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よろしくお願いします。

 奥を見てみるとラザック夫妻が侯爵や陛下へと挨拶をしているところだった。大丈夫かラザック、今お前には未だかつて味わった事ない恐怖が全身を駆け巡っているだろう。くれぐれも粗相はするなよ?


「ソニア。ラザックと奥さん、小っちゃくなってんな」


「うーん。陛下や侯爵にご挨拶中ですもの、仕方ないわね。もう少ししたら呼びに行ってあげるわ」


「うん、そうしてやってよ。もうすぐラザックは血を吐いて倒れると思うな」


「分かったわ。でも今回はお疲れ様。色々と聞いたけど大変だったのね」


「まあね。でも今日で俺も住民も前に向けると思うよ。しばらく辛い事ばっかりだったから顔が凝っちゃったよ」


 俺は頬の辺りをマッサージしながらソニアに言った。


「あらあら、じゃあちゃんとマッサージしてあげないとね?」


「そうか、実はマッサージして欲しい所は他にもあるんだけどな。グフフ」


「どこでも大丈夫よ?」


 おっと、鼻血が出るところだった。ソニアは意外と天然だから深く考えてないのかな。


「ソニア、甘やかしたらダメよ」


「うふふ、たまにはね」


「そう言えばサティ。あの時、よくクロとシンディのフォローが出来たな。後で聞いたけど助かったよ」


「ええ、驚いたわよ。仮面をつけて登場なんてカッコつけちゃって。でも理由を聞いて納得はしたけど」


「俺はサティのフォローに驚いたけどね」


「何にも喋んないんだから。どうして話さないんですかってパッカードに聞かれて焦ったわよ」


「それで、サイレンスなわけだ」


「そう言う事。だからあなた達はこれからサイレンスよ? 特にクロちゃんは絶対に喋んじゃないわよ、分かったわね?」


「マジっすか......」


「わ、私も頑張ります」


「シンディは良いのよ」


「サティさん、たまに僕は疑問に思う事が......いえ、何でもありません」


「分かれば良いのよ」


「しかし本当のところ助かりましたよ。変に話してバレる訳にもいかず、名前を言うにも即興で頭によぎったモノを言って良いのか悪いのか悩みましたよ」


「わ、私もです」


「へぇ。クロにしては英断だったな。いや、悪気は無いよ。でも、サティが気転を利かすことが出来なくて、もう無理ってなったらなんて言うつもりだったんだ?」


「フッフッフ、僕は青いチューリップにしようかと思ってましたね。まあサイレンスは総称ですから、次に機会があったらそう名乗るのもアリですかね」


「うむぅ......悪くないとは思うが、なんだか微妙だな。悪いが却下だな。俺の勘がそう言っている」


「ダメっすか......」


「シンディは?」


「わ、私はですね。えーと、ラセーヌのほ......」


「やめろ! それ以上言うんじゃない!」


 恐ろしい、そんな事だろうと思ったぞ! お前らってホントは俺より前にこの星に転生していたんじゃないのか。本当に分かってないのか?


「そ、そんな、私は結構真面目にですね......では第二案として、シモーヌ・ロラ......」


「だまらっしゃい!」


「......」


 クロは半分冗談なんだろうけど、シンディに悪気が無いのが恐ろしい。どうも知らず知らずのうちにクロに引っ張られてる感じがするな。ちゃんと釘を刺しとかないとダメなんじゃないか? あとでサティも交えてよく話をしておこう。


「アリスよ......」


「なんでしょうか、旦那様」


 アリスは呼ぶとすぐにこちらへとやって来た。


「ちょっと頭が痛くなってきた......コーヒーが飲みたい」


「畏まりました」


 そう言ってアリスは直ぐにコーヒーを用意してくれた。


「ふう、落ち着いたぜ。さて、次は何故クロがまた風車(かざぐるま)を投げてしまったかについてだ」


「前に投げたって言った後にクロちゃんと色々試したんだけど、それが一番精度が良かったのよ」


「マジか」


「マジなのよ、驚いたわ」


「軽く流すには事が重大過ぎるんだが......」


「不思議よね」


「またそれ......いや、今は言うまい。アリス、おかわりだ。できるだけ濃いやつを頼む」


 俺はキツイ酒を煽りたいのを我慢してコーヒーのおかわりを頼むのだった。 


 そしてしばらく。係りの者が部屋へと呼びに来た。いよいよ式典が始まるようだな。ラザックは既に死にそうな顔をしているがもう少し頑張れ。お前の奥さんはお前のケツを蹴り上げてよく頑張ってるよ。


 ここから中央の席に座れるのは陛下とその関係者だけだ。お妃様以外の奥様連中や関係者及び執事達は全て右側の親族関係者の席へと場所を移す事になる。左側は今回来賓席としているらしい。他国のメンバーは今日はいないが、富裕層や特権階級の人々が座っている。


 今回はこういう風に席を分けているが、その時々でこういう席の配置は臨機応変に変わる。例えば他国の来賓と仲の良い本国の誰かが一緒に座ったりな。


 ここから見る景色はまた違う景色だ。いつかバルボアの皆に檄を飛ばした時とは何もかもが違うがこうやって眼下に広がっている民衆を見ていると込み上げてくるものがあるな。


 ん? 広場の真中にシートが被された何かがあるぞ? 広場に建造物をって言った事があるが何か作ったんだな。隣のゴードン内務卿に何を建てたのか聞こうかと思ったら式が始まってしまった。



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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