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よろしくお願いします。

 ファティマの魔法が炸裂し辺りに瓦礫が舞い上がっていた頃。


「やはりご無事でしたか」


「あ、サリエルさん。来てくれたんですね」


「貴方様のお願いとあらばたとえ海の底でも参りましょう。魔法の爆発に巻き込まれたようですがお体は大丈夫ですか? なんとなくそちらの方へ()()()向かって行ったようにも見えましたが?」


「やっぱりサリエルさんには分かっちゃうか。商人では少し動き辛いと言うか......もう少しノーワンの方へ近づきたくてね。このまま中央を駈け抜ける訳にもいかないからね」


「そうでしたか。確かに今の貴方様はリンクルアデルの商人でございますからな。その方が動きやすいという事ですね? 承知致しました。あ、あとご安心を。王城の方へは既に部隊を向かわせておりますし、ラスも同行しております。滅多な事は起こり得ませんでしょう」


「え、そうなの? 助かるよ。うーん、じゃあそうだな、王城横を迂回する形で近づいた方が良いか。そうしよう。あとあのアネスガルドの灰色の兵は......少し普通ではないような気がするんだ。十分に注意して欲しい。最後にもう一つ。見たと思うがアリアナと言うパラディンが戦っているが彼女は魔族ではない。恐らく一騎打ちはもうすぐ終わるだろうが、彼女への攻撃は控えてくれ」


「承知致しました、お任せを。それでは今は目の前の事に集中しましょう。我々はこれよりセントソラリスの援護を開始します」


 そう言うとサリエルは部隊へと素早く指示を出し音もなく一斉に散っていった。


「彼らの掟は保守的で良かったのかも知れないな。もし好戦的であったなら......間違いなく脅威だぜ」


 貴方様と呼ばれたその男は、姿を消した彼らの方向を見て呟いた。



---------------------------------



 両軍の激突はファントム側の魔法攻撃により激化する。聖騎士団へと肉薄し物理で攻撃を仕掛ける者、中距離から魔法で攻撃を仕掛ける者、そして後方で支援魔法を駆使する者。


「アリアナ様がその身を呪いに染めてまで......我らの為に......」


「あのようなお体になってもまだ敵に慈悲の心を与えるなんて......」


「バカ野郎! 泣いている暇があったら援護しろ! まだ敵は多いぞ」


「くそっ、俺たちは......だがその通りだ。援護しろ! アリアナ様に続け!」


「おお! アリアナ様に続けぇ!」


「「「おおおお!」」」


「そこの二人! ファティマと言う戦士は拘束しろ、アリアナ様が慈悲を与えたのだ、決して殺すなよ! そして殺させるな!」


「「はっ!」」


「アリアナ様が勝ったぞ! もうノーワンの首もすぐそこだ! 押し込めぇ!! アリアナ様に続けぇ!」


「「アリアナ様に続けぇ!」」


「「おお!」」


 アリアナがファティマを撃破したことで戦局は大きくセントソラリスへ傾くと思われた。だがしかしファントムの勢力が失われるという事はなかった。むしろ強くなっている印象すらある。


 ファティマが破れ、ノーワンが肩を貫かれても勢いが衰えぬ兵士達。なぜ衰えないのか? 逆にセントソラリスの兵士達に動揺が走りその剣先が鈍りつつある。その理由を目の当りにした為である。


「こいつ、斬っても死なないぞ!」


「なんだ? 臓物が出ても立ち上がって来る。どうなってる!」


「これは......屍人だ! 兵士に屍人が紛れているぞ! 何故だ、死んだ者を弄ぶ事など禁忌のはず。誰がこのような酷い事を......アネスガルドはどうなっているのだ!」


「副隊長! どうすれば!」


「屍人などどうすれば......だが首を刈るしかないだろう。死してもなお、朽ちてもなお戦わせるとは......まさに鬼畜の所業。せめて安らかな死を与えてやるのだ!」


「「「はっ!」」」


 しかし首を刈るだけと言う簡単な作業ではない。相手は首を斬られない間はどれだけ斬られようが立ち向かってくるのだ。生身の体では到底同じ事は出来ない。


 相手の攻撃を躱しダメージを与え勝機を掴む。このダメージが入らないのだ。恐怖を感じず、斬られても怯まぬ相手の首だけを落とすなど至難の業と言っても良いだろう。


 中には普通の生きている兵士もいる。だがその眼には狂気が宿っている。セントソラリスの騎士団は自らの命を顧みないその攻撃に徐々に押され始めているように思えた。


 しかしその時、両軍を割くように空から無数の矢が降り注ぐ。突然の矢の雨に両軍は咄嗟に各々後ろに退く。敵か味方か分からない状態で一瞬の膠着状態が生まれたその時に彼らは現れた。


「セントソラリスの精鋭達よ、我ら王命により助太刀に参上した」


「助太刀? 王命? どこの国だ?」


「国か......ただ神々の愛する深淵の森より、とだけ言わせてもらおう」


「深淵の森......アザベル大森林か? という事はドルツブルグ? 森の民サーミッシュか?」


「だが、あれは......本当に森の民なのか? 俺の知っている姿形と全然違う......それにあの純白の衣装はまるで......」


「ああ、あれはまるで......天使のようだ」


 神の御使いであると語られる天使、神ではないにせよ俗界に顕れたという記述はない。神と同じくどこかに、どのようにか存在する、不確かでありながら紛う事なくそこに在る存在......


 決してその眼に映す事はないだろう。だが伝承に残り、伝えられ、彼らの脳裏をかすめるその姿。それは正しく天使のよう、いや天使そのものであった。


 その姿は純白の衣装に覆われ頭には金の輪、その手には天使の武器と言われる弓矢が携われている。


「天使だ......間違いない、大森林より神々が天使を遣わされたのだ。まさか生きてこの眼に映す日が来ようとは」


「見よ! 今、神々は天使を、天使様をセントソラリスの為に遣わされた! 正義は我にあり! ノーワンの暴虐を止めるのだ!」


「「「おおおおおおお!!」」」


「ノーワンを止めろ! そして街の魔獣を退けるのだ! 民を守れ! アネスガルド王家を救い出せ!」


「「「おおおおおおお!!」」」


 白いローブを着た男がその手を振るうと四方八方から矢が飛来する。その圧倒的な物量は悉く死人達を蜂の巣にしていく。地面に縫い付けられた死人は立ち上がる事すら許されずその首を刈られていく。


 戦局が動き出したように見える。いや確実にセントソラリスへと傾いている。


 セントソラリスの騎士団は前へと飛んだアリアナへと追いつき、いよいよ残すはそのノーワンの首一つ。そして街へとその場を移し民を守るため魔獣の討伐へ。


 誰もがそう思った時であった。


「グララララララァ!」


 ナニカの叫ぶような、吠えるような声と共に後方にアリアナが弾き飛ばされてきたのだ。



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

少し書けるようになりましたので、このまま行けるとこまで行きたいと思います。

なるべく続けれたらいいな、と思ってます。

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