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342三大鬼筆頭

よろしくお願いします。

「それが鬼人化ってやつなのね。なんてこと......」


 サティは目の前に立つ男に向かって呟いた。見た目だけではない。ラムジールから漏れ出る闘気に体の周りの空気が震えているような錯覚すら覚える。


 スキルか武器の能力か? 先程までの無骨な金棒が細長く変形していく。黒く六角形の細長く美しい金棒へとその姿を変え、その全ての面には何かの文字が刻みつけられている。現代で例えるならその武器は金棒より金剛棒と言った方が分かりやすいだろう。


 圧倒的な存在感を前にそれでもサティは行く。フェイントを掛けつつラムジールの死角へと回り込み斬撃を叩き込む。ラムジールは金剛棒を操ると斬撃を防ぎ、蹴りをその腕で、その足で、その手で受ける。


「受けた?!」


 そう。今まで防御無視であったラムジール。それがサティの攻撃を受けたのである。確実に入っていた攻撃がラムジールの意志によって防がれた事実。


 再び中央で打撃の衝突が続く。手を伸ばせば届く距離でありながら両者がその身体に触れる事は無い。互いの一撃は互いの見切りにより躱し、流し、あるいは受けて。身体への一撃を見事に防いでいる。


 明らかにラムジールはサティの動きに付いてきているのだ。その流れるような所作は先程のそれとは全く違う。別人とも思えるその洗練された動き。サティは態勢を立て直すために一旦距離を空けようとバックステップを踏むがラムジールはそれを許さない。


 ラムジール本人の意識はない。しかしその本能が、強者を前にして武人としての矜持がそうさせるのか? 操られ、死を懇願しても尚、その本能は強者との対峙を求めているのだ。鬼人化したラムジールは力任せの攻撃ではなく、本来あるべき姿へとその動きを変えている。


 離れたサティをその眼に捉え、腕を内側から回しながら掌を正面に向ける。金剛棒を右脇に半身に構え左足を大きく踏み出しながら左手を突き出した。


「グオオオオウ!」


 ラムジールの掌から解き放たれたのは圧縮された空気か? それとも魔法か? そのどれにも属さない古来より鬼族に伝わる独特の力。法力、法術と言った方が分かりやすかも知れない。


 大気が震え空気が捻じれながら迫りくるのが視認できる。捻れながら弧を描きそれは後退しているサティへと一気に迫る。


「クアアッ!」


 一瞬の油断なのか? それとも技の威力がそうさせたのか? いずれにせよ避けるタイミングを失ったのはまさに痛恨としか表現のしようがないだろう。その質量、威力を本能的に察知したサティは両手剣でそれを受ける。


 その衝撃はサティの体を突き抜け、その体ごと後方へと吹き飛ばす。


 ドガアアアアアアン!


 彼女は毬のように跳ね飛ばされ、そのまま城壁へと叩き付けられた。凄まじい衝撃音と破壊音。その威力は破壊された城壁を見れば一目瞭然。そして辺りを包む一瞬の静寂。突き出した左手をゆっくり戻すとラムジールは天を仰ぎ咆哮をあげた。


「グオオオオウ!」


 周りの者は目の前の光景で起こった事象に理解が追い付かない。

 

「そんな......サティが......なんなんだ、なんなんだコイツは」


「ボニータ......これがラムジール。三大鬼筆頭よ。しかし今の私では彼を倒すどころか足止めすらできないわ」


「しかし、このまま暴れさせるわけにはいかないだろう。クソッ。せめてもう少し体力があれば......ん? ちょっとまて、ラムジールはまだサティから意識を離していない! サティ!」


「まさか今の攻撃を受けて立ち上がれるというの!?」


 その時、瓦礫の中から一直線にラムジールへと激突するナニカ。ラムジールは正面からその衝突を受け、後へと飛ばされる。が、倒れない。右足で踏ん張りながらも金剛棒を鋭く振り牽制を行う。


 しかし振り切った先には誰もいない。今度は側面からの衝突音。ラムジールは右へと飛ばされながらも金剛棒を体の周りに展開させて追撃を防ぐ。倒れないラムジール、しかしその打撃を受けた個所には明らかにダメージが入っているのが見て取れる。


「今のは効いたわね......変化が間に合わなければ危なかったわ」


 サティはラムジールを前に言う。そのラムジールの体の数か所がまるで火傷したかのように皮膚が爛れている。斬撃をも防ぐその硬皮を傷つける破壊力。しかし内面にはダメージが入っていないのか? 恐るべきことにその皮膚は再生しているかのように見える。


「蒼面六尾。これを受けても芯までダメージを入れる事ができないなんて......鬼人族は化物だわ」


 蒼く揺らめく闘気が全身を包み込むようにサティの体の周りを漂う。サティの体はラムジールとまではいかないまでも更に大きくなり、やや前傾姿勢を保ちながらラムジールと相対する。


「......自己治癒力も化物なみね。しかしダメージがあるという事はようやくこの戦いも次のステージへと移るという事かしら?」


「グウウウウウウォォウ」


 両者は再び激突する。両者一歩も引かない技の応酬。だが恐るべきはラムジールであろう。サティは既に獣人化を三段階、その能力を引き出しているのだ。


 獣人化はその変身を無限に続ける事が出来ない。


 その特性による制約。自らの能力を無理矢理引き上げるのだから仕方のない事かも知れない。しかし当然の事とは言え、この縛りの中で戦うサティにはあとどれくらいの時間が残されているのだろうか。



 

お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] う~ん、長くてくどいかなーやっぱり...。そろそろ限界...。
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