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よろしくお願いします。

 それを見た女王陛下が口を開いた。


「よせバドリー。折角彼が証人となると言ってくれておるのだ。商人とは言えドルスカーナからの正式な使者だ。他国が間に入ってくれるなら、余も今度は妙な事を言ってアネスガルドへ不平を言うこともあるまい。違うか?」


「確かに。よ、よく考えればその通りですな」


 バドリーは服装を正してノーワン卿の方を見て言った。


「ノーワン卿、新しい契約書が既に用意されているのです。前回の契約書は破棄するという証明書を発行してもよろしいですかな?」


「もちろんだ。新しい契約書にサインを頂けれるのならな。他国が証明してくれるならアネスガルドとしても有り難いくらいだ」


「承知致しました。それでは直ぐに用意致しましょう」


 バドリーは係りの者に白紙の契約書を持ってこさせるとそこに前回の契約書は無効にするという証明書をその場で作成した。


「女王陛下、これで良いですかな?」


 女王陛下はその証明書を見てから俺の方にも見せるようにとバドリーに指示を出した。


「くっ、何故こんな男に見せる必要があるのだ」


「私も保管する人間になりましたので当然確認する権利はあるかと思いますが?」


「分かっておるわ! グダグダ言わずにさっさと確認しろ!」


 バドリーは酷くイラついているようだ。


「全て正しいかと思います。サインをして魔封を」


「ふん。分かっておるわ!」


 内容を確認したところ問題もないので俺は証明書をバドリーへ差し出すと、彼はそれを俺から乱暴に取り上げて戻っていったのだった。


 証明書に二人がサインをし魔封が施される。一瞬薄っすらと光を放った証明書であるが見た目に変わった所はない。魔封を施すと光を放ちながら書面に細工がないか確認がされる。


 確認と言っても魔法などの類を強制的にキャンセルさせる事だ。つまり何某かの手が加えられている状態では魔封は出来ないという事になる。


「女王陛下、こちらが証明書となります」


「うむ、其方が責任をもって管理してくれ。そして一部はヒロシへと渡すのだ」


 そして俺も証明書を受け取った。


「あれ? 真っ白なんですけど?」


「本当にお前は商人なのか? 魔封をしたら一度白くなるのだ。しばらくそのままだ。もう少し待てば文面が現れる」


「ほう、魔封とはそのような仕組みなのですね。文面が現れたら契約完了ですか」


「お前の国では魔封はしないのか?」


「実は......魔封をしての契約は......」


「チッ、全くこれだから後進国は。契約書として成立すれば文面が現れるが、不成立であれば表面に斜線が入るのだ。その状態で魔封される」


「魔封はされるのですね?」


「そうだ。だから契約書は一度きりなのだ。不成立の場合はやり直しだからな」


「田舎商人でお恥ずかしい」


「田舎者の相手をするのもうんざりだな。ドルスカーナとリンクルアデルのレベルが窺い知れるというものよ」


 その後浮かび上がってきた文面を確認してから念のため鑑定をかけてみたが問題は発見できない。この証明書がある限り前回の契約書はこれで破棄されたことになる。


「女王陛下、それでは続きまして新しい契約書にサインをお願い致します」


「うむ」


 女王陛下は再度内容を確認している。一枚目を読み終えたときだった。


「問題はございませんか女王陛下?」


「うむ、問題ない」


「それでは先に一枚目を魔封しておきましょう」


「あれ? 二枚一度に魔封をするのではないのですか?」


「貴様はいい加減に黙れ! 二枚一組の仕様にしているから、分けて魔封しても問題ないのだ。仮に二枚目に問題があった場合、一枚目にも斜線が入るのだ」


「魔封とはすごいですね」


「お前以外の商人は全員知っている事だがな」


 バドリーは契約書を持って先に魔封を施した。契約書は淡い光を二度放ち落ち着いた。


 ん? あれ? 二度光ったよな今? 見間違えではないかと思うが......


 もう一部を魔封した際も同じだった。確かに二度光ったよな。


「バドリー卿、今二回光りませんでしたか? 契約書が二枚あるからでしょうか?」


「何を言っておるのだ貴様は。一度しか光らなかったであろう? 光るのは一枚につき一度だけだ」


「いえ、確かに二度光ったと......」


 そこで向こうのテーブルで座っているノーワンが声を上げた。


「やれやれ、いい加減にして欲しいものですな。バドリー卿、流石に神聖なる契約の場に相応しくないとしか言えませんが?」


「こ、これは大変失礼を。貴様、余計な事を言わずそこで座っておれ!」


「い、いやしかし......」


「女王陛下、これでは纏まるものも纏まりませぬ!」


「ヒロシよ......余に、もい、一度しか光ったようにしか、み、み見えなかったが?」


「陛下......」


「そういう事だ。さあ、陛下。それでは二枚目をお渡し願えますでしょうか?」


「うむ、これだ」


「ありがとうございます」


 バドリーは一枚目を陛下とノーワンへ返すと二枚目に魔封を施すために戻ってきた。


「それでは二枚目にも魔封を施します」


 魔封を入れるその瞬間だった。


「ま、待て。待つのだバドリー!」


 ガタッと音を立てながらセリーヌ女王陛下が立ち上がった。どうしたのだ一体? 陛下がこのような場で慌てて立ち上がるなんて普通では考えられないぞ。



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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