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よろしくお願いします。

「質問はあるか?」


「いや、長老あなたの言う通りだ。協力を取り付ける事は出来なかったようだ」


「ヒロシさん、すみません」


「気にするなラース。むしろ気にしないでくれ。これからサーミッシュとは一時的に戦闘状態に入るかも知れないからな」


 ここで長老がピクッと反応した。


「どういうことじゃ? サーミッシュは関係ないだろう」


「そうだ、全く関係ない。申し訳なかったと思っております、無理に協力をお願いしてしまって」


「なら、今の言葉はどういう事じゃ?」


「私たちは近々、はっきり言ってこの会合が終わり戻ったらすぐにでも残党狩りを始めるでしょう。そして残党はいつもの通りこの大森林へと逃げ込むはずだ。だが、俺はそこで追跡を終える事はしない。俺一人でも全員を始末するまでどこまでも追いかけていく」


「なんだと?!」


「大森林の中での戦闘はご法度だ。サーミッシュはその時どう動く?」


「もちろん森で戦闘をしている全てに対して掟の通り行動する」


「そうだろう、そうすると良い。だが俺は奴らを狩りつくすまで戦闘を絶対に止めない。掟がどんなものかは知らないが、その時に俺に向けて攻撃を仕掛けた奴は、犯罪者の味方をしたものと同義とさせてもらう」


 俺は長老の目を見て言った。


「つまり......俺の敵だ!」


「何を世迷言を!」


「世迷言だと? 寝ぼけているのはどっちだ? 大森林に犯罪者が逃げ込むのを、犠牲者が出る事を分かっていて追うのを止めろと言うのか? 正義は我にある。もし犯罪者を追う俺を狙うのであればお前らは犯罪者に味方している事と同じだ! 違うのか? どう違うと言うのだ?」


「ただの屁理屈では無いか!」


「ああ、屁理屈だってことは重々承知の上だ。だが屁理屈だろうが何だろうが間違っていないだろう? さあ、サーミッシュはどう動くのだ?」


「リンクルアデルは承知しているというのか?」


「承知はしていないだろう。だが、俺は伯爵家を名乗っていはいるが少々特殊でね。政治とは関係ない立場に居るのさ。いつでも他国へ流れる事も何ら問題ない」


「そんな勝手が出来るわけがなかろう」


「自分で屁理屈を言っている自覚はあるんだ。気にしないでくれ」


「天罰が下るぞ?」


「犯罪者を匿うサーミッシュには天罰が下らないと思っているのか?」


「ぐぬぬぬ」


「もし結果に対して神々が平等であると言うのなら、サーミッシュは犯罪者に味方したものとして天罰が下っても何ら不思議ではない。既に俺はサーミッシュに対して筋は通している」


「コケにしおって! この者を......」


「やめておけ」


「なにを!?」


「ここで俺を捕らえようなどとすれば、本当に収拾がつかなくなるぞ? 俺は正式な手順を踏み、正式にお願いをして、起こり得る可能性を示唆したに過ぎない。それをまさか武力をもって捕らえると言うのか? それこそリンクルアデルが黙っていないぞ? サーミッシュの掟とやらを一度教えて欲しいものだな」


「貴様......!」


「長老というあなたに対して礼儀を重んじていない事には本当に申し訳なく思っている。だが、今この時点でリンクルアデル、いや俺とサーミッシュが戦闘状態に入る可能性があるのだ。細かい礼儀は必要あるまい?」


「この若造が......ラースよとんでもない人間を連れてきおって」


「長老もヒロシさんも落ち着いて下さい! 長老、ヒロシさんはそんな酷い事をする人間じゃないんだ! その、あまりにも僕たちが掟の通りにしか動かないんで、何と言うか正論には正論というか屁理屈で返してきているだけだよ!」


「屁理屈ではあるが確かに正論ではある......か。ヒロシよ、少々熱くなってしまったようじゃ。サーミッシュにとって掟が全てだ。それは分かってくれるな?」


「ああ、もちろんだ。そこを無理に曲げてもらおうなんて事は考えていない」


「うむ。しかしなぜラースがここまでお前の事を信じているのかが気になる。何故だ、ラースよ?」


「今までの彼の行動を見ていると信じるに決まってるよ。森どころか神に愛されているんじゃないかとさえ思えてしまう」


「知りたいものだな?」


「話しても良いかいヒロシさん?」


「俺も知りたいくらいだ」


「長老、ある程度ヒロシさんは僕らの事情を知っている。何故だかは分からないけどね。僕は何も話してはいないからそのつもりで聞いて欲しい」


「よかろう」


「ヒロシさんは僕らをエルフであることを知り、アザベル様の守護(フォレストキーパー)を持っていることを知っているんだ」


「お前が喋った以外に可能性は無いじゃろうが!」


「そう言うと思ったよ。でも本当なんだ。大森林の守護者(フォレストキーパー)の守護は強力で森の中では無類の強さを発揮する。それこそ森では無敵だと言っても良い。ですよね、長老?」


「その通りじゃ」


「でも僕はヒロシさんから森で逃げ切れる自信はない。彼は僕の場所を一発で当てれるんだよ」


「そのような事が......あるのか? お前はいったい何者だ? アザベル様の守護だぞ? 見破れるなど有り得んじゃろう......」


「後は前から話している通りさ。大陸最強の一角であり、リンクルアデルの英雄と言われる仮面の男」


「やはり報告はしてるんだな」


「報告と言っても義務じゃないしスパイでもないよ。僕たちは掟に従って街での生活を一時的に経験することが出来るんだ。レムスプリンガって言うんだけどね。成人のお祝いみたいなものさ。その後、街で生きるか森で生きるかの選択をするんだ。報告は街で経験した事を話している土産話みたいなものさ」


「そうなんだな」


「ヒロシよ、不躾で悪いが少し見せてもらっても良いか?」


「見せるって何を?」


「お前の事をじゃ」


 と言いながら長老はブツブツと何かを言ったかと思うと俺の方を見た。体の中をの覗かれている感覚が沸き起こる。長老、鑑定を使っているのか。


「できれば見せて欲しいものだな」


 ああ、レジストが掛かっているのかな? どうすれば解除できるのか? 俺はレジストを一時的にオフにするような事を願うと解除されたようだ。


「全く字が読めぬ......だが、これは? お主閲覧不可については知っておるのか?」


「ああ、知っている。だがそれを知っている者は一人もいない」


「そうか。ならこの場ではワシも()()()()()閲覧不可が掛かっておるかは言わぬ方が良いだろう。ヒロシよ、これを見せてもらうわけにはいかないか?」


「それは......」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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[一言] 主人公の恫喝からはじまる話になったのは、とても気に入った話だっただけに残念です。評価は見直しさせて頂きます。
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