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よろしくお願いします。

メリークリスマス(複雑)

「助けて頂いてありがとうございます。でもあなたは一体......? エルフ......なの?」


「それについては私から申し上げる事は出来ないのです。私はラス・アルミナス。森の民サーミッシュ、いやドルツブルグと言った方が良いでしょうか? ドルツブルグ長老ノール・アルミナスの孫娘です」


「誰よアナタ?」


「ラースってこんな話し方も出来たのですわね」


 アンジェとボニータはラースを見て呆然としている。


「ドルツブルグ長老の孫娘ですって? 森の民は俗界との関りを徹底的に避けていると言うのに何故......」


「縁あって皆さんの手助けをしております。普段は王妃様の理解で概ね間違いございません。田舎者ゆえ言葉遣いに失礼があるかも知れませんが何卒ご容赦を」


「サーミッシュが手助けを......いえ、とにかくあなたに感謝を。あなたがサーミッシュでもエルフでも命の恩人には違いありません」」


「私たちは当然の事をしたまでですので王妃様が気にかける事ではございません。これも我が王の命なればこそ、と言う事もございます。叶うなら我が王に戦う私をお見せしたかったとは思いますが」


「その王とは? 貴方の国はリンクルアデルではないのですか?」


「はい、違います。私はあくまでサーミッシュ。出身はドルツブルグでございます。リンクルアデルにはドルツブルグのレムスプリンガと言う制度を利用して冒険者として暮らしているのです」


「そうなのですか」


「はい。そして......先程の話にあった大商人ヒロシ様の婚約者でもあります」


「は?」


「こらこら突然何言ってんのよ! おい、アンジェ、油断も隙もないぞコイツ」


「驚きましたわ! 貴方、まだその姿の事を言ってもないのでしょう? ヒロシ様は貴方の事を男だと思っておりますのよ?」


「あ、そうか。そうだった。それが問題だった......どうしよう」


 ラースは素の話し方に戻り、本当に困った顔をしている。


「あなたの体の事も公にはできないのでしょう? うーん、そう思うとちょっと問題ね」


「......よし、決めた。決めたよ。僕はレムスプリンガが終わったら森へ帰るよ。そこでヒロシ様を待つ事にするよ」


「帰っちゃダメなんじゃないの?」


「そうよね? そう思いますわ」


「良いんだよ。ヒロシ様はきっと森へ来るさ。長老との話もあるはずだしね。その時にキメるよ」


「何をキメるつもりか知らないけど......また物騒な事を言い出したわね。アンジェお願い」


「うーん。困りましたわね。まあでもそれは後で考えるとして......まずは下へ降りて皆に王家の無事を知らせましょう」


「そうだな、確かにそれが先決だな。アルバイヤも大丈夫か?」


「もちろんだ」


 そこでキャサリン王妃がアンジェ達へと話しかけた。


「アンジェリーナ王女、ボニータ王女、そして冒険者のラースさん」


「はい、王妃様」


 キャサリン王妃はアレックス殿下をその胸に抱きながら深々と頭を下げた。


「この度は心からの感謝を」


「アネスガルドの王妃様が頭を下げるなど......どうかお止めください。そのお気持ちだけで十分ですわ。それにまだ戦いは終わっておりません。その話はまた後でゆっくりと致しましょう」


「ええ、本当にありがとう。本当に」


「ヒロシ様がアネスガルドの王家の状況を見抜いていなかったなら大変だったわね」


「そうですわね。流石ヒロシ様ですわ!」


「先ほどから出てくるそのヒロシさんとは商人なのでしょう? 婚約を望んでいるのは彼ではなく王女たち、つまり貴方達のほうなのですよね? 本来あり得ないと思うのですが......」


「それはヒロシ様だからですわ!」


「そうね!」


「その理由ではよく分からないですわね」


「王妃様、ヒロシ様に会えば分かると思います。いや、会わなければ理解できないだろうとも。今言える事はリンクルアデルとドルスカーナの両国はもちろん、既にセントソラリスのセリーヌ女王陛下は全面的に信頼してるという事でしょうか」


「まあ。それほどの信頼を勝ち得れる人間がいるのですね」


「そしてドルツブルグはその長い歴史を変える事も厭わないほどに」


「どういう事かしら? ......分かったわ。まずはそのヒロシという商人に会う事にしましょう。彼が居なければ私は今こうして話す事さえ出来ていなかったでしょうから」


「それがよろしいでしょう」


 それから三人は簡単にセントソラリスでの出来事を聞かせた。全てはノーワンが仕組んだ事だったこと。一歩間違えればアネスガルドは蹂躙されていた事。キャサリン王妃は本当に驚いた様子であった。


「その様な事に......何と恐ろしい。そしてヒロシさんが居なければ大変な事になっていたと思うと......考えたくもありません。出来れば会いたいという次元ではありません。必ずお会いして直接お礼を申し上げませんと。まずは急いで......早く民を助けなくては。このままノーワンの思い通りにさせてはいけません」


「そうですわ。だからこそ各国が集結してるのですわ」


「そういう事だな。アンジェ、ラース、先を急ごう。皆も準備は良いな?」


「ええ。それでは行きましょうか。ラース、下へ移動するけど何かあったら頼むわよ?」


「そうしたいけど、さっきの力(精霊の力)はもう使えないよ。長老との約束は一度きりって事だったから。でも変化を解く事は大丈夫だから......うーん、ある程度は大丈夫だよ。それに階下はサーミッシュがもう制圧していると思うよ」


「そう? よく分からないけど......大丈夫なら良いのかしら? あの屍人は下にもいるのかしら? ノーワンから得た力と言っていたけど?」


「タンダスはノーワンから貰った力だと言っていた。それが本当なら屍人が階下や城外に居たとしても、もう消えているのではないかと思うんだけど」


「屍人使いはタンダスだけで十分だわ」


「ノーワン自身も使えるとすれば、さっきの屍人も消えないんじゃないかと思う。タンダスに力を()()()と言うより、()()()という方が正しいんじゃないかな?」


「そうかも知れないが、ここで考えても仕方ないだろう? 下に行けば分かる事だ」


「そうね、その通りだわ」


「よし、では行こう」


 そうして6人は部屋を後にし、無事に階下にいたサーミッシュと合流を果たしたのだった。



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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