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332 精霊武装

よろしくお願いします。

「すごい、アレックスの状態が見ただけでも良くなっているのが分かるわ。何なのこの薬は?」


「それは傷薬ではなく、ええと、体力回復薬? っていうのかしら? ポーションも併せて飲ませた方が良いかも知れませんわ」


「ええ、でも」


「キャサリン王妃、私の事は気にしないで結構。既に脇腹の血は止まっている。殿下を優先して下さい」


「私は言うまでもなく。殿下優先です王妃様」


 アルバイヤもボニータに続いてキャサリンへと言う。


「......すみません。本当にありがとう、ボニータさん。ダルタニアス王には......ここを生きて出る事が出来たら必ずドルスカーナへと赴き心から礼を申しましょう」


「なに、助けに参るのは当然の事、気にする事はありません。それに父には私から話しておきましょう」


「......父?」


「私はロイヤルジャックでありますが、王の娘でもあります」


「娘という事は王女殿下ということ!? 王女がロイヤルジャック......信じられない」


「獣人の文化は人族には理解されにくい部分もあるでしょう。あと、先ほど話に出た大商人であるヒロシ様の婚約者でもあります」


「え?」


「ちょ、ちょっと貴方こそ何言ってんのよ! 全く図々しいわね、何が婚約者よ! そのまま血を吐いて寝転がっているが良いわ!」


「......」


 そんな二人を尻目に王妃はポーションを殿下の口へと含ませる。ヒロシが持たせたポーションは高位品だったのだろうか? 正しくその効果を発揮してゆく。


「う、ううん」


「あ! アレックス? アレックス!」


 アレックス殿下は少し瞼を動かすとゆっくりとその眼を開けた。


「あ、ああ。母上。私は? ここは?」


「あああ、アレックス目が覚めたのね! 良かった、本当に良かった。このままもう目を覚まさないのかと......ウ、ウウウ」


「殿下! 良かった! 目を、目を覚まされて......このアルバイヤ大恩ある王家を守り切れず......何と情けない」


「良いのです、良いのですアルバイヤ。あなたとラムジールが居なかったら私たちは前王のように......そう言えばラムジールは? ラムジールはどこに?」


「私にも彼がどこへ連れて行かれたのかまでは......あの首輪をつけられてから意識が外へ出てくる事が難しく......」


「王妃様、それにアルバイヤ。生きてさえいれば必ず会えますわ。まずは私たちが生きる事ですわ。それより始まりますわよ。今はラースに期待しましょう」 


 ボニータはゆっくりと体を起こし前方へ目を向けながら話す。


「そうだな。私も体力が回復していないとはいえ、魔法での援護は可能だ」


「私も剣舞でいくつか飛ばす斬撃を持っている」


「お前、そんな技を持っていたのか?」


「意識が朦朧としている状態ではとても使えぬ技だ。だが意識が覚醒したとは言え私も体力が戻っていないので上手く放てるかどうかは分からぬが」


「そうか......ふん、だが今日は私の勝ちだからな」


「もちろんだ。殺されなくて心底安心しているよ」


「二人ともごめんなさい。私のハーミッツデザイアは外からの攻撃は防げますが、その代償として中から外への干渉も出来ないのです」


「そうか、だからあのエルフを先に離したのだな。だが仕方ないのかも知れぬな。これほど強力な防御壁だ。無理もないだろう」


「そういって頂けると助かりますわ」


「しかし、エルフだとしてもどうやってあの屍人とタンダスを屠るつもりだ? さっきの魔法もかなりの威力だった。エルフに姿を変えた所で、ラースの冒険者としての実力では......」


「それは......」


 答えを口にすることができないままアンジェ達は前に立つエルへと視線を向けた。


「お前、エルフか? エルフだったのか!? もはやこの世にいないと思っていたが、滅びていなかったのか。お目に掛かれて光栄ではあるが......まあ所詮は滅びの境にいる弱者の種族。ノコノコ出てこず隠れておれば良いものを。死ななかったらお前は特別に俺が飼ってやるぜ」


タンダスのそんな言葉など聞こえていないのか、ラースは言葉を続ける。


「お前を許さないもう一つの理由。それは我が王を軽んじ、侮辱し、極めつきはその刃を向けようとしている事だ。私は怒りで頭がおかしくなりそうだ」


「は? 王? エルフに王がいるだと? しかも俺達が知っていると言うのか。その王を? 誰の事を言っている?」


「それが誰であろうとこれから死んでいくお前が知った所で意味はない」


「その細腕でどうにかできるとは思えんがなぁ......全く偉そうな口をきくじゃねぇか。屍人に食われるがいい!」


「......断じて許されぬ。だが怒りに任せお前を殺しても我が王は喜ばないだろう」


 そう言うとラスは持っていた弓矢を捨て言った。


「我が王から授かった祝福は我が王のために。そしてその力は我が王の望みの為に。今こそこの力を解放しよう」


そしてラースは静かに言い放つ。


「......エレメンツ(精霊武装)」 


 その瞬間ラースの周りに4色の光が渦を巻いて包み込む。フラッシュのような眩い光から現れたのは一人の戦士。その身は純白の衣装で固められ、所々に金の刺繍が入っている。両腕には金のブレスレット、頭には金の鉢金が装着され、手にはハープのようなものを持っている。


 ただ他のエルフの装束と大きく違う点、それは4色の煌く腕輪、そして随所に見られる美しい刺繍だろう。森の狩人として、ドルツブルグでは長老は元よりサリエル軍務卿からも絶大なる信頼を得る彼女。それは他と違うその戦闘衣装が如実に表していた。


「なんだその姿は? 森の狩人......いや、神々の愛する森の番人......まさか......な。いや、いやお前......本当に?」


「下らぬ問答に付き合うつもりはない。死ね」


 あまりに冷徹、あまりに無慈悲。先程の少しおどけた感じのラースはどこにもいない。これが本来のエルフであるラスなのであろうか? 


 

お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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