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この回でプロローグは終わりです。

 どうして俺の名前を知ってるんだ?


 これまでのアンケート内では個人を特定できる内容はなかったはずだ。名前はもちろんメールアドレスすら打ち込んでいない。何かのウイルスに感染してしまったのだろうか? 色々な疑問が浮かんでは消えていく中、俺は一つの結論に達した。


気にしないでおこう......


 それしかない。見たところ何かに汚染されているわけでもなく、PCに不具合が生じている様子もない。会社のPCでネットサーフィンに勤しんでいて申し訳ないとも思うが、それも不具合が起きていないので何か不都合が生じているのかさえ判断がつかない。こうなるとあれだ、祈るしかない。


 こうして俺は八百万(やおよろず)の神に祈りを捧げるのであった。


 あれから1か月が経過した。PCにも何も異常がなく特に何か悪用されている形跡もない。個人の口座やその他関係するフォルダにも残高が減ったとか、消去されたとかいう事もない。全てが普通のままだった。そうしている内に俺はその事すら忘れていくのだった。


 明後日の経営会議に出席するため今日の夜行便で日本へ帰ることにしている。今日は昼過ぎで仕事を切り上げて家に戻るつもりだ。家族へのお土産も買ったぞ。今回からお菓子とか料理の素とか色々なものを持って帰ることにしている。あと1年もしない内にタイともお別れだからな。


 空港のイミグレーションを抜け、待合スペースへ。出発は午後の9時、翌朝5時前には日本に到着している予定だ。社長とは言えエコノミーを使わされている俺のシートは主翼の少し後ろだ。別にエコノミーが嫌ってわけではないぞ。少し悲しいだけだ。


 座席に乗り込むと早速シートベルト閉める。前のポーチにはiPadを入れている。12.9の大型サイズであるが、少し老眼がきつくなってきている俺には丁度いい。備え付きのモニターで好みの映画がない場合にはiPadに入れてある映画を見るつもりだ。


 そうこうしている内に飛行機は飛び立った。FA(フライトアテンダント)が食事の世話やらなんやらで忙しそうだ。隣に座っている赤い髪の女の子。人形で遊ぶのは良いけどこの肘かけの内側には入ってはいけませんよ? エコノミーでは守るべき絶対のルールです。


 エコノミーの狭い空間ではあるが、快適な眠りの為に飯と酒は俺の中で必須だ。チキンとビーフどちらにしますかって聞かれるが俺はいつもチキンだ。これは俺の偏見も入ってるかと思うけど、鶏肉なら何をどうしてもそれなりに美味いと思うからな。


 ビーフは美味いのは認めるがやりようによってはカッチカチになってたりする時があるので、美味しそうに思えても機内食などレストラン以外で食べるときには敬遠するようにしている。チキンは結論から言うと美味かった。まぁ、俺のなんちゃってグルメでは何食っても美味いんだけどな。


 とか思いながら食べてると人形が飯の中にダイブしてきた。母親がオーマイゴッド!と叫ぶ。バカヤロウ、叫びたいのは俺だ。先を越すんじゃねぇ。


 母親が謝ってきたのでオッケーオッケーと笑顔で言ってやった。ホントはブチ切れしたい所なんだが女の子の泣きそうな顔を見ると何も言えん。


 人形も顔のあたりを紙ナプキンで拭いてやって最後に食事についていたチョコレートをガキの皿の上にのせてやった。ちょっとやり過ぎたぜ。でも、皆ホンワカする気持ちになるなら良いじゃないか。


 そんなこんなで食事が終わり一段落した俺はヘッドホンをつけてモニターを見ている。機内の据え付けモニターで見ているのだがもう眠くなってきた。ビールではなく度数の高いワインを選んだのが正解だったな。


 そして俺は緩やかに眠りに落ちていくのだった。




 バーン!!




 という音と共に飛び起きた。


 なんだ? 機内は激しい揺れに見舞われている。乱気流なのか?とふと窓に目をやった俺は驚愕した。翼から火が出ている。


 さらに激しい揺れが来たかと思うと頭上から酸素マスクが飛び出てきた。おいおいおいおい。機内ではFAが何やら叫んでいる。落ち着けとかシートベルト閉めろとかそんな内容だが、乗客は一部パニックに陥っている。


 そりゃそうだろう、機内を明るく照らすくらい主翼の炎は激しい。俺は何とか酸素マスクを装着するが、救命胴衣なんてつけれない。そもそもどこにあるんだ? この激しい揺れの中どうしたらいいんだ。


 反対側で大きな音と共に叫び声が上がる。窓越しに見えるのは火だ。どうなってんだ。俺もとっくにパニックだが叫ぶと言うよりは固まってると言った方が正しい。


 『どうしようもない』と言う絶望の気配が全身を包んでいく。機首が下がったようで恐ろしい速さで墜落していくのがわかる。耳と頭が割れるように痛い。凄まじい痛みだ。


 それがGによるものなのか、痛さによるものなのか、もしくは機体が大破したからなのか分からない。


 俺の意識は途絶えた。





”転移プログラムを執行します。”

”惑星パナスへの空間接続完了”

”神々の真理において矛盾点を修正中”

”惑星間における相原比呂士の基礎能力を補正中”

”惑星間における相原比呂士の精神耐性を補正中”

”惑星パナスにおける相原比呂士の環境適正値を補正中”

”惑星パナスにおける相原比呂士のギフトを解析中”

”惑星パナスにおける相原比呂士の年齢調整にエラー発生”

”惑星パナスにおける相原比呂士の記憶調整にエラー発生”

”年齢調整において調整完了、最終適応年齢は25”

”記憶調整において調整不可、現存する記憶の消去を回避しました”

”惑星パナス......”

”惑星......”

”惑......”

”転移プログラム完了しました”



読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] > 座席に乗り込むと早速シートベルト閉める。 > 落ち着けとかシートベルト閉めろとか シートベルトは締めるもので、閉めるものではない。
2021/11/17 13:43 退会済み
管理
[一言] これはどこぞの神様達が主人公1人を転移させる為に飛行機落としてなんの罪も無い人を巻き添えで大勢殺したって事でいいのか?
[気になる点]  まだ読み始めなので、具体的な感想はいずれ。  で、ちょっと気になったのですが、主人公の氏は"相原"と"朝比奈"どちらでしょう?  本文では"相原"でしたが、あらすじでは"朝比奈"に…
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