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楽しんで頂ければ幸いです。
その後、俺は改めて冒険者同士の決闘について説明を聞いた。正直狂犬の場合には全く当てはまらない。
基本的に街で暴れたら警備がやってくる。決闘の場合には、それを宣言した冒険者とされた冒険者の同意があり初めて成り立つ。
そして決闘の大前提となるルールがある。
『セリジアホールデム』そしてDead or Alive、『生死問わず』だ。
場所についてはその場で始める場合もあるが、ギルドの闘技場で行う場合もある。その場で始まる決闘は大抵街の住人が証人となってその決闘が成立する。当事者同士が納得して始めた戦いだからだ。
命のやり取りまで発展することもあるようだが、大体はどちらかが実力を認めさせて終わりとなる。仮に死んでもギルドや法は特に動かないらしい。民衆からの裏取りの際に仕組まれたり嵌められたりしてる可能性が出てきた場合は別だ。
何でもかんでも許されるわけじゃない。当然だけどな。
でこの狂犬についてだが、街中で決闘を持ち掛ける可能性はないだろう。決闘の場合は俺たちが断れば良いからだ。決闘を受けないものは腰抜け呼ばわりされるが、そんな事はどうでもいい。
些細な事だ。という事は奴らも十分わかっている筈なので、何か搦め手を使ってくるんじゃないかという話だ。それが分からないのでケビンはサティさんを護衛につけてくれるんだと。
ありがとう、ケビンさん。この街の人、と言うか俺に関わる人は本当に優しい人達ばかりだ。クロードはそこんところよく見習うように。
ちなみに、搦め手を使ってこられた場合だが、明らかに犯罪行為で身の危険が感じられる場合、またそれらが後からでも証明できた場合は正当防衛が成り立つ。たとえ結果が命を落とす事になってもだ。
そうして説明を聞いた俺はコロナちゃんに冒険者登録を行ってもらった。俺の冒険者カード(パス上)のレベルとクラスは文字化けして見えなかった。
これにはケビンも苦笑いだったな。俺の依頼するものについてはケビン、不在の場合はサティが対応することになった。クロードも登録したぞ。
ただ俺も何も依頼受けてないんだけど何故俺のパスで文字化けが発生しているのか。まあいいか、別に困ることがあるわけでもないし。クロードは冒険者に対してやはり思う所があったのかちょっと渋っていた。
ただ、先ほどのように妙に気が立っている素振りもなく自然体に見えた。ソニアさんを危険に晒したことや、今後俺のサポートをしていく上で必要な事だと判断したらしい。その説明と言うか説得はサティさんが行った。
サティさんは後で護衛の方法について改めて相談させて欲しいとの事だったので屋敷に戻ったら改めて話をしようという事になった。
そうして俺たちはギルドでポーションとその原料である薬草を買って一度屋敷に戻ることにした。
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屋敷に戻るとじいさんが激怒した。気持ちは分かる。変なパーティーに目をつけられ、まだ何の解決もできていない。更に原因の発端がこちらにあり、しかもそれを執事がやっちまったんだからな。
「すまん、ヒロシ。ソニアもな。危ない目に合わせた。クロードは解雇する」
クロードの体が一瞬硬直したのが俺にもわかる。
「旦那様、確かにクロードの行動は許されるべきではありません。ですが、解雇などと。人付きになったのは初めてで動転したのかも知れません。私がもう一度教育を行います。この度はヒロシ様の付き人にクロードを選んだ私の責任です。どうか私を罰してくれませんか」
セバスさんがじいさんに懇願している。じいさんは全く考えを変える気配はない。だよな。信頼してた付き人が主人を窮地に追いやるとは以ての外だ。
でもな、クロードは何かこう......あるんだろう。心の闇の部分が。俺に対しての態度はまぁ良いとして、冒険者に対する態度はちょっと異常だ。
「じいさん」
俺は静かに声をかけた。
「なんじゃ、ヒロシ。今回の事は本当にすまなかった。ワシの責任じゃ」
「その事なんだが、ちょっと良いか?今回の件についてだが、クロードの事は不問にして欲しいんだ」
「なんじゃと? お前とソニアを危険に晒したんじゃぞ! 許せるわけがなかろう!」
「まぁ、聞いてくれよ。危険な目にも合ったが、別に被害を被っている訳ではないだろう。あと、セバスさんがじいさんの要望に応えて自信をもって紹介したのがクロードだ。そんな男がいきなり男爵家令嬢の前で喧嘩を売るなんて普通あり得んだろう。何か理由があると思うんだ。じいさんの気持ちはよくわかるが、一旦俺に預けてくれないか? そうだな、言うなれば執行猶予だな」
「ヒロシ君は、殴られてお金まで取られたじゃありませんか!」
ちょっとソニアさん、今は黙っててちょうだい。しかし言葉だけ聞くと俺カツアゲにあったみたいだな。カッコ悪いぞ俺。
「なんと、そんなことまで。クロード貴様......何たる失態だ......」
「いやだからじいさん、良いんだって。頼むこの通りだ」
「旦那様、セバスさん、私はどんな罰も受けます。私は何と取り返しのつかないことを......」
じいさんは黙って何かを考えている。
「すまぬがしばらくセバスとクロードの三人にしてもらえぬか?」
「信じていいんだな?」
「お前の意見はできる限り尊重しよう。しかし断言はできん。ワシにも立場があるでの」
「わかった。しばらく外にいる」
俺とソニアさん、サティさんは部屋をでた。今はじいさんを信じるしかない。男爵家の顔に泥を塗った場合、死罪になる可能性すらある。
読んで頂いてありがとうございます。