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よろしくお願いします。

 次の日、俺たちは王城へとやってきた。じいさんと俺たち家族だ。特に大きな用事はない、ロングフォードへ戻りますねと挨拶をする程度の事だ。


 話の内容としてはもちろん挨拶、バルボアの状況やアデリーゼのエステなど商売に関する事も話した。エステに関しては王妃様よりその場で会員になると申し出があった。エミリアの話によると特別会員になりたいと言っている人が結構いるらしい。やはり王都アデリーゼ。金持ちが沢山いるんだな。


 ただし金を持っているからと言って直ぐに特別会員にはしないのだがな。そこに至るまでには少し時間が掛かるものと認識、定着させる必要がある。あくまで『選ばれた者だけ』というこの甘美な響きが彼女たちの心を激しく揺さぶるのだ。


 クルーザーに関しては陛下は現段階での購入はしなかった。俺も実は陛下に売るつもりはなく、その点を踏まえて話をしたのだが。俺の考えを話した時にそれなら買うと言い出したが、王妃やゴードンさんに我慢するように諭されていた。少し子供が駄々を捏ねているようで面白かったぞ。言えないけどな。


 とにかく陛下自身に海上での楽しみ方を知ってもらってから改めて紹介すると言っておいた。俺の船も目下建造中だからな。だが、レイナ含め職人たちが具体的な俺の案を受取ったので急ピッチで進められているらしい。


 あとはバルボアの観光の目玉になるであろう設備。これに関しては既に完成しており現在保安に関する点検と実地試験の真っ最中だ。レイナには安全対策が俺の言っているレベルに達しない場合は絶対に許可をしないことを付け加えておいた。


 バルボアにはNamelessの支店を作りはしたが、しばらくはエミリアが兼任する。なのでバルボアの目玉設備の進捗に関する情報はエミリアからの回答待ちとなる。アルガスの社長になったエミリアは相当忙しくなるだろう。


 レイナが言うにはそれくらい出来ないと側近として問題との事だが、俺は間違いなく激務だと思う。レイナにはエミリアの健康とアルガス支店の人員増強も指示しておいた。


 これで大体の話は終わりだな。しかしアンジェは先ほどから浮かない顔をしている。エステにもあまり興味が無いような素振りだったしな。前にも言ったが俺は鈍感難聴系ではないと自負している。気持ちは分かっているつもりだ。だがアンジェよ、悪いが俺からは何も言えないぞ。でもまた会いに来るよくらいは言っておこうと思った時だった。


「実はヒロシよ、伝えておかねばならぬ事がある」


「はい、なんでしょう?」


「まもなくドルスカーナとの砂糖の取引が始まるであろう。この取引にお前の商会が入る事は既に承知しておる。しかしの、ダルタニアス王はやはりこの莫大な富について独占する事を申し訳なく感じておるようなのだ」


「そうですか......しかしその製造方法は公にするべきではないでしょう。本来リンクルアデルにも伝えるのが筋という事は承知しておりますが」


「別にお主を責めてはおらぬし、そのつもりもない。リンクルアデルも十分に潤っておる。前にも言ったがドルスカーナに対してもこれは大きな貸しになるしの」


「はい」


「ダルタニアス王が言いたいのは、新しいドルスカーナを見に来てほしいと。要するに招待を受けたのだ。見に来てほしいと言いながら半分は自慢だろうがな。ワッハッハ、建前は殊勝な事を言っておるが、その実ワシに見せたいのだろう」


「はあ」


「前回のロングフォードでの会議でもう色々と話は済んでおるのだがな。折角招待を受けた事だから行って話をしてこようと思う。お主とはもしかしたら向こうでまた会うかもな。それを伝えたかったのだ」


「はい、分かりました。私はしばらく居るかと思いますので是非お声掛け下さい。で、何かお手伝いが必要ですか?」


「いや、特にない。飛行船でドルスカーナまで行く事になるだろう。そして今後の国交を更に強固にするためになれば良いなと考えておる」


「そうですか。なら親善大使を任命しても良いかも知れませんね」


「なんだそれは?」


「ああ、格好つけた言い方ですが、要するに王命を受けて国交間の橋渡しを行う人の事ですよ。ある意味象徴的な役柄になりますけど。普段の業務には関係ありません」


「なるほど、両国間の関係を良き間柄だと民に見せることが出来れば良いという事か」


「まあ、言ってみればそう言う側面の方が大きいでしょう。親善大使は陛下が忙しくて行き来できない場合もその役割を少しは担うことが出来ますからね」


「うむ、了解だ。その親善大使と言うやつだな。ゴードン、後で時間を取ってくれ。お前の意見も聞きたい」


「畏まりました」


「それでは、私達はこの辺で。アンジェリーナ様もどうかお元気で。またお伺いさせて頂きます」


「ヒロシ様......」


「ダンスの練習は続けますので、次回是非ご一緒させて頂ければ光栄です」


「......ええ、楽しみにしておりますわ」


 少し後ろ髪を引かれる想いではあったが俺たちは王城を後にした。俺はそれに答えを見つけることが出来ないでいるんだよな。何と言うか......不甲斐ないとは思うが今はまだ流させてくれ。


 とにかくだ。少し休んで明日には久しぶりに帰るとしよう、ロングフォードへ。


 


お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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