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311リンクルアデル騎士団一番隊隊長

よろしくお願いします。

 刹那、その男を中心に一瞬眩い光が拡散する。そして中から一人の騎士が姿を現した。


「な、なに! その姿に紋章......お前、まさか......!?」


「騎士らしく名を名乗らせてもらおうか」


 彼は腰からゆるりと剣を引き抜くと軽く弧を描くように回しハスノールへと向けて言った。


「リンクルアデル騎士団一番隊隊長セイラム、お前が覚える最後の名前だ」


「ノーワン! リンクルアデル騎士団が来るとは聞いてねぇぞ!」


「ふむ、だがアリアナは既に使い物にならん。いや、欲望が解放されれば我々の助けにすらなるのだ。少々計画にずれが出たとは言え、ここで戦えるのはその剣士くらいでしょう。あなたでは手に余りますかな?」


「抜かせぇ!」


 ハスノールはそう叫ぶと態勢を低く保ったままセイラムへと肉薄すると横一文字に剣を振るう。セイラムはそれを盾で受けることなくやや盾をずらし上方へと剣筋を変える。


 そしてそのまま盾を横へとずらしハスノールの視界を塞いだところでその隙間から剣をまっすぶに構え刺突を繰り出す。だがハスノールは切っ先を感じるとその瞬間に剣を引きながら盾側へと体をひねりそのまま死角へと移動し再び剣を振るう。


「がら空きだぜぇ! オララララァ! 死......」 


ブラッディランス(深紅の火槍)


「グオォ!」


 完全な死角から突然出てきた火槍。わざと隙を見せているのか? 誘いこまれたように動いたハスノールに合わせたように火槍が彼の体を貫こうとする。だがハスノールはそれをも避けてバックステップを踏み距離を取る。


「お前ぇ......」


「よく避けたものだ......一番弱い割にはな?」


「なんだと?!」


「そうだろう? 三大鬼とか言っていたがお前は三番目、つまりその中で一番弱いのだろう? 違うのか?」


「やかましい! 順番など関係ない! コケにしやがってぶち殺してやる」


「コケにされたのはこちらの方だ。まさかセントソラリスの聖騎士団長(パラディン)とリンクルアデル騎士団長を前にして出てきたのがお前みたいな三下とはな。怒りを通り越して呆れるよ」


「黙れ黙れ黙れぇ!」


 ハスノールは持っていた剣を右肩に担ぐように構えると左手を前に突き出すような構えると、剣先が赤く発光しはじめる。そこから発生したいくつかの火球が頭上へ浮かび上がると剣を振りぬいた。


ストークライナーズ(追いかける者)


 頭上より火球がセイラムへと襲い掛かる。セイラムはそれを迎撃するべく剣を払うが火球はそれを避けるように動きセイラムの体へと激突する。


「なにっ!」


「まだまだぁ!」


 体に衝突しても火球は消滅する事無く舞い上がり次々とセイラムへと向かっていく。そしてその隙を狙うようにハスノールはセイラムの懐へと飛び込んでくる。


ドールズアクション(実体ある幻影)


 真直ぐ突っ込んできたハスノールがセイラムの眼前で二人に分かれる。その一瞬の動揺をハスノールは見逃すはずもなく一斉に剣を振るう。反応が遅れたセイラムではあるが一方の剣で右側の剣戟を防ぎ、片方の盾でもう一人の剣戟を抑える。


 だが剣戟を手と腕に残る感触は明らかに実体のある重み。これは魔法なのかスキルなのか? しかしその思考する僅かな時間さえもハスノールは許さない。


「ケケケ、よく避けたな? だが、まだだ。ストークライナーズまで防ぎきれてないぜ?」


 その瞬間背中側から火球がセイラムへと激突する。火球は先程と同じく消滅する事無く衝突と同時に反転し何度もセイラムへと攻撃を繰り返す。


「グッ」


「はっ、頑丈な鎧で助かったな? だが終わりじゃないぜぇ!?」


 二人のハスノールは剣を翻すとそのままセイラムへと襲い掛かる。セイラムはリンクルアデル騎士団一番隊隊長に最年少で到達した剣の達人である。その幾千幾万と振られた剣の前に立ち塞がる男。


 三大鬼とはアネスガルドが誇る文字通り上位三人を指す。軽薄な物言いとは言え序列三位の実力は他の騎士とは明らかに一線を期しているのだ。


「騎士団一番隊が聞いて呆れるぜ。二度と偉そうな口がきけないようにしてやる。まあ死んじまうんだから話すこと自体出来なくなっちまうがなぁ! 剣士如きが偉そうに吠えてんじゃねぇぞ!」


 ハスノールはストークライナーズを巧みに操り隙を見てその刃をセイラムへと突き立てる。時に剣で、時には盾でその攻撃を防ぐセイラム。一方的に攻撃をその身に受け反撃の手立てがないようにすら見える。


 セイラムの攻撃はハスノールを捉えはするものの、ハスノールの体は悉く霧のように離散する。そしてすぐ隣に実体のように現れると再びその剣を振り下ろしてくる。


 以前より触れている通り、スキルと魔法が存在するこの世界において能力における取得速度や習熟度はスキルの有無により天と地ほどの開きが出てしまう。


 しかしそれを扱う人間自身が持つ基本能力はどうか? 明らかなる能力を持ってさえいれば努力など必要ないのだろうか? 同じスキルを持つ者がいたとすれば、その差は一体どこに生まれると言うのか?





お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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