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よろしくお願いします。

 そしてサティはアンジェに向かって言う。


「アンジェ! ポーションを持ってるんでしょ? 早く来てコイツを何とかしなさい! ちょっとやりすぎたわ!」


 呆然とその一部始終を眺めていたアンジェはサティに声を掛けられ一気に現実へと引き戻される。


「は、はい! お姉さま!」


 アンジェは走り出した。その後を、アルバイヤが、ボニータがそして陛下達が追う。アンジェは鞄からポーションを取り出すと直ぐにラムジールへと振りかける。傷がみるみる塞がっていくが何分出血が多い。アンジェはさらにブルワーク24を取り出すとラムジールへと飲ませた。


「ラムジール! おい、しっかりしろ! 大丈夫か!?」


「......アルバイヤか。お前も無事だったんだな。ハハハ、お前も随分とやられちまったようだな?」


「ああ、お陰で正気を取り戻せた。ここにいるボニータを始めとするドルスカーナ、リンクルアデル、そしてサーミッシュたちのお陰だ。お妃様と殿下も無事だ」


「そうか......そうか」


 そこでラムジールはゆっくりと体を起こし妃様へと向き直る。


「キャサリン様、我々がついていながらこの有様、腹を切れと言われても止む無し。しかし......よくぞご無事で」


「良いのだ、良いのだラムジール。全てはノーワンの企みを見抜けなかった王家にある。今は急いでこの混乱を沈め、奴に神の裁きを」


「......ありがたきお言葉。アルバイヤ、今の状況を教えてくれないか?」


 薬の効果も出てきたのかラムジールは立ち上がる。そしてアルバイヤや王妃様と共に移動を始めながらアルバイヤは彼に説明を行う。その横でボニータはサティへと話しかけた。


「あなた大丈夫なの?」


「余裕ね」


「そうにも見えないけど......?」


「正直......後はヒロくん達に期待だわ。それより良く王家を救い出したわね」


「ええ、アンジェとラースの活躍がなければ危うかったわ」


「また後で詳しく聞かせてちょうだい」


「もちろんよ」



------------------------------



 舞台は広場へと戻る。


 大きな衝撃音と共にアリアナが後方へと弾き飛ばされてきた。兵士たちはアリアナに駆け寄り、そして飛ばされてきた方へと目をやる。


 そこには胸に大きな傷を受けながらもこちらへと歩を進めるノーワンの姿があった。しかしその面影は全く違う。アリアナの攻撃により破れた衣服を引きちぎり、露になった体は黒く変色していく。


 髪が伸び、腰まで伸びたその色は白く変化していき肉体自体は筋肉量が増え明らかに文官のそれとは違う事が一目にわかる。


 自然に塞がる胸の傷。明らかに致命傷に至るその傷口、ダメージなど最初から入っていないかのようにノーワンは胸を何度か撫でながらこちらへと向かってくる。


「ふん。言惑が解かれ、屍人も消えたか。やれやれ、また一からやり直しと思うと気が重い」


 他の誰も居ないかのように振舞うノーワン。その落ち着き払った様子に周りの者達は逡巡している格好である。そして飛ばされたアリアナを見て彼は言う。


「しかし私の体に風穴を開けるとは。竜の技か......なかなかやってくれる。しかしまだ幼体か? 力を完全にモノにしているわけではないようだな」


「グッ、な、なんだと? 何を言っている?」


 飛ばされたアリアナは体を起こしながらノーワンを見る。彼女は、いやそこにいる皆が混乱していた。体に受けた傷は致死に至るレベルのはずだ。何故コイツは平然と歩いているのだ。


 そしてこの言動に容姿だ。明らかに先ほどとは違う。本当にノーワンなのかと言いたいほどに。そしてそこから発せられる気。危険だと、逃げろと頭の中で警鐘が鳴り響いている。


「あ、あ、あ、あ」


 兵士たちは後ずさる......がなんとか踏みとどまる。騎士団とはその胸に矜持を抱え、それこそ鋼の精神でその任についている。しかし本能に訴えかけてくるような圧倒的な恐怖。正直これほどまでの気を正面から受け止めてまだ背中を見せて逃げない騎士団の精神力を褒めるべきだろう。


「騎士としての矜持か、くだらない。悪いが道を空けてもらおうか......イグニート(獄炎)


「さ、下が、いや避けろ!」


 咄嗟にアリアナは兵士に向かって叫ぶ。何気に左手を払ったその仕草。と同時に兵士たちに向かって横薙ぎに炎が迸りその身体を炎に包む。


「ギャアアアア!」


 何をしたのだ? ただ歩いて手を払っただけだ。魔法の威力が出鱈目すぎる。コイツは危険だ。もはや疑いの余地はないほどに。


「下がれ! 陛下の所まで下がり守備を固めろ。ノーワンは私が何とかする!」


「はっ! おい、下がれ! 陛下たちをお守りするんだ! アリアナ様の邪魔をするな!」


 ゆっくりと歩を進めてくるノーワン。その距離が近づいてくるだけで体には感じた事のないプレッシャーが増してゆく。


「一騎打ちの邪魔をするなだと? ハハハ、全く体の良い言い訳ではないか。余計な言い訳などせずに素直に逃げればいいのだ。違うかね?」


「騎士を侮辱するか!」


「侮辱? とんでもない、私はただ事実を述べたに過ぎない。たかが幼体の一匹を差し出して私を止められると思っているのかね」


「幼体......先ほども言っていたな?」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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