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よろしくお願いします。

「陛下、ヒロシ達が到着しました」


「うむ、直ぐに会議室へと通してくれ。余も直ぐに参る。あとゴードン達関係者にも声を掛けるように」


「畏まりました」


 ヒロシの顔を見るのも久しぶりだ。ヒロシ自身もバルボアへ行って数ヶ月か。ゴードンから話は聞いているとは言え、直接話が出来る事は楽しみにしていた。



-----------------------------



 王城へは国王のメダルを見せたらそのまま中へ入れてくれた。王城の警備に敬礼されるとは。このメダルだが、本当に俺が持っていても良いのだろうか? もう伯爵の息子なんだし返しても良いかも知れないな。王城へ来たのはサティ、クロ、シンディを入れて四人だ。話が終わればそのままゴードンさんと一緒にバルボアへ戻る事になる。


「待たせたなヒロシよ。元気そうで何よりだ」


 陛下がゴードンさんとレイヴンさんを連れてやって来た。


「ご無沙汰しております陛下。いつも突然で申し訳ありません」


「気にするな、いつでも来いと言ったのはワシの方だ。それに昨日の内にゾイドから連絡は入っておったしな」


「ありがとうございます」


「で、早速だがバルボアの様子はどうだ? ゴードンから詳しく聞いては居るがお前の話も聞きたい」


 俺はこれまでの経緯を話した。陛下は時折質問を交えながら基本的には終始俺の話に耳を傾けてくれた格好だ。基本はゴードンさんの話との答え合わせみたいなもんだからな。


「金を使うことに関しては何の文句も無い。むしろ良くアイデアを出してローランドを助けてくれた。改めて礼を言わせてもらうぞ」


「滅相もございません。ゴードンさんの決断が無ければ話は進まなかったですし。お二人の民を思う心と情熱が無ければどうする事も出来ませんでした」


「そう言ってくれるとゴードンを行かせて良かったと言うものよ。他に気になる事や必要なことは無いのか? お前はまだしばらくはバルボアで生活するのだろう? 遠慮せずに何でも言うが良いぞ」


「バルボアの再生工事自体は方向性が決まり作業は順調に進んでいると思います。士気も高く工期は想像以上に短縮されることでしょう。加えて海路が明日にでも正式に開通する勢いです。それが可能になれば人と資材の往来が容易になり交流、交易が飛躍的に向上するでしょう」


「そうか。そうなると工期短縮に向けてますます加速する訳だな」


「そう言う事です。気になる点としてはお耳に入っているかと思いますが、旧バルボア領主のハイリル派の残党が森に潜伏しているようです。たまに街に入ってきているようで住民に危害を加える恐れがありますね」


「うむ、聞いておる。ギルドが動き出し、ローランドも警備を強化していると聞いておる」


「はい。しかしながらギルドはまだ動き始めたばかり、警備も練度がまだ高いとは言えません。ローランドさんとゴードンさんにはもちろん、街全体を守るため警備と衛兵についての強化が必要です」


「ふむ、それでお主の考えは?」


「恐れながらバルボアの脅威が一段落した今、残党処理は急務と言えます。また要人の警護が必要であることから騎士団の一部をバルボアへ一時的に常駐させるのは如何でしょうか」


「なるほど」


「お前の事だ、一部という事は呼びたい人間がいるのではないか?」


「は、レイヴンさん。実は前に一度お会いした三番隊、彼らの部隊を治安維持部隊にどうかと思いました」


「お前が前に怒って模擬戦で殺しかけた奴では無いか。理由を聞いても良いか?」


「はい、隊長のホークスさんは前回自ら飛行船からの突撃を志願し見事に森林側での戦闘に勝利しております。あの状況からすればバルボア城攻略に加わりたいのを、戦況を見て冷静に自分を抑えた事が記憶に残っております」


「うむ」


「私が初めてお会いした時のような感じではなくなっていた事に驚きました。染みついた奢りを短期間で塗り変える事は本来不可能です。まさに鉄の意志、三番隊隊長に相応しい武人であると。そしてそう言うことが出来る人間が今のバルボアには必要なのです」


「レイヴンよ、お主の意見を聞きたいな」


「ホークスが聞いたら泣いて喜ぶでしょうな。ヒロシに惨敗して奴は心の底から反省したようで、まさに生まれ変わったかのようです。陛下、ホークスについて言う事はありません。陛下の命令ならもちろんですが、志願してでも行きたいと言うのではありませんかな?」


「うむ。おい、ホークスをここに連れて参れ」


「畏まりました」


 執事の一人が彼を呼びに部屋を後にした。しばらく談笑していると執事が彼を連れて戻ってきた。


「陛下、ホークスです。お呼びになられたと聞いて参上致しました」


「ご苦労、まあ座れ」


「はっ」


 陛下とレイヴンさんは現在のバルボアの状況と警備と衛兵の強化、加えて要人の警護の重要性をホークスに説明した。そしてそれが俺のリクエストであることも加えて。


「な、なんと。そのような大役に三番隊を選んで頂けるのですか」


「ホークスよ、以前ヒロシに働いた無礼を挽回できるチャンスだ。出来るな?」


「この命にかえても任務を遂行すると誓いましょう」


「うむ、それで良い。あとそうだな、人数もいるだろうからもう一部隊連れて行け。レイヴンどうだ?」


「では五番隊にしましょうか」


「よし。それではホークスよ、後でレイヴンからも通達があるかと思うが五番隊にも伝えておけ。今日飛行船で移動だ、問題ないな?」


「はっ。これより三番隊と五番隊はバルボアの治安維持の特命を受けその任につきます」


 そう言い終わると俺はホークスさんと目が合った。


「ホークスさん、無理なお願いだけどよろしくお願いしますね」


「ヒロシ様、このホークス、全身全霊で任務に当たらしてもらいます」


「俺に敬称は不要だよ」


「そうは参りません。陛下のメダルを持ち今や伯爵の跡継ぎでもあられる。ましてや貴方はリンクルアデルの英雄、仮面の男(マスカレード)です。敬称不要などとは俺の矜持がそれを許しません」


「うーん、わかった。じゃあ何も言わないよ。ありがとう、()()あなたが来てくれたらもうバルボアは安心だ」


「勿体ないお言葉。それでは失礼致します。では後ほど改めて」


 そう言うとホークスは足早に部屋を出て行った。急なお願いで悪いが頼むよ。


「ヒロシよ」


「はい、陛下」


「お前も中々の人たらしよのう?」


「え? いやいや、そんなことは無いと思いますよ?」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。


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