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「ヒロシ様、私達もそろそろ動きますか?」
「そうだな、クロとシンディは森に入る前にこれで顔を隠しくれるか? 伯爵の護衛が戦闘の渦中にいるのも何かと問題だからな。視界に影響は無いと思うが確認してみてくれ」
俺は懐から仮面を取り出し二人に渡した。俺のような口面ではなく目の部分を隠すタイプのもので、雰囲気はレッドな彗星みたいだな。
色はクロが青色、シンディは白色だ。二人の戦闘衣装のメインカラーに合わせてある。
「じいさんがローランドに居るからな。コネを頼って作ってもらってたんだ。今日のような時や隠密で動く時はこれを付けて動いてくれると助かる」
「「畏まりました」」
「一応伯爵家だからな。面倒事は少なくするに限ると思うんだ。お前たちには少し無理を言ってしまうが」
「お気になさらず、その方が間違いなく動きやすいでしょうし」
「そう言ってくれると助かるよ。では、行こうか」
そうして俺達はホスドラゴンに跨りサティを追った。
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「アミバル様、アバとボーゲも付いて来てますが、その後を追うように一団が迫ってます」
「や、やべぇアミバル様! ありゃスカーレットだ! すごい速さで追いついてくる!」
「スカーレットだと!? 逃げろ! スカーレットなんざ相手に出来るか! 騎士団の方がまだマシだ!」
「ど、どうする!」
「アバとボーゲの部隊をぶつけろ! 森まで後少しだ。森に入ればまだ可能性はある!」
ガスはそれを聞くとアバとボーゲの方へと馬を寄せる。
「アバ、ボーゲ! お前ら一隊を率いて後ろの冒険者を止めろ!」
「はん、偉そうに命令しやがって。お前らナズとバッガにも幹部の話をしてるみてぇじゃねぇか。騙してんじゃねぇだろうな?」
「騙すだと? 誰でも簡単に幹部になれると思うなよ? お前がダメならナズとバッガに話が行く。簡単な話だろう? 別に約束しなくても良いんだぜ?」
「ああ? その言葉忘れんじゃねえぞ?」
「ああ、もちろんだ。アミバル様には伝えておく」
「それと、もう一つだ。あの先頭の女は俺の好きにしていいんだろうな?」
「え? ああ、好きにしろ、あの女はお前にくれてやる。分かったら早く行け!」
「だから偉そうにすんじゃねぇよ! 戻ったら俺は幹部だ。コキ使ってやるから覚えてろよ?」
「ケッ、良いだろう、分かったよ。じゃあ、とにかく頼んだぜ?」
「チッ、クソ野郎が」
アバとボーゲは馬を反転させると追ってくる一団へと向かった。
「ガス、いいのかよ? あんな事言っちまって?」
「良いに決まってんだろ? アイツらが街のチンピラ風情で助かったぜ。グス、心配するんじゃねえよ。スカーレットに狙われて生き残れると思うか?」
「違えねぇ。その間に森に逃げ込むぜ」
「ああ。幹部だろうがなんだろうが、死んだらおしめぇだ」
二人はサティへと向かっていく連中を尻目に森へと逃げていく。そして反対にそれは追いかけてくるサティの目にも当然入ってくる。
「一部引き返してくるわ! 貴方達、展開しなさい! 私は正面から迎えうつ!」
「「はい!」」
「オラァ! 女ぁ! 迎えに来てやったぜぇ!!」
ボーゲはホスドラゴンに携えていた槍を掴み、頭上で回転させながら迫ってくる。馬上で有利となる武器といえば何か? その代表格は間違いなく槍だろう。圧倒的なリーチで馬上から地面までカバーできるのだ。
西洋、東洋、あらゆる国が装備してきた武器である。全方位をカバーする武器に対してサティは双剣。彼女は手を腰の辺りで交差させながらその剣をゆっくりと引き抜く。
「威勢の良いのが来たわね」
二人は馬に乗ったまま交差する。ボーゲは槍を突かずに横から叩き落とすように振るう。丁度胸から下あたりをめがけ馬上では避け難い箇所を狙って。
そのスピード、馬の速さにも比例し槍の速さは鋭く重くなる。だがサティは槍を振るおうとボーゲが槍を引いた瞬間からホスドラゴンをボーゲのホスドラゴンへと突っ込ませる。
槍の回転範囲は一瞬で詰められるが、ボーゲは素早く持ち手の位置を変えると刃先をサティへ返しそのまま振り切る。ガキンと鈍い音と共にすれ違う両者。
「チンピラ風情にしては多少は槍の使い方を知ってるのね」
「ギャハハ、近くで見ると良い女だぜ。今夜は違う槍で楽しませてやるよぉ!」
「やはり男は基本的にクズばかりね」
「ケダモノは人間様に嬲られてば良いんだよぉ! その奇麗な顔をメチャクチャに出来ると思うとゾクゾクしてくるぜぇ」
それを聞いた瞬間、サティはその剣でボーゲが乗る馬の首を一撃で落とす。もんどりを打って倒れる馬からボーゲは体を回転させながら着地する。それを見てサティもゆっくりと馬から降りる。
「このクソアマ、よくも俺の馬を」
「馬上でも問題ないけど気が変わったわ。あなたには苦しめられた同胞の無念を刻まないと」
「何を抜かしてんだ! 俺を誰だと思ってやがる! 街では俺の顔を見ただけで皆逃げ出すぜ!?」
「そうでしょうね、私もあなたの顔を見て逃げ出したい気分よ? とても見てられないわ」
「クソがぁ、ぶち殺してやるぜ......」
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