは私に傷をつける事など夢のまた夢。いや、それこそが狙いか? どちらかと言うと......時間稼ぎのようにすら思える」


「......」


「沈黙は肯定ですか? それとも話したくないですかな? ではこういうのはどうです? ヘルグラキエス(獄氷の矢)


 そう言うとノーワンは手を上方へと向け氷系魔法を乱打する。その矢は凄まじい速度で陛下たちが集まる後方へと降りかかってゆく。


「貴様!」


 二人は瞬間的に魔法が空を走る様を目で追ってしまう。陛下たちを守るため兵士やサーミッシュ達はそれらを防ぐ。安心したのは束の間、その一瞬、僅かに気を取られた隙をノーワンは見逃さない。それを狙っていたかのように二人へと魔法を浴びせる。


「「グオオオオッ!」」


「全く単純なものだ。一瞬でも気を逸らすとどうなるのか。あんな人間達の事を守りたいのですか? 貴方達は獣人でしょう? 人間どもに嫌と言うほど虐げられた民族ではないですか。それを体を張ってまで......本当に訳が分からないですよ。それよりどうしますか? 私が目の前に立ってしまいましたよ?」


 そう言うとノーワンは口角を少し上げて笑いながら言った。


「止まれ」


「「グッ」」


「残念でしたね。先ほどの聖騎士様より頑丈とは思えませんが......後ろの王家の方々を皆殺しにしないといけませんので、簡単に済まさせてもらいましょう。最後に何かいう事はありませんか?」


 すると青い戦士が初めて口を開いた。


「ふん、言惑が使えないお前は三流だという事は良く分かった。貴様では我が主の足元にも及ぶまい」


「あの方? 先ほども主がどうのこうの言ってましたね? 足元にも及ばないと? この私が? 生意気な事を......下らない事を抜かすなぁ!!」


 逆上。突然激高したノーワンは両手で蒼の戦士を殴り始めた。すぐに止めを刺すと言いながらそれは正反対の行動であると言える。何が彼をそのように搔き立てたのか?


「私が......この私が足元にも及ばないだと? ふざけるな! 私は至高の存在だ、至高の存在なのだ! 貴様はこのまま殴り殺してやる!」


 無防備で撃たれる連打ほど危険なものはない。しかし体は動かずとも意識の外からの攻撃でない限り、その拳に合わせることで肉体は強化できる。


 青い戦士、クロードは耐えた。しかし幾ら耐えれるとは言え、その身体には想像を絶するダメージが入っているのだ。立ったままクロードは意識を手放したかのように見えた。


「はぁはぁ。クソが、この私を愚弄しおって。 ふん、やはりこの場で首を切り落としてやろう。白いのはそこでこいつが死ぬところを見ているがいい」


 そう言ってノーワンは剣に手をかけた。動けない白い戦士、シンディは今にも消えそうなクロードの命の火を見ている事しかできない。


「くそっ、この卑怯者! 正々堂々と戦えないのか! この卑怯者が!」


「クァッハッハッハ。卑怯者? 何を言っている。勝てばいいのだ。そういうのは負け犬の遠吠えだ。心配するな次はお前だ」


 その手はゆっくりと振り上げられる。シンディは必死で体を動かそうとするもピクリとも動かない。天にも祈るような気持ちで、神に縋りつくような思いの果てにシンディは大声で叫んだ。


「マスカレード様ぁ!!」


 シンディの叫び声を聞いた瞬間、ノーワンは咄嗟に振り上げた剣を自身を守るために引き寄せる。しかし本能がそうさせたのか? 身に迫る殺気を察知したノーワンはそのまま素早く後ろへと飛び退いた。


 その瞬間にその場所を通り抜けた一陣の風、その風が渦を巻いたのか? いや違う。これは気だ。その圧倒的なオーラに大気が捻じれ巻き上がったのだ。


 その流れにキイイイイイィィィィンと辺りに空気が擦れたような音が鳴り響いた。そして大気が巻き上げた砂埃が落ち着いた時......


 そこに一人の男が立っていた。


 剣を構えたノーワンの視線の先、その男から発する圧倒的なオーラ。


 ノーワンはその男と対峙しながらも考えを巡らす。


 どこから現れた? 


 漆黒の戦闘衣装、身の丈以上の槍のような武器、そして鬼の半面......


 まて、今、あの女はマスカレードと叫んだのか?


 マスカレード......マスカレード!? 


「まさか貴様......仮面の男......英雄マスカレードか?」


 その問いには答えずその男は手に持つ槍......青龍偃月刀を軽く回すと穂先をノーワンへと向けて言った。


「世界に影響を及ぼす者よ......断罪の時が来たのだ」




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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