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よろしくお願いします。
その夜、俺は城でどう対策するのか改めて話をしていた。俺の中に何か引っかかるものがあるのだ。それが何か分からない。何が引っかかっているのか......ホークスは何と言っていたっけ。
「しかしヒロシよ、大森林の中で戦闘出来ないのはどうしようもない。神々の怒りに触れる事はまかりならん」
「ゴードンさん、そうなんですよね......せめて大森林の中へ逃げ込めないようにできれば良いんですけど」
「なかなか難しいわよねぇ」
「サティもそう思うかい?」
「ええ、天罰が下るってされてるからね」
「それならやらない方が良いよな......」
「神々の庭園と言われてる場所よ? たとえ森に愛されてても出来る限り避けるべきだと思うわ」
「ああ......ああ!」
「どうしたのよ?」
「それだ」
「どれよ?」
「森に愛されているってところだ......ホークスも言っていたな」
「いるみたいね。サーミッシュって言う少数民族らしいけど何処に居るのか分かんないわよ」
「サーミッシュと言うのか? 大森林の中にサーミッシュの国があるのか?」
「どうなのかしら? サーミッシュは大森林の中にいるらしいけど国家認定されているのかしら? 森の番人って言われてる民族なの」
「国家認定はされておらんが、何と言うか他国に興味が無い民族でな。そもそも国や領地にも興味が無いのだろう。森が全てと考えている中立国家か自治国と言えば良いか。便宜上ドルツブルグと呼ばれてはおるがな。他種族との交わりはほどんどないのだ」
「なるほど......ゴードンさんありがとうございます」
サーミッシュは知らなかったが、『森に愛されている』というこの言葉に俺は聞き覚えがある。それが引っかかっていたのか。これは勘と言うか賭けに等しいが恐らく間違いないだろう。俺はそう思いゴードンさんに伝えた。
「至急ロングフォードへ伝書鳩を。Aクラスパーティーである天空の剣を最短でバルボアまで連れて来れるように手配をお願いできませんか。今回の作戦は天空の剣が鍵になる」
「なに!? よし、直ぐに手配をしよう。おい、人を呼べ! すぐにだ!」
確かに聞いた、覚えているぞ。
天空の剣、ラースは森に愛されていると。
そして俺の勘が外れていなければ恐らくアイツは......よし、俺の考えが正しいか確認した方が良いだろうな。アデリーゼにはお願い事ばかりで申し訳ないが。
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手紙は直ぐにアデリーゼの中枢へと届けられ、直ちに飛行船がロングフォードへ向けて飛び立ったという。そのまま天空の剣を拾い上げバルボアへ直行するとの事だ。
「良いのかな、飛行船が......そんなパーティー四名だけを乗せてくるなんて」
「ヒロシのリクエストだからな。陛下の一声で終わりだ」
「それが怖いんですけど」
俺の勘が外れたら、飛行船を飛ばした代金とか請求されるのだろうか。恐ろしい。
「Aクラスへの指名依頼は出してないとケビンが言っておったからな。早ければ明後日の夜に到着するな」
「ゴードンさん、実はもう一つお願いがあるんですけど」
「なんだ?」
「アンジェリーナ様にお願いしたい事があるのです」
「アンジェリーナ様に? 流石にここへ連れてくることは難しいぞ」
「いや、伝書鳩を飛ばしてもらえれば大丈夫です。彼女の知識を借りたい」
「そう言う事なら問題ないだろう。して何を聞くのだ?」
「大森林について少し知りたい事があるので王女様ならその知識を持っているのではないかと。書面は直ぐに用意しますので、天空の剣が到着する前に回答が欲しい。アンジェリーナ様には急かすようで申し訳ないのですが」
「そうか。念のためワシからも陛下に書面を送ろう。事が済んだらヒロシからも直接説明しておくようにな。こちらはアデリーゼとの往復だから間違いなく天空の剣より先に到着するだろう」
「助かります、ありがとうございます」
アンジェリーナ様からの回答は分厚い封筒に入れられて直ぐに届けられた。ありがたい事だ。だが数ページ及ぶ手紙にはソニアとケーキを食べに行った事などの話が書かれていた。
話が伝わってなかったかと正直焦ったが、最後の数行に質問に対する回答が書かれてあってホッとしたぜ。アンジェよ、気持ちは分かるが心臓に悪いから勘弁してくれ。
まあ、だが十分だ。最後まで読み切った俺は自身の考えが大方正しいと確認できた。後はラースがどう反応するかだけどな。そこは頑張って話を聞くことにしよう。
そして予定通り夜飛行船がバルボア城へと入ってきたのだった。
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