表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/362

31

次で本日の投稿は終わりです。

 あれから数ヶ月俺は作業場に閉じこもってポーションの研究をしている。研究と言えば聞こえは良いが、色々なものを混ぜたりして試している状態だ。


 と言っても、実はポーションの作成には既に成功している。キーワードはスライムだ。あの日ギルドで鑑定したスライムの外殻に不純物を取り除く効果があると出た。そこで俺はアタリをつけた。


 ポーションの等級はその精製度にされる。不純物が多いのが低級ポーション、少ないのが上級ポーション。世の中に中級、上級が出回ってないのはこの不純物に関しての知識がないってことだ。


 そしてだれもスライムの外殻でそれが取り除けるであろうことを知らない。


 グフフフフ


 おっと、変な笑い声が出てしまったぞ。今の俺の顔はさぞかし悪い顔をしているのだろう。


 話が逸れた。ではどうやってスライムを利用して不純物を取り除くのか。それも簡単だった。薬草を煮詰める時に一緒にスライムを入れたら良いのだ。たったこれだけの事。


 あとはスライムゼリーが勝手に不純物を取り込んでくれる。これだけの手間でポーションはその価値を飛躍的に高めてくれるのだ。どこにでもある薬草、どこにでも居るスライム。安定した買取先(ギルド)


 こうしてあっさりと俺の錬金術は完成したのだった。


 あと気をつけないといけないのは、出荷量だ。希少価値を持たせつつ販売しないと価格が暴落してしまう。簡単には手を出せない。でもいつでもあるモノ。にしなくてはならない。錬金術を手に入れたとはいえ簡単に儲かるわけではないのだ。


 後はこの店で行う作業には秘密があるという事になる。特許だな。スライムを利用していることを知られてはいけない。あいにくこの世界には権利を守ってくれる法などないので自衛する必要があるのだ。


 じいさんに相談したところまずはしばらく男爵家のメイドを作業員として回してもらう事になった。メイド達は男爵家のお付なので守秘義務については安心していたが、じいさんは現代で言うNDA(秘密保持契約書)のようなものを用意していた。


 流石一代で街一番のホテル(隣)を築き上げた男。ハンパないぜ。その契約書の中身を見せてもらったら、その漏洩した内容の重要さにより炭鉱送りから死刑まであり得ることが書かれていた。男爵家容赦なし。特権階級だけにホントにやりそうで怖い。やるんだろうな。


 価格についてはクロとソニアさんと相談した。ソニアさんは薬剤師だからな。


 最上級ポーションは市場に無いらしい。言ってみれば革命的なポーションだ。ポーションの性能については俺の≪鑑定≫で調べた。最上級ポーションは千切れた腕がくっつくレベルだった。


低級 傷薬。家庭にもある常備薬的な薬。

中級 傷薬。低級より良く効く。冒険者の必要携帯品。

上級 傷薬。内服薬として病気にも若干の効果あり。


 これを聞いて驚いていたのがサティだ。と同時に喜んでいた。冒険者ギルドだけでなく薬師ギルドにも卸せるだろうと言われたぞ。良い事だぜ。


 最上級ポーションについては男爵家にて対応を決めることした。これは簡単に世に出してよいものではないらしい。まあ、希少性が非常に高いのは事実だ。基本的にポンポン作れるものでもないので良しとする。


 その他のポーションはサティを通じてギルドで買い上げてもらう事にしてもらっている。店頭販売もしてるぞ。でも今の所3種類しか店頭にないので見た目がすごく寂しい。


 それで俺は日夜研究に勤しんでいるのだ。


 だが驚くことなかれ、ギルドの定期購買が多い為、また原価がほぼ無料(タダ)の為に我が商店は黒字なのだ。ありがとう薬草、ありがとうスライム。


 スライムに至ってはわずかな金額ではあるが、ギルドに魔石を売ることが出来るのでそれも嬉しい臨時収入となっている。とは言え、月の営業利益が金貨800枚程度なので、商店を大きくするにはもっと頑張らないといけないのだ。


 実はこの建屋に関しては賃料を払ってないし、改装費だってそうだ。全部じいさんの好意だ。業務を手伝ってくれてるソニアさん達は居候させてもらってるって事で、給料は要らないって言うし。


 あのね、居候は僕の方なんです。当たり前のようにここに住んでますけど。早く沢山儲かるようになって、じいさんに還元出来るようにしないとな。


 あと、ポーションの供給量に対する他店への影響だが大きな問題はないらしい。元々市場に流れているのは低級が多い事、使用量が多い事などでバランスは崩れていないそうだ。


 価格破壊はしたくないからね。独占したら儲けも多いが、敵も多くなるのだ。それは俺の望む経営ではない。問題も発生している。ポーションの製作場所だ。ギルドからポーションの大量発注が掛かるため、流石にここの工房だけでは難しいのだ。


 今は超でかい大鍋で作っているが、今後発注量が増えた場合や、新しい製品を作らなくてはならない場合にはすぐに手狭になるだろう。


 余談だが横で見てると白衣を着て大鍋をかき混ぜるメイドの姿に給食のおばちゃんを重ねてしまった。手狭になる前に新しい用地を見つけておかなくてはならない。


 じいさんに頼んで空いている土地を融通してもらう手もあるが、それではじいさんに迷惑をかけてしまう事になる。じいさんは即断で了解しそうだけどな。出来る男は先を見通す力が必要なのだよ。


 今挑戦しているのは毒消しだ。結論から言うとこの世界に毒消し草と言う便利なものはない。


 魔獣に遭遇すると当然戦闘になる。その際にけがをするのと同じくらいやっかいなのがこの毒だ。中級ポーションでは中和できない毒もあるようで、そういうのにあたった冒険者は苦しみ、最悪命を落とすこともある。ダンジョン内では出てくる魔獣がある程度限定されているらしいぞ。


 そもそもこの世界にはダンジョンがあったんだな。地上では魔獣同士の縄張りもあるから、地中では縄張りを階層で引いている、そのような感覚で捉えている。どちらもこなす冒険者も多いが、地上派と地中派と区別して活動する冒険者も多いらしい。その辺りはパーティー毎の指針に沿ってやってるんだろうな。


 しかし、研究が思うように進まん。


 ゲームで出てきた毒消し草はいったいどういうメカニズムだったのだ! かと言って、特定の毒消し薬を作ろうと思っても何が原料になるか分からん。切り刻んだ薬草とにらめっこしててもこれ以上は時間の無駄のように思える。


 ()くなる上は...毒を手に入れるしかない。特定の毒を選定し、それの中和剤を作る。これが一番の早道だろう。そう言う訳で俺は毒を手に入れるためにダンジョンに潜ることにした。理由は出現する魔獣がある程度限定されているというのが大きい。


 俺は夕食後の団欒時に皆に伝えた。


「ダンジョンに潜ろうかと思います」




お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ