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よろしくお願いします。

 時はセイラムがハスノールを退けた場所へと戻る。


セイラムはゆっくりと舞台を降りて俺の方へと歩いてくる。その姿は正に騎士団一番隊隊長に相応しい堂々としたものだった。


「やったよ、お兄ちゃん!」


「痛い!」


 飛びこんでくるんじゃありません、別人かお前さんは。鎧が痛いだろうが。周りから『天才剣士も少なからずダメージを受けたようだ』的な声が聞こえてくる。


 違うぞ、お前らもコイツの声が聞こえてただろう? 結構余裕だったはずだ。しかしセイラムは俺に身体を預ける格好で抱き着いてるもんだから、周りからはそう見えるのかもしれない。


 セイラムは俺の方に器用に頭を傾けてくる。なんだこれは。まさか頭を撫でろとか言うんじゃ無いだろうな?


 公衆の面前で出来る訳がないだろう? 空気を読め空気を。だがセイラムはグリグリと頭を押し付けてくると微妙な角度で頭をこちらへと向けてくる。


 ぐぬぬ......と言いつつも俺はポケットからハンカチを取り出すと、セイラムの兜の汚れを拭き取る様な形で撫でながら、小声で労いの言葉をかけてやる。


『よくやったセイラム。やはりお前は奥の手を隠してたんだな。しかもこれだけじゃなさそうだ。強かったぞ』


『えへへ、次はお兄ちゃんにも勝てるように頑張るよ』


『それは困ったな。だが楽しみにしてるさ』


『うん』


『フッ』


 などと格好をつけながら俺は思う。頑張らなくていいと。あんなもん避けれるか。電撃くらった上に狙い撃ちとか一瞬で負けるわ! と心から思いつつも俺は兜を熱心に拭いてやるのだった。


「こっちはクロとシンディが居れば大丈夫だから、騎士団はセリーヌ女王とゴードンさん達の護衛を頼むよ」


「了解だよ」



------------------------------------



 ノーワンが苦虫を噛み潰しているその時、上空に一隻の船が現れる。


「飛行船だと? あの紋章は......リンクルアデルか!? なぜリンクルアデルの船がここにいる? なぜこのタイミングで現れる事が出来るのだ!? 間に合うはずがない!」


「リンクルアデル......だと?」


 セリーヌ女王も突然の船の出現に驚きを隠せない。


「どうやら間に合ったようだな。流石陛下、判断が早いぜ」


「なに? お前か......またお前の仕業か! 商人の分際で何度も私の計画を邪魔しおって......しかしどうやって......」


「それを教えるほどお人好しではないさ。リンクルアデルはこの戦闘の一部始終を見届け世界の証人となる。お前の企みは既に破綻寸前と言う訳だ」


「おのれ貴様......」


 ノーワンが言葉を繋ごうとする前にセリーヌ女王がノーワンへと話しかける。


「なんと......ヒロシよ、全くお前の蒼眼には言葉もないわ。それでただの商人などと、とても信じられぬな......だがノーワン、もはや決闘と呼べた代物ではないが、これで勝負は着いたようだな」


 俺を睨みつけていたノーワンであったがその言葉を聞いてセリーヌ女王へと向き直る。


「クゥフッフッフッフ、ご心配なさらず。王家は城の上層でゆっくり休んで貰っております。まだ、使い道がありますからなぁ。それにまだ勝負はついておりません」


「まだそのような事を。ここは通らせてもらおう。お前が全ての元凶という事はもはや明らかだ。他国とは言え魔獣に襲われているのだ。指を咥えて黙っておるわけにはいかぬ」


「しかし、勝敗は決闘で......」


「黙れ!」


 セリーヌ女王は言葉を被せノーワンの言葉を打ち消す。偶然にもそれが彼の言惑を抑える効果に繋がった。


「そもそもお前の話では既にセントソラリスが先制攻撃を行っている事になっているのだろう? これ以上決闘を続ける意味はなし。既に三大鬼の一人は破れているのだ。国としての礼儀は通した」


「三大鬼を一人破った所で状況はそう簡単に好転しない」


「させるさ。貴様を倒してな」


「さて、そう簡単にいきますかな?」


「減らず口を......」


 ノーワンの周りにはいつのまにか灰色の戦闘衣装に身を包んだ者達が集まってきている。こちらはノーワンお抱えの戦闘集団と言った所だろうか。


 そうだ、セントソラリスでの会談の際、ノーワンの周りにいた護衛と同じ衣装だ。もしかしたらこちらがノーワンが持つ主力の可能性もある。


「我が戦闘集団ファントムが相手をしよう。ファティマ! やれ!」


 ノーワンは俺たちの方へと指をさし一言そう叫んだ。その言葉を皮切りに彼らは一斉に行動を開始する。


「ふん。セントソラリス聖騎士団よ、今こそ鉄槌を下す時が来た! かかれ!」


 対するセリーヌ女王も声を上げると、同時に後ろに控えるアリアナへと声をかける。


「アリアナ、大丈夫か?」


「大丈夫です女王陛下。しかし私は......」


「お前がどのような呪いをその体に受けていようと......私は最後までお前の味方だ。恐れる事など何もない。存分にその力を発揮せよ」


「陛下。分かりました。たとえこの後どうなろうと、今この時だけはセントソラリス聖騎士団団長パラディンとして」


「お前には本当に無理をさせる......済まぬな」


「それは陛下が気に病むことではございません」


「しかし......いや今は何も言うまい。頼むぞ。では行け、奴らに神の鉄槌を」


「はっ!」


 その言葉を最後にアリアナも戦闘へと参加する。


 そして......ついにドルツブルグ王都ハイランドにて両軍が激突した。




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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