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よろしくお願いします。

 長老との話は半日に及んだ。途中からは全く違う方向の話であり、かと言って関係がない話でもない。俺はその話について何も言うことができなかった。


 もしもの場合にはラースを通して話をする。だが基本的にサーミッシュとしては関与しない。この時点で俺が理解できた事はたったこれだけだった。残りの話はデカすぎて俺の理解を超えてしまった。


 本当かどうか知らんがシュバルツ陛下やダルタニアス王にも話を通しているとかなんとか。ちょっと信じられんぞ。どういう会話だったのかが気になって仕方がない。


 長老は最後に、返事は今日でも100年後でも良いと言い残して笑いながら帰っていった。


 とっくに死んどるわ。


 屋敷の外で長老を見送った後、振り返るとラースがいた。


「お前、知ってたんだな?」


「知ってはいたけどね。僕からは何も言えないし決められないよ」


「それはそうなんだけどさ。何というか......まあいいや。今は他にやるべきことがある」


「貴方様は本当に珍しい人だ」


「何が?」


「これまで出会った人、いや過去に遡っても中々貴方様のような人はいない」


「長老もお前もなんだよ、その貴方様ってよ。それに俺みたいな人間はどこにでもいるさ。むしろ多いんじゃないのか? 臆病で面倒臭がりで問題を先送りする事に情熱を注いでいるんだぞ」


「そうは思わないけどね。でもそういう人間が血眼になって欲しているモノを貴方様は欲していないんだよ。それは信じられない事なんだよ」


「そんな事はないさ。それでその貴方様ってのは?」


「もう貴方様を名前で呼ぶ人間はサーミッシュ、いやドルツブルグにはいないと思うよ」


「なんだよ、嫌われちゃったか?」


「ふふ、どうだろうね?」


「なーにがどうだろうねだよ。お前も長老と一緒だぜ。勿体ぶるなっての。しかしサーミッシュの助けは期待できないってことは分かった。今はこれで良しとするよ」


「僕も行くから、先方で必要になったら協力できるかも」


「長老もそんなことを言ってたな。なんで?」


「ほら、僕は長老と連絡することができるからだよ」


「ふーん、そんなに簡単に連絡できるの? じゃあどうしようもなくなったら......またお願いしようかな」


「そうするといいよ。じゃあ僕はガイアスのところに戻るね」


 そう言うとラースは走って行ってしまった。


 とりあえず話の内容については家族にも言っておくべきだろうな。



---------------------------------------



「で、どうするのよ?」


 説明を終えた後サティが言った。ソニアは子供をあやしながら話を聞いてるかどうかも怪しいぜ。


「なんにも考えてない。どうしよう」


「猶予期間が100年もあるんだからゆっくり考えれば良いんじゃないかしら?」


 ソニアはもう考えるのをやめてたんだな。清々しいまでの流しっぷりだぜ。


「そうだな。そうしようか」


「ま、それが良いかもね」


「僕は最初から何も考えてないっすね」


「お前はもう少し考えろや」


 クロがお茶のお代わりを注ぎながら言った。まあその通りかもしれんな。今は明日からのセントソラリスに集中しよう。



--------------------------



 セントソラリスへ同行することになった人間。

 

 両国の内務卿、これは前にも言ったが資金面等々の話をするためだ。そしてその護衛にリンクルアデルからはウインダムの一番隊、ドルスカーナからはロイヤルジャックのアッガスとその部隊が。


 そしてサティ、クロ、シンディ、レイナとその部下。そして天空の剣、最後に俺だ。


 中々の大所帯だが仕方あるまい。要人警護だからな。これらがセントソラリスの飛行船に乗り込んで王都エルモへと出発することになる。


 これら皆をNamelessの商人団と称して行く事にするのだ。


 それには理由がある。ナディア王女が出て行ったのは良いが、戻ってきたら両国の要人が押し寄せてきたなんて知れたら普通はパニックになるだろう。


 ナディア王女ではないが押しかけてきてるんだからな。最悪はアネスガルドと同様、国家に対して侵攻を企てていると思われかねないからだ。


 おそらく事情を話せば女王様はすぐに納得してくれるのではないかとは思う。ナディア様もいるからな。ただ、俺の中でそれをしない方が良いという予感があるのだ。


 だから俺が話をして大丈夫と思った段階で正体を明かすことで皆には納得してもらっている、

 

 シュバルツ陛下はこの件が心配だからとドルスカーナでの滞在を伸ばす判断を下した。放っておくとブチ切れたダルタニアス王がアネスガルドに殴り込む可能性もあるので妃衆からもお願いされたらしいな。


 自国も資金難で困っていただけに、そこに付け込もうとするアネスガルドが許せないのだろう。まあ、アネスガルドが経済戦争を仕掛けているのかわからない段階で感情的に動くわけには行かないが。


 そうなのだ。こちら側では経済戦争だ侵略だと盛り上がってはいるが、何一つ確証がないのだ。先入観は時として判断を鈍らせる。そこは注意しないといけないと思ってるのだ。


 家族もドルスカーナのサティの実家で滞在を延長する。理由をつけてロングフォードからじいさんたちがやって来るみたいな事を言っていたな。良いのかそれで。


 じいさんのことだからドルスカーナにもホテルを建てたいと思っていると俺は睨んでいる。何にせよ俺としては両家が仲良くやってくれるなら嬉しいことだけどな。


 まあ、旅立つ前に問題が発生するより何倍もいいぜ。そうして俺たちは船に乗り込みセントソラリスへと出発したのだった。




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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