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よろしくお願いします。

「な、な、な、なんだと? 馬鹿な何故だ? いや、こちらの紙にはサインが、サ、サ、サインが消えている! 消えているだとっ!? なんだこのシミは? 汚れているのか? はっ! まさか!」


 そこでバドリーは俺の方を見た。


「すみません。飲み物をこぼした時に実はかかってたんですよね、盛大に。ホント驚きましたよ」


「は?」


「これはヤバイと思いまして。上からスキルで汚れを消しておけば良いと思って咄嗟に隠したんです。上手くいったと思ったんですけどね」


「は?」


「私は魔法が上手くないものですから。スキルで消えて良かったと安心していたのですが」


「は?」


「魔法だけではなく、スキルも弾かれるのですね。いやぁ、魔封ってすごいなぁ」


「きききき、きさま、キサマ」


「いや、本当に申し訳ない。でも良かったですね。女王陛下は契約に異議を唱えていらっしゃいます。丁度良かったのでは? これも死中に活あり、不幸中の幸い、あと何だっけ?」


「よ、よご、汚れていただと? キサマ、キキキ」


「あれ? 怒っているのですか? 何を怒っているのですか? 結果としては良かったじゃないですか?」


「うぐぐぐ、うごごぅ」


 バドリーの震えは大きくなっていく。顔は赤く紅潮し目は吊り上がり、口からは何某かの言葉が漏れているが、何を言っているのかは聞き取る事が出来ない。


「ああ、そう言えばこの国は俺のもんだ! とか叫んでましたよね? 女王陛下をお前呼ばわりとか? あれはどういう意味でしょうかね? まぁ、私は本国へ戻る身ですので見届ける事は出来ませんが」


「じゅじゅじゅ10万枚、白金貨じゅじゅじゅ」


「いや、だからそれは無効なのでしょう? もう一度アネスガルド側と話をしないと。あと前回の契約書? まあそれも今となれば怪しいモンですけど、今回の契約でそれも無効となりました。良かったですね?」


「ぎぎぎぎ、うごごごご」


「こちらは無効ではありませんよ? 私も一枚頂きましたので大切に保管します」


「がががギギギ、ヒィヒィ」


「ヨカッタデスネ?」


 そこで俺は女王陛下に目で合図を送った。陛下はその視線を受け止めると言葉を続けた。


「よくもまあ余をここまでコケにしてくれたものだ。貴様にはそれ相応の償いをしてもらうぞ。あと、これはもう必要ない。貴様に返しておく」


 そう言うと陛下は自ら首飾りを外しバドリーへ見せると、そのまま机の上に落とした。


「ヒッ!、ヒッ、ヒッ、ハアアアァ、ハアアアッ」


 先程まで紅潮していたバドリーは今や顔面蒼白となっている。今も震えているのは怒りによるものではないだろう。


「アリアナ」


「はっ!」


「バドリーを捕らえよ。まだ殺すな」


 その言葉にアリアナは即座に行動に移した。何事かバドリーはアリアナに向かって叫んだが、彼女はそのままバドリーをぶん殴り意識を刈り取った。


「さて」


 陛下はノーワンに向き直り口を開こうとした時だった。ノーワンが話し始めた。


「彼が何か(やま)しい事をしたようですな?」


「ほう、キサマこの期に及んでしらを切るつもりか?」


「しらを切るとはまたおかしな事を申しますな? こちらに何か問題があるとでも? 逆にお伺いしたいですな? このような茶番に付き合わされたのはアネスガルドの方です」


「首飾りには催眠効果を誘発する仕掛けが施されていたようだが?」


「それはそちらの内務卿が仕組んだ事でございましょう?」


「アネスガルド、つまり貴様からの贈答品だと聞いておるが?」


「我が国から契約以外で何かをお渡しした事実はありませんな」


「契約書にも仕掛けが施されていたようだが」


「そのようですな。セントソラリスの内務卿も大胆な事をするものだ」


「アネスガルドは関係ないというのか?」


「先程から無償で良いと言っているではないですか? 白金貨10万枚? 全く驚きですな」


「先程バドリーがお前と話した内容はどうなのだ? あくまで知らぬと申すか?」


「何事か血迷ったように見えただけですな。全く意味が分かりません。いえ、本当の事ですので仕方ありません。それ以外にどう言えと?」


「ふん、まあバドリーから話を聞けば済む事だ。事が明らかになれば覚悟しておくのだな」


「どうぞお好きに。話が終わったのであれば私は帰らせて頂きましょうか」


 その時、アリアナが叫んだ。


「貴様、そのまま帰れると思っているのか!」


「何故帰れないのですか? セントソラリス内の問題をアネスガルドに言われても困る。アネスガルドは援助物資を全て無償にすると言っているでしょう? そちらの商人もその内容が記された証書を持っているではないですか?」


「ぐっ」


「何か問題が? 言い掛かりもほどほどにして欲しいものですな。揃いも揃って全くこの国は一体どうなっているのか。それでは失礼を」


 ノーワンはアリアナに冷たい視線を向けたまま答えた。陛下も何も言わず黙っている。ちょっと待て。根本的におかしいだろう? なぜ何も言わないのだ? と俺は話をしているノーワンに対して鑑定をかけた。


 ほう、なるほどな。これか。これがこの訳の分からん話の元凶か。


「ノーワン内務卿、私の方からも少しよろしいですか?」


「今度は田舎商人ですか? なんでしょう? あなたも何かおかしい点があると言いたいのですか?」


 俺は陛下の方を見ると、軽く頷き返してくれた。よし、じゃあ言わせてもらうか。




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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