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よろしくお願いします。

 そしてその姿を見たボニータが言う。


「ふん、鬼族か。また珍しい一族を抱え込んだものだな。確かアネスガルドのトップが鬼族と聞いたことがあるが......」


「キヒヒヒ、珍しい一族、まあそうだろうな。そしてお前の言う通りこいつは鬼族、そして三大鬼だ! これからお前を嬲り殺してくれるだろう!」


「はっ、お前は馬鹿なのか? 鬼族の忠義の厚さは有名だ。王家を裏切ってノーワンのアホについていくわけなどないだろう」


「キヒヒヒ、では死んで理解しろ! 行け、殺せアルバイヤ!」


「ガアアアアアアア!」


 そう吠えると、アルバイヤは一直線に三人へと突っ込んできた。ボニータはすぐさま腰からトンファーを抜くとアルバイヤの剣を正面から受け止める。


「なかなか鋭い剣筋ではないか。二人は下がっていろ、そして王家の元へ向かえ」


 二人は頷くと素早く後退しタンダスの後にいる王妃と殿下へと視線を向ける。ボニータは剣を弾き返し、そのままアルバイヤを後方へと押し込む。


「アルバイヤと言ったな? 貴様、本当に三大鬼なのか?」


「グ、グアアアアア!」


 話しかけられたアルバイヤはその問いには答える素振りはなく、二、三度頭を振ると再びボニータへと攻撃を仕掛けてくる。


「だとしたら鬼人も落ちたものだ、忠義に背く事は騎士としてあるまじき行為。王家の守護者ロイヤルジャックとして騎士の矜持を教えてやる!」


 そう言うとボニータはトンファーを再び構えるとアルバイヤに向かって吠えた。


「鬼人相手に出し惜しみはなしだ。早々にケリをつけさせてもらうぞ!」


「ガアアアアアア!」


 アルバイヤは剣を構えなおすととそれを両手で持ちボニータへと斬りかかる。ボニータも同じく両手にトンファーを構え襲い来る斬撃を捌いてゆく。


「ふん、珍しい剣だな。そう言えばヒロシ様の護衛であるシンディも似たような剣を持っていた。ヒロシ様は刀と言っていたが、片刃に何か意味でもあるのか?」


 ボニータはその眼に魔眼を宿している。その眼にはアルバイヤの剣筋はもちろん、眼球や筋肉の動き、ありとあらゆる情報が映し出されてゆく。


 そしてそれを躱し、防ぎ、反撃するだけの獣人強種の身体能力。ボニータの戦闘能力は言うまでもなく他を圧倒するだけの力を持つ。しかし相手は鬼族である。


 鬼族とは獣人とは種族は違えどその戦闘能力は獣人の強種に匹敵すると言われている。しかし義を重んじ仁に厚く、余計な争い好まず忠義に生きる者、それが鬼族である。


 両者は中央で激しくぶつかり合う。互いに引かぬ攻防、薄皮一枚を切らしてその五体でダメージを与えてゆく。


 しかし。


 ガキイイン!


「グッ!」


 アルバイヤの剣圧に飛ばされるようにボニータは後ろへと飛ぶ。


「何と言う膂力だ。まさか獅子族の私がこうも簡単に弾かれるとはな。加えて......速い!」


 態勢を整えようとするボニータへアルバイヤは肉薄する。その流れるような動き、いや剣技と言えばよいか。前述の通り鬼族は獣人の強種に匹敵する身体能力を持つ、しかしそれ以上に膂力だけでは獣人をも凌ぐと言っても良いだろう。加えてその手に持つは鬼族が好んで使う武器の一つ。


 刀である。


 刀とは片刃の剣。西洋に多い両刃ではなくその性能を疑問視する者も多かったと言う。初めて日本人を目にした西洋人は(まげ)を見て驚いたものの、頭に鉄砲の飾りをつけた原始人だと笑い、片刃で細い弱々しい剣をみて笑った。


 しかし日本人の文化、技術をみて彼らの考え方は変わる。いや変わらざるを得なかったと言っても良いだろう。確かな武道という戦闘に特化した技術を築き上げ、それは様々な流派へと枝分かれし、各々が独自の進化を遂げる。

 

 その中の一つが剣術である。


 刀は西洋の剣と違い、叩き付ける事も一つの目的とした武器ではない。あくまで『斬』、斬るためである。その一点にのみを追求し刀匠(とうしょう)が魂を込めて打つのである。


 鬼族がその技と伝統をこの世界で同じく築き上げてきたかは定かではない。しかし、細く片方しか刃を持たぬ剣は一流の使い手が持つ事により、その本来の秘められた力を呼び覚ます。


 ボニータは迫りくる剣筋を捌きながら妙な感覚に陥る。その流れるような剣筋、淀みない動き、そして剣先まで伝わる明らかな気。この動き......同じではないが体験した事がある。


「うおおおおお!」


 ボニータは終わりなく続く攻撃、いや、その隙のない動きから繰り出される剣筋に翻弄されていた。ボニータは匠に魔法を織り交ぜ反撃を試みるが、アルバイヤはまるで柳の枝のようにその全てを捌く。


「流石は鬼人と言った所か、だがこちらも押されているだけではない」


 ボニータは軽くバックステップを踏むと軽く唸り声をあげて言った。


「白獅子壱の型『(アギト)』」


 弾けた大気の中から飛び出したボニータはアルバイヤへと突撃する。今回ボニータは手にしていた武器、トンファーを放してはいない。獣人化してなお武器をその手に態勢を低くし走り込む。そして、ボニータはそのままでは終わらない。


「白獅子弐の型『(ソウ)』」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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[気になる点] > ボニータは匠に魔法を織り交ぜ反撃を試みるが、 巧みに
2021/11/19 09:10 退会済み
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