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301

よろしくお願いします。

「貴方の持つ加護。それが原因なのでしょう? 貴方が加護を使いこなせないが故にこの災害が発生しているのですよ。それを知りながら何の対処もしないとは。これだけでも国を収めることができない理由になりましょう?」


「貴様……」


「今は収まっているとは言え、いつ貴方の持つ力が暴走するかもわかりません。貴方は騎士としてどう責任を取るつもりでしょうか? 国民を蔑ろにし、いや国を滅ぼそうとして?」


「そのような真似は断じてするつもりはない!」


「どうだか? 貴方にそのつもりはなくても事実そうなっているではありませんか? 国を守るべき存在が国を滅ぼそうとしているとは。全くあなたを見ていると滑稽だ」


「私は......」


「だから、先ほども言ったようにこれから貴方は私の下につくのですよ? 良いのですか? そんな口を聞いても? 全くこれだから女などに騎士団を任せるのは反対だったのですよ。まぁ、国のトップが女ではこうなる事も仕方ないことかも知れませんが」


「貴様、陛下を愚弄するか! もう我慢できぬ」


 アリアナさんはそう言うと腰にかけた剣に手をかけた。と同時に女王陛下が言った。


「待て」


「陛下?」


「よ、よ、良いのだ。ば、ば、バドリーはこの国を想ってしてくれたのだ」


「陛下!」


 アリアナさんは驚いて陛下の方を見返した。


「よく分かっていらっしゃる。もちろんその通りですよ」


「この文面が変わる事もお主が仕組んだ事か」


「うん? 人聞きが悪いですぞ陛下!」


「う、ううう」


「ふん。まあ今更ですな。そう、頑なに援助を受けようとしない貴方のために苦労をかけてアネスガルドへ取り次いだのだ。それが余計な事をしたなど言われた日には腹わたが煮え繰り返る思いでした。その時にノーワン卿からお話を頂きましてな」


「う、う、裏切った、の、か?」


「裏切り? この国のために動いたまでのこと。それを災害の原因を掴んでおきながら対処もせず、国民を守る事もせず、隣国に助けを求めた私を蔑ろにしたのはお前だ! 裏切ったというならお前が私を裏切ったのだ!」


 バドリー卿は女王陛下に向かい一気に捲し立てる。予想はしていたとは言え、この国の闇は思ったより深いようだ。いや、それはアネスガルドも同じか......?


 俺はバドリー卿に向かって言った。


「バドリー卿、確かに私たちが入るべき話では無かったようですね。両国の問題であり契約も成された事ですので私たちも本国へ帰りたいと思います」


「貴方には我が国の恥を晒す真似をしてしまいましたな。本来は外部に漏らすような事はしたくはないのですが」


「つまり口を封じると?」


「まさか! そんな事は致しません。まあそう言わずにもう少しお付き合い下さい。先ほどは私も少々言い過ぎましたのでな。貴方と両国の王に是非贈り物をさせて頂きたいのです」


「ほう、贈り物ですか」


「ええ、後ほどお渡し致しましょう。きっと気に入ってくれると思いますぞ?」


「それは有り難い。いえ、でも遠慮しておきましょう。変に催眠効果のあるものなら後が怖い」


「……何? 今何と言ったのだ!? 陛下お聞きになりましたかな?」


 その時、セリーヌ女王陛下が立ち上がった。


「もう良い。十分であろう、ヒロシよ?」


「良いとは? ヒロシ? この田舎商人は処罰せよという事ですかな? そういう事ですかな!」


 セリーヌ女王陛下はバドリーを真直ぐに見据えて話を続ける。


「下らぬ。全く下らぬ茶番だ。白金貨10万枚、そして王位はく奪に王女を差し出せだと? 巫山戯たことを抜かしよって」


「陛下?」


「バドリーよ、貴様覚悟はできておろうな?」


「何を仰ってますやら、陛下。サインをしたのは貴方だ! そして契約は成された。この国はもう貴方のものではない! 私のものだ! そうですな!」


 バドリーは再び陛下の方を見ると指をさして言った。当然だが本来陛下に対してこのような高圧的な態度が許されるはずもない。


「貴様、誰に向かって口をきいておるのだ?」


「え?」


「寝ぼけた事をほざくな。 貴様如きにこの歴史あるセントソラリスをくれてやる訳がなかろう? 寝言は寝て言え」


「何? そんな......」


 バドリーは一瞬何事か考えたように見える。しかし首を振ると自らの考えを否定したようだ。


「いや、陛下。この田舎商人については別としても、いくら申したところで既に契約は成されているのですぞ! 今更どうにもできますまい!」


「契約なぞしておらぬ。そんなものは無効だ」


「は? 何を言っているのだ? 契約は成された。お前自身がこの通りサインを......を? おおおおお?」


「余をお前呼ばわりとは貴様も偉くなったものだな。お前の好きなこの契約書だが斜線が入っておるがな? 無効という事だろう?」


 陛下は自分の持つ契約書を裏返しバドリーへと示した。その表面には魔封により契約不成立の印である斜線が引かれている。バドリーは自分の持つ契約書を見てわなわなと震えている。



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >本筋とは関係ないけど、それでもちょっと気になる点  今話における女王のバドリーに対する呼称ですが、"バドリー"はいいとして他に"お前"、"お主"、"貴様"以下の3つが混在しています…
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