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ご無沙汰しております。

よろしくお願いします。

「セントソラリスはアザベル様はもちろん、慈愛の神であるアントリテ様を崇めている。奸計とは言え受けた施し、また奸計を持ちかけた者がセントソラリス側である可能性が消えぬ以上、こちらから先制攻撃など教義に反する」


 陛下は拳を固めながら続ける。


「慈愛の心を以て全てを許す事が出来ればどれほど素晴らしい事だろうか。だが受けた屈辱を、我が国を侮蔑した怒りを収めるには事は重大すぎる。余は許すことなど出来ぬ! しかし......せめて、せめて余は......戦闘を行うにせよ正義は我が国にあることを神に伝えておきたかったのだ」


「......なるほど。陛下のお気持ちは十分理解できました。セントソラリスの矜持と教示の前に私は自らを恥じるばかりです。出過ぎた発言を何卒お許しください」


「良いのだゴードン卿よ。余も聞いてほしかったのだ。決闘は絶対に負けられぬ。しかし勝っても後の憂いを立つ事とは結び付かぬ。一難去ってまた一難。神はセントソラリスを......いやこれも神の試練なのだろう。我が国は必ず再生する。必ず生き返るのだ」


「しかしゴードン卿、これから我々はどう動くべきでしょう? 決闘は両国における約定に従い行われる。そこに我々の出番はもうないと言っていい」


「ロッテン卿、決闘と言う国家間の問題に我々が口を出す訳には流石にいかぬ。紆余曲折あったとは言え経済面での問題はクリアできておる。当然今後については懸案があることは否定できぬが」


 そう言いながらゴードンさんは俺を見た。そうなんだよな。当初の目的は果たしたと言って良い。これ以上は仕切り直しになるだろう。主に財政面での話についてだが。決闘については流石に両国が出るわけにはいかないからな。


「ゴードンさんの言う通りだと思います。決闘については私たちが出る訳にはいかないでしょう」


「うむ」


「決闘なら問題ない」


「アリアナさん?」


「我ら聖騎士団(ワルキューレ)、アネスガルドに後れなど取らぬ」


「だがブリザー......」


「その通りだ」


 その時、俺の言葉を抑えるようにセリーヌ陛下が言葉を繋いだ。


「ノーワンの戯言など気にする必要はない。正々堂々正面から全てを打ち破る。そうであろう聖騎士(パラディン)アリアナよ」


「はい、必ずや陛下に勝利の二文字を献上致しましょう」


「うむ。ドルスカーナとリンクルアデルには本当に世話になった。改めて礼を言う。今はこのような事態となりゆっくり労う事も出来ぬが、この件が片付いたなら必ず余が自ら両国の王の元へ参ることを約束しよう」


 ここまで言われてはゴードンさんとロッテンさんも流石にいう事がなくなってしまったようだ。この戦いが正々堂々と終わるものであればそれに越した事はない。


 と言うか仕方がない事なのかもしれない。それがたとえセントソラリスが敗ける事になったとしてもだ。それが戦争であり決闘であると思う。


 だが、今回はあのノーワンが絡んでいることを忘れてはならないだろう。俺は効かないにせよ、誰がどう惑わされているかまでは俺には分からないのだ。


 あの場でアッガスを止めて彼らの言い分を聞きセリジアホールデムに移行した事も本来はおかしい。ゴードンさんの言う通りその場で決着をつけれた可能性もあるのだ。


 だから......俺は俺の思う事を進言する方が良いだろうな。


「陛下、私からも一つ良いですか?」


「ヒロシか。良い、申してみよ」


「陛下のお言葉に反するつもりはありません。しかしこれ以上策を立てることなくアネスガルドに赴くことは如何なものかと思います」


「どういう事だ?」


「相手は言惑のスキル持ち。戦いがどう転んでも後からどうにでもできる事を忘れてはいけません」


「その様な事が可能なのか?」


「たとえ負けても侵略されたと彼が権力者に訴えれば風向きはまた変わります」


「そんな事はさせぬ!」


「もちろんそうでしょう。しかし、現実を正しく見る事も必要です。多少の噂も交えて整理をすると、彼はアネスガルドの王家を惑わし、ジルコニア大陸と事を構え、当時の王を亡き者とし、セントソラリスの王家の首元に手をかけるまでに至っているのです。その言惑のスキルだけで、です。ナディア様がドルスカーナに助けを求めに来なければどうなっていたか......」


「むぅ」


「国家間でセリジアホールデムが行われる以上、陛下もアネスガルドへ赴くでしょう。その間のセントソラリスの防衛も含め考えるべきです。もちろんその他の事についてもね」


「しかし、もう決闘として......いや分かった。まずお主の考えを聞かせてもらおう」


「はい。実は両国が戦闘状態に陥る事は私の想定内でもあります。この方向に流れた際の対応については予めこちらへ来る前に両国の陛下には伝えておりますのでご安心を。陛下たちも状況を見て内務卿とうまく纏めるように仰られておりました」


「なんと。本当にお前は何者なのだ? 本当にただの商人なのか? そもそもどうしてお主にはヤツのスキルが効かないのだ? どうしてロイヤルジャックとウインダムが王族だけでなくお前の護衛をしているのだ?」


「ただの商人ですよ。細かい事についてはこの件が上手く済めばまたお話しさせて下さい」


「加えてその慧眼。正直、余はお主の方が恐ろしいと感じておるよ」


「ご冗談を。それでは話を始めさせてもらいます」


 俺は考えを皆へと伝えた。まずはバドリーから情報を取る事が最優先である。奴ならある程度アネスガルドの情勢も知っているだろうからな。


 もしアネスガルドが本当にジルコニア大陸に手を出していたとすれば恐らく国力の低下は間違いないと言える。宣戦布告を決闘と言う形で受けたノーワンは言惑のスキルを使って自らの行いを正当化するに違いない。


 舞台はセントソラリスからアネスガルドへとその地を移そうとしている。アネスガルドで起こっている問題を片づける事が後のセントソラリス、いや両国の平和にもつながるのだ。




お読み頂きありがとうございます。

本格的な戦闘はあと数話先になりそうです。

リアルの都合で時間的に制限がありますので、

できた話から投稿するか書き溜めるか思案中です。

引き続きよろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
[一言] 長ったらしく無意味なやり取りせずサッサとケリつけろよな
2021/04/16 14:01 退会済み
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