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よろしくお願いします。

「で、なんでお前がいるんだよ?」


「いつもいつも蚊帳の外はもう我慢なりませんわ!」


「いや、でもお前王女だろう。あっ、お前って言ってごめんなさい」


「いいんですわ! ヒロシ様は呼び捨てでも問題ありませんわ!」


 飛行船が飛び立ち俺たちは談話室へと案内され関係者と話をすることにした。席についたその時に何気なく横を見るとアンジェがいたのだ。


 なにをしれっと座ってるんだよ。思わず二度見したぞ。全く頭が痛い。旅立つ前に問題は発生しなかったが、後から来たか......。ゴードンさんとロッテンさんはひっくり返りそうになってるぞ。


「全く。呼ばれもしてないのに乗船しているなんて。リンクルアデルの王女様は何を考えてるのかしらね?」


「お前も呼ばれておらぬだろうが!」


「痛い!」


 そういってアッガスはボニータの頭にゲンコツを落とした。ボニータさんよ......あなたも王女様ですよね? この国の危機管理は一体どうなっているんだ。


 そう、ロッテンさんもひっくり返りそうになった理由。それはボニータ王女も乗っていたのだった。


「どうしよう、アッガス。頼んで引き返してもらった方がいいよな?」


「そうだろうなあ。さすがに王女様二人を連れて行くわけにはいくまい」


「嫌です! 絶対に嫌ですわ! 私は必ず役に立って見せます、お願いだから捨てないで!」


「アンジェよ、人聞きの悪いことを言うんじゃありません」


「わ、私も嫌です! この無駄にでかいシマシマ男よりは役に立ちます! 返すなら私ではなく、この野獣を飛行船から落として下さい!」


「このじゃじゃ馬がぁ!」


「な、何よ! 睨んでも駄目よ! 私は絶対に帰らないんだから!」


 カオスだ。セントソラリスへ着く前にこっちの国が危なくなるんじゃないだろうか。


「でも、ヒロ君。流石に今から引き返せないわよ。これだけの人数がいるんだから一人や二人増えても大丈夫じゃないかしら?」


「そうかな」


「実際にアンジェの知識は役に立つだろうし、ボニータの腕も確かよ。ロイヤルジャックの一員なんだから」


「なるほど」


 今、アンジェとボニータの二人の目は輝きサティを見つめている。こうやってサティは知らないうちに親衛隊の数を増やしているんだな。サティは男前だなぁ。


 俺は内務卿の方を見たが放心状態だ。口から何か白い煙のようなものが出ているように見える。


「仕方ない。連れていくか。」


「「ヒロシ様!」」


「でも護衛をつけないわけには行かないな。アッガス、ボニータの警護ってどうなってるの?」


「基本ボニータは警護する側の人間だからな。王女とはいえロイヤルジャックの一員なのだ。護衛は必要ない」


「そうか、じゃあ基本的にボニータはアンジェの側にいてやってくれないか?」


「え?」


「アンジェもその方が良いだろう?」


「え?」


「なんだよ」


「い、いえ。でもこの人に護衛の任務ができるのかしら?」


「この人にそもそも護衛なんて必要なのかしら?」


 あれ? 仲が良さそうに見えるのだがな?


「ふーん、じゃあ帰るか?」


「「嫌です!」」


「じゃあそう言うことで。良いよな?」


「え、ええ。もちろんですわ。特別に護衛をさせてあげますわ」


「ええ、こちらこそ特別に護衛をしてあげるわ」


 なんだかよく分からんが良いだろう。上手くやってくれ、頼むから。


「で、どうやって乗船したんだ? 簡単に入れるわけではないだろう? セントソラリスの船だぞ? 密航みたいなマネをしたらダメだろうに」


 ちょっとは窘めておかないとな。そう聞くと二人は話し始めた。


「まずは私が先に立って歩いたんです」


「その後に私が続く格好ですわ」


「入口に立っている護衛に王女も同行することが決まったと」


「先に入るので一切の邪魔をしないようにと。他の者には既に伝えておりますと言ったら、了解しましたと」


「なので密航ではないかと」


「密航ではございませんわ!」


「堂々と正面から入ってきてたのか......恐ろしい」


 二国の王女が直々に正面から入ってきたのだ。これはセントソラリスの護衛を責めるのも可哀想というものだろうな。しかも一人はロイヤルジャックの一員だし。


「陛下たちには言ってきたのか?」


「い、忙しそうだったわよね?」


「そ、そうね。忙しそうだったわ。お父様の邪魔をする訳には参りませんのであえて、あえて言わずに来ましたわ」


「言ってないんじゃねぇか。今頃向こうはパニックになってんじゃないだろうな」


「母上には伝えております」


「え?」


「ちょっと怖かったので二人で言いに行きましたの」


「お妃様たちはなんと?」


「いえ、母上達とマリー様で何事か話したおりましたが......」


「そのまま何も言わずに部屋を出て行ってしまいましたわ」


「つまり良いってことよね?」


「そうですわよね?」


 黙認しやがったな。チクショウ。しかしお前ら仲が悪そうな振りして息ピッタリじゃねぇか。二人はニッコリと笑みを浮かべて俺の方を見ている。完全に気が削がれてしまったぜ......


 はあ、仕方ないか......。俺はナディア王女の方に振り返り謝罪した。


「ナディア王女、大変申し訳ございません。事後報告となってしまいましたが、この二人の乗船許可も頂く形でご了解頂けませんでしょうか」


「もちろんですわ、ヒロシさん。お二人とも色々とお話ししたいと思っておりましたの。むしろ嬉しいですわ」


「そう言って頂けると大変助かります」


「あと、ヒロシさんも私に言ってないことがありますね?」


「何かありましたでしょうか?」


「ヒロシさんはただの商人ではないのですって?」


「え?」


「商人にしては、なぜ王族とこれほど近しいのかと疑問だったのです」


「あ、はい」


 マスカレードの事を誰か話しているのか? セントソラリスの神託にそれらしい言葉が出ているようだからな。変に期待をされても困るのだが。神様にも勘弁してくださいと言いたい。


「あなたは......」


「はい......」


「伯爵家の跡取りなんですってね。その上で大商会の会長でもあられるとか? 両陛下が信頼しているのも頷けます」


「アッハイ。はいはい、そうなんです。伯爵家ではありますね。すみません、この話が始まって言い出すタイミングを逃しておりました。改めてよろしくお願いします」


「もちろんです。ただそれでも両陛下の信頼ぶりを見ると他にも何かありそうですけど......?」


「はは、買い被りですよ王女様。それでは向こうについてからのお話をさせて頂いてもよろしいですか?」


「はい、そうですね。それではさっそく始めましょう」




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[気になる点]  加速する、"ヒロシの女難"(笑)  果たして、最終的に何人の女性から追っかけられる羽目になるのだろうか?(爆) [一言]  まぁ、両国の内務相が白目向くのも分からなくはないですが、…
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