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よろしくお願いします。
今、復活したレイナと俺は打ち合わせ中だ。あの一瞬で少しやつれたように見えるのは気のせいという事にしておこう。ソニアは怒らせたらダメ、絶対。
「と言う訳で、バルボアのエステサロン予定地について確認を進めてくれ。バルボアではこの泥エステを大々的に売り出そう。効果は間違いない。アデリーゼとロングフォードについてはもう少し考えるよ」
「畏まりました」
「で、レイナの話したいことってなにさ?」
「あのですね、港の建設にあたって少し問題になっている事がありまして」
「なんだろう? 住民の反対とかじゃなかったら良いけど」
「いえ、住民の皆さんはとても好意的です。キレイになるし仕事も増えるって事ですから」
「まぁ環境汚染をする訳じゃないからな。なら良かったよ」
「問題は海の中にありまして」
「へえ」
「なんと言うか、藻というか海藻が群生しているんですよ」
「取れば良いんじゃないの?」
「はい。問題はとったモノをどこに廃却するのかって事なんです」
「そうか......そらそうだよな。食べれないの?」
「は?」
「いや、ゴメン。ええと海藻は食べれるモノもあるんだよね。そんな目で見るな、ホントだ」
「あ、あのようなモノを......社長が食べろと言うなら食べますけど」
「いや、そう言う事を言ってるんじゃない。別に食べろとも言ってないぞ、いいな?」
海藻サラダって今まで食べてなかったか? 上手くいけばホテルの食事として売れるんだろうか? これも一つ頭に入れておこう。
「では今はやめておきましょう。それで話を戻しますがその処理に困っているのです」
「微妙に話が通じていないような気がするがまあ良いだろう。どんな海藻がどれくらいあるか確認しないとな」
「一応サンプルを持って参りました」
「流石気が利くな。では早速見せてくれ」
「これです、よいしょ」
レイナはカバンから大きな瓶を取り出すと俺の方へと差し出した。おい、ちょっと待て。今どこから出したんだその巨大な瓶を。
まさかそのちっちゃなカバンから出したと言うつもりではあるまいな? アリスのポケットと言い、お前のカバンと言いおかしいだろ!
「色々と言いたい事があるがまあ良い。これって......なんだ?」
パッと見した俺の感想はムー〇ン谷にいそうなニョロっとした奴の黒い版だ。うむ、これは食いたくない。話によるとこれは一部であって身の丈以上の高さのものが海底でユラユラと揺れているらしい。
キモいな。
「レイナ、すまん。これは口に入れたらダメなやつっぽい。くれぐれも食べたりしないように」
「畏まりました」
ビンの中に手を入れて触って見ると感触がナマコだ。触ったことは無いがこんな感じだと思う。ブニョブニョしている。嫌すぎる。テーブルの上に置くと弾力でボヨンボヨンした。なんだこれは。
切ってあるので切断部を見ていると中は透明だ。そうだな言うなればゼリーだ。少し中を掻き出してみた。しばらく手に持っていると柔らかくなってきた。イヤラシイ表現をすると潤滑ゼリーみたいだ。
夜のお供にできるかな? スイートメモリーズにも幅ができるな。しかし、潤滑ゼリーの大量生産をNamelessがしても良いのか? そう思いながら俺はゼリーに鑑定をかけた。
「はうっ!」
「ど、どうされましたか!?」
「ん? いや、ちょっと待ってくれ」
驚いた。まさかロングフォードではこのようなものから天然ミネラルが採取できるとは。とりあえずなんでも鑑定してみるものだな。鑑定の結果はこうだ。
≪鑑定≫
名前:ジェリーウィザード
詳細:天然ミネラル配合(極大)ただしジェリー分離後数時間で効能は失われる。
乾燥注意 飲食不可
「社長?」
「レイナ、現在の港の開発する場所全てにこの海藻の生息場所が重なっているのか?」
「いえ、観光船の停泊所自体は完成しておりますので。今の懸案は個人所有の停泊所の場所となります。プラチナから一般用のクルーザーの停泊所ですね。それが丁度あの一帯となります」
「うむ。よし、その場所は開発禁止だ。そこはこの海藻を取るための地域としよう」
「これ......をですか?」
「ああ、理由を詳しくは言えないがこの透明のゼリー部分にエステに対して素晴らしい成分が含まれているのだ。先ほど言った泥の代わりになる」
「分かりました。それでは個人用の停泊所は少し離れた場所へと移しましょう」
「うむ、そうしてくれ。それでロングフォードとアルガスのエステにはこの海藻エステを普及させる。効果は間違いないだろう。バルボアは逆に泥エステだけだ。そこはキッチリと分けるように」
「畏まりました」
「スバンか誰かに言って、海中にあるこの海藻の量と生態について調べてくれ。直ぐに生えてくるのかしばらくかかるのか」
「直ぐ生えてくるかどうかについてはもう分ってます。スバンが言うにはこの海藻は海の雑草みたいなもので放っておいてもすぐに生えてくると。恐らくこの場所に固まっているのは丁度潮が緩いからだろうとの話です」
「なるほど、それなら尚の事都合が良い。この場所はNamelessに使わせてもらおう。仕様用途については当然秘匿事項だ。ロングフォード内、及びアルガスまでの輸送はラザックを通してくれ。ガラムかグランがやる事になるだろう」
「了解致しました」
そのあともう少し内容を詰めてレイナは港へと戻っていった。この話がまとまる、と言うかレイナの事だから直ぐにまとめるだろうが、それが終わればいよいよドルスカーナだ。
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