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よろしくお願いします。
「他に何かあるか?」
「ええと、実は船の事で少し。Namelessが船会社を設立した事はご存知かと思いますがそれでちょっと」
俺はクルーザーについて話をした。一度俺の船に乗って見て、気に入れば王室専用を作ってみてはどうかと。
「ふうむ。海へは出たことが無いからのう。面白いのか? 海の上に船で行ったくらいで。夜なんて真っ暗ではないか」
「そこは色々と考えております。恐らくそう言う点が気になるかと思い、まずはNamelessのクルーザーに乗ってみては如何かなと思った次第です」
「そう言う事か。なら是非もない、一度乗せてもらおうか」
「現在平行して製造中ですので近い内に乗船して頂けるかと思います」
「それは楽しみじゃの」
「ええ、楽しみにしておいて下さい。先ほども申し上げた通り工事は日々加速傾向です。これからも流通が盛んになれば益々加速していくでしょう。恐らくドワーフに頼んでいるモノを除けばあと半年もあれば形になるかと思います。その頃にはクルーザーも完成しているかと」
「分かった、よろしくな」
陛下との話も無事に終わりバルボアへ。三番隊と五番隊は既に飛行船の前で待機しており出発を待つばかりの様子だ。アンジェが走ってきて何やら陛下に猛然と食って掛かっていたが俺は何も聞いていない。聞いてないったら聞いてない。
でも最後にソニアが残ってるから、可能ならたまに顔を見せてやって欲しいとお願いした。本来王女様に言う事ではないが、陛下もそうしたら良いと言っていたので間違いではなかったと思うことにした。アンジェも嬉しそうにしていたからこれで良かったのだろう。
「それでは行って参ります」
「ああ、気を付けての。バルボアから戻ってくる時は必ず王城へ来るのだぞ、良いな?」
「ええ、ありがとうございます。是非そうさせて頂きます」
そうして飛行船はゆっくりと飛び立ちバルボアへと進路をとった。
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「ただいま戻りました、ローランドさん。これからまたお世話になります」
「おお、まっておったぞヒロシよ。あとゴードン卿。一人は寂しいのでな、はっはっは。さあ、こちらへ参られよ。アランとハイリルが残した酒が沢山あるのだ。アイツら贅沢をしおってからに」
ローランドさんはブツブツ言いながらキャビネットからお酒を取り出してきた。執事とメイドはそれにあわせてグラスや氷を用意する。
ふと思ったのだがウイスキーやらブランデーの類はあるのだな。残るはラムやらジンか。ウォッカも。いや、まて。キツイ酒ならドワーフが持っているような気がするぞ。あとでドッズに聞いてみよう。
移動の後で疲れていたのか酒にやられたのか分からないが、早々に俺はベッドにダイブし眠りにつくのだった。この二人の酒の相手は俺には無理だ。強すぎるぜ。
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翌朝、ギルドでホークスさん達の紹介を行った。ケビンさんやアメリアさんはもちろん冒険者たちは腰を抜かしそうになっていた。それはそうだろうな。国家を守護する戦闘集団である騎士団。その中のトップ集団であるウインダムの隊長が部隊を引き連れてやって来たのだからな。
ホークスは見た目もゴツイから迫力満点だ。2メートル超えのゴリラが完全武装で立っているようなもんだ。多分毎日街を歩いているだけで任務完了になるだろう。この風貌とウインダムのマントを見て、それでも絡む奴がいたらそいつはアホだ。
五番隊の隊長はマーカスという青年だった。どちらかと言うと魔法系統に特化しており後方支援と遠距離攻撃を得意とする部隊のようだ。なるほど、ホークスと組ませたら強力だろうな。
そしてもう一つ彼らの目を奪う要因、サティだ。周りからは『スカーレットだ』とか『本物か?』とか声が聞こえてくる。ウチの嫁さんは本当に有名人なんだな。もちろんバルボア解放に尽力した英傑にその名を連ねているしな。
「と言う訳で俺たちが治安維持部隊として陛下の勅命を受けてやって来た訳だ。任務は治安維持、ギルドの訓練補助、そして警備と衛兵の訓練だ。こういう事は最初が肝心だ。基礎から徹底的に鍛えてやるから安心しろ。何か質問はあるか!」
ホークスが話しているが、お前の顔が怖くて多分質問できないんだと思うぞ。
「あと、ハイリル派の残党が残っていると聞いている。あのクソ野郎どもがまだ生き残っていたとはな。討伐隊を出すかこの後決める事になるが、そいつらは見つけ次第に殺せ。捕縛の必要はない。言い訳を聞く必要もない。即ブチ殺せ。無理だと思ったらすぐに俺たちに知らせろ、良いな?」
どっからどう見ても顔とセリフが悪党そのものだ。おそらくお前も近いうちに討伐されるだろう。
「では、俺とマーカスはギルド長と話がある。騎士団は指示があるまで冒険者と訓練でもして親睦を深めておけ。わかったな!」
「「「はっ」」」
「声が小せぇぞ! 本当に分かってんのかゴラァ!!」
「「「はっ!」」」
「よし! ......それではヒロシ様、サティ様、すみませんがこちらで会議に同席頂けますか?」
なんで俺を呼ぶときだけ優しい口調にするのだ。要らぬ誤解を受ける事はやめてくれませんか......
「ふふん、中々話の分かる男じゃない」
そして俺はサティがこういう性格だったと思いだすのだった。
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