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よろしくお願いします。

 数日が過ぎた。


 すぐに引越しかと思ったが、じいさんが店舗用に店を改築させるらしい。良いのか? 成功するとも分からないのに。プレッシャーが掛かるんですけど。


 じいさんが言うには売り先が見えているんだから大丈夫ってことだが、問題はそこじゃない。安価なポーションが作れるかってことなんだよ。俺をあんまり信用し過ぎないように。胃に孔が開くから。


 とは言え、それはやらなければいけない事だし成功させたいとも思ってる。俺は今の俺にできることをしようと日々を過ごしている。人間、考えて動くことで一日は長くも短くもなるんだぞ。


 朝はクロちゃんと散歩がてら薬草を集めたりして、昼はサティとの模擬戦をしてから学校から帰ってきたシェリーとロイの相手。夜は部屋の中で薬草についての実験やらなんやらだ。


 薬草はギルドの依頼としても出ているが、それは自分で採るのが面倒臭い薬剤店やらが依頼を出すようだ。あとはギルド自身が依頼として定期的に出している。基本薬草は野山に普通に生えている。散歩がてら野山に入りそれを採取しているぞ。


 大きなカゴを背負った俺とクロちゃんはさぞ勤勉な若者に見える事だろう。間違いじゃないぞ? 俺は文無しなんだ。ポケットに金貨2枚があるとはいえ、これはじいさんからもらったものだ。軽々しく使うわけにはいかない。


 じいさんは毎日お金が足りてるか聞いてくるが、衣食住が屋敷内で保証されているからそこまで必要ではない。本当にありがたい話だが毎日お金をもらってたら俺が堕落した世界から出られなくなる。


 傷薬の代わりになるのがヤモギと言われる植物だ。日本で言うとヨモギだ。形もよく似ている。そこに味を調整する甘味系の草を混ぜたりしてポーションの原型が出来上がっていく。この草の葉はポーションの風味を調整する草花としての理解程度だ。


 だが、俺は発見してしまった。まぁ、スキルの鑑定のお陰だが。この甘味成分調整用の草、名前をジキョウ草と言うのだが鑑定してみると、


≪鑑定≫

1.ジキョウ草の葉 : ポーションと一緒に煮詰めると甘くなります。

2.ジキョウ草の茎 : 滋養強壮の効果が得られる場合があります。

と出てきた。


 皆さん茎の部分は全て捨てているらしい。マジか......確かに甘い葉っぱの茎にそんなものは誰も期待しないし、気が付かないだろう。後は『効果が得られる可能性』これをどう解釈するか。恐らくだがそのまま茎だけを加工してもその効果が出ないのではないか?


 だが、もしこれを深く掘り下げて滋養強壮をメインとした薬剤を作ればどうなるか? これも売れるんじゃないのか? 夜に自信がなくなってきた紳士諸君らに。俺は一人ほくそ笑むのだった。だがその前にポーションの作り方を考えねば。捕らぬ狸の皮算用では俺の信頼が地に堕ちる。それは避けないといけない、ゼッタイ。


 シェリーとロイは元気だ。本当に元気だ。いつも庭で一緒に遊ぶんだがどんなに遊んでもその体力が尽きることはない。シェリーが回復させてるんじゃないだろうな?


 シェリーには薬草とか草花について教えている。こう見えて俺は漢方薬について詳しいのだ。オヤジが漢方薬狂いだったせいでな。指圧とかにも詳しいぞ。東洋医学万歳なオヤジだった。でもオヤジは風邪を引いたらすぐに病院に行っていたがな。解せぬ。


 シェリーはお母さんのように薬剤師になりたいそうだ。ソニアさんは基本家にいることが多いけど、薬剤師さんだったんだな。店が軌道に乗ったらうちの店を手伝ってくれないだろうか? ご令嬢に労働の2文字はないか。ないよね?


 ロイとはもっぱらチャンバラごっこだ。小さな木剣を振り回して遊ぶんだが、なかなか筋が良い。真偽が分かるとか言ってたが、俺の動きを先読みしてるんじゃないだろうな? ロイはお祖父さんのような強い男になりたいそうだ。ロイは父親の記憶がないからな。身近の男としてじいさんに男だけでなく父親像を重ねているんだろうか。


 クロードは頑張っている。それしか言えないくらいに頑張っている。サティと俺を見比べて何か言いたそうにしている時があるが言ってくれない。こちらから聞くのも変なので気付かないふりをしている。あと、クロちゃんとかクロって呼んでも怒らなくなった。だから俺はその時々によって色んな言い方で呼んでいる。


 問題はサティだ。まずはちょっとだけ棘が無くなった。これは良い事だ。だが分からん事がある。何事も基本からという事で体術を教えているのだが、手を掴んだりすると振りほどかれる。


 こっちは掴んでるのに急に引っ張るもんだから肩が抜けるかと思ったぞ。あと体に触れると逃げられる。練習にならん。あと、()()付けではなくサティと呼び捨てにしてくれと言われた。


 それは良いのだが、俺を呼ぶときにはヒロ・・・シさんと間隔が開く。俺も呼び捨てでも良いぞと言ったんだが何か違うらしい。なんなんだ。


 狂犬(ハウンドドッグ)の皆さんはあれから特に何もない。忘れてくれてたらそれが一番良いのだろうが、実は奴らの襲撃を待っている自分がいる。じいさんには話したがな。まぁこればかりは仕方がない、待つとするか。


 それから更に数週間が過ぎた頃、改築工事がようやく終わったとの知らせを受けた。実は時折クロードと見に行ってたりしてた。中には入れなかったけどね。早く中を見たいぞ。どうなっているのか楽しみだ。


 じいさん本当にありがとう。俺頑張るよ。



お読み頂きありがとうございます。

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