表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

308/362

304

よろしくお願いします。

 陛下の言葉に毒気を抜かれたのかアッガスは気を鎮めた。


「ドルスカーナから参られた英傑よ、すまないがしばし待たれよ。モノには順番と言うものがあるのでな。ヤツの言う通り二国間の問題ではあるのだ。今のところはな」


 陛下はアッガスを諭すように話すと目線をノーワンの方へと向けた。


「全てがお主の言う通りと言う訳ではない。このセントソラリスを奸計をもって侵略しようとした事実は最早消えぬ。しかし奸計とは言えアネスガルドからの物資をセントソラリスが受けたというのもまた事実」


「しかし陛下、それは奸計の中の出来事ではありませんか!」


 傍で聞いていたナディアが叫んだ。


「ナディアよ、その通りだ。しかしその奸計を目論んだのはアネスガルドだけではない。このセントソラリスの内務卿が絡んでおるのだ。この奸計をどちら側が企んだ事か。それを今証明する術はないのだ」


「でも......」


「そうだ。しかし、だ。このまま有耶無耶にすれば良いと言うほど余も寛容ではない。この受けた屈辱はアネスガルドに必ず報いてもらう」


 そこでノーワンが口を開いた。


「アネスガルドに報いてもらうだと? セントソラリスは既に貧困の中で喘ぐ事しかできない状態ではないのか? いつまたそこの聖騎士がブリザードを呼び込むかも知れぬというのに」


「ああ、報いてもらう。この場で剣を抜くのは容易かろう。しかしこの場に居合わせた協力者を巻き込むわけにはいかぬ。アネスガルドとしてもこの場でドルスカーナとリンクルアデルと本当に事を構えるのは望んでおらぬだろう?」


「こちらは受けて立っても問題ないがな」


「虚勢を張るな。後ろの護衛が手練れと言うのは分かるがこの場を切り抜けても、三国と本当に敵対するという意味が分からぬお主ではあるまい?」


「ふん」


「ここまでコケにされてこの場でお前の首を切った所で有耶無耶になりかねん。白日の下、正当に貴様を裁きアネスガルドに謝罪させるのが筋であろう」


「ならばどうするというのだ?」


「それを成すには王家がお前の勝手を知っているかどうか分からぬ。しかし実際にアネスガルドに赴けば王妃や国王の置かれた状況も自ずと明らかになるであろう」


 そう言うとセリーヌ女王陛下はゆっくりと立ち上がり声を上げた。


「セントソラリスはアネスガルドに対して宣戦布告する!」


「なんだと!」


 驚いた。すごい事になってきたぞ。俺の考えていた最悪のシナリオ、実はこのルートも考えていた。しかしまさか本当に宣戦布告するとは思っていなかった。確かに奸計による侵略が公になったのだ。しかも陛下自身が操られるという前代未聞のおまけつきでな。


「このままキサマを殺してアネスガルドに乗り込めばそれこそセントソラリスが侵略したと思われかねん。かと言って貴様を先に返せばキャサリン妃やアレックス王に危害が及ぶやもしれぬ」


 陛下は続ける。


「この場は帰してやろう。しかしセントソラリスはこれより二日後にアネスガルドに侵攻する。その時に王家に万が一の事があればそのままアネスガルドは滅びると思え」


「宣戦布告だと......」


「余を王家に会わせたくなくば、我がセントソラリスを退ければ良かろう。貴様に非が無いと言うのであれば王家の間へと通せば済む話だ。こちらとしても無駄な戦闘は望むところではない。尤も今のアネスガルドに抗戦の意志と力があれば、だがな?」


「なにを!」


 なるほど、宣戦布告は建前か。陛下もアネスガルド王家がこいつの手に落ちているのではないかと危惧しているわけだ。ここで殺して王家に乗り込めば事情を知らないアネスガルドはセントソラリスが突然侵略してきたと思われる可能性がある。


 かと言ってそのまま返せばどさくさにノーワンが王家に手をかける可能性もあると。宣戦布告は世界に向けて発信される。つまりノーワンの逃げ道を宣戦布告を行う事によって失くしたという事だ。


 流石は一国の王、考えているな。俺的にはこの場でコイツを断罪して終わりでも良いと思っていたのだが......後のアネスガルドとの関係も視野に入れての発言か。しかし抗戦の意志と力があればとはどういう意味だ? アネスガルドは侵略したかったんだぞ?


「三年前に前王が倒れた際に一つの噂を聞いておる。アネスガルドはジルコニア大陸に手を出したとな」


 ジルコニア大陸? そこは確か......


「今思うと前王が倒れたのも貴様が関係しているような気がしてならぬ。貴様、前王を亡き者として魔族と事を構えたのではあるまいな? そこで疲弊したアネスガルドは国力を回復させるために我が国に目を付けた。どうだ違うのか? 違うと言うなら申してみよ」


「くそアマが......」


「大層な口の利き方だ。軍備に力を入れていると噂のアネスガルドが奸計を以て侵略した理由。それはアネスガルド自身もその国力が低下しているからだ! 更に王妃と現王までその手に堕とすとは。貴様狂っておるのか!」


「やかましい! どいつもこいつもどいつもこいつもどいつもこいつも」


「なんだ図星か?」


「黙れ! 貴様らなぞに後れを取るアネスガルドではない。が、こちらとしても大規模戦闘は望むところではない......そうだな、セリジアホールデム(敗者に権利なし)を要求する」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

と言いたい所ですがストックが切れました(´;ω;`)ウッ…

週末に筆が進まなかった場合は何卒ご容赦下さい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  あらあら、切羽詰まってキレちゃいましたねぇ、ノーワンさん(笑)  どういう形態になるかは分かりませんが、"武"による裁定方法ならヒロシ側に有利になるかな? >セリジアホールデム  これ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ