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よろしくお願いします。

 信じられん。風車(かざぐるま)だぞ? しかも今の今まで子供が遊んでいたものだぞ。投げれるのかそんなもんが! 刺さってたまるか! エライものを見てしまった。そんなことが出来るのは俺の知る限りただ一人、偉い人の旅に付いて行く忍者だけだ。


「まさかお前がそうだとでも言うのか?」


「さっきから何をブツブツ言ってるんですか」


「お前、自分が何をしたか分かっているのか?」


「何をって、風車を投げたんですよ」


 簡単に言うな。異世界の物理法則無視をまさかこんな形で体験するとは。そんな抵抗だらけのモンが真っすぐ飛ぶわけないだろうが。投げたら人の腕に刺さる風車だと? 危なくて子供に持たせられんわ!


「しかしクロちゃんよ。投げるならさ、普段からナイフとか持ってないのもどうかと思うぞ?」


「持ってますよ?」


「...いよいよ俺の頭がおかしくなってきたのかも知れんな。何故持ってるのにわざわざ風車を投げたのか」


「うーん、何故って言われても......不思議ですよね?」


 またこれか。お前らは事ある毎にその言葉で全てを済まそうというのか。いや、もう俺もこの世界の住人だ。あれこれ考える俺がおかしいのかも知れんな、これはこういう事なのだ。そう考えたら少し気が楽になったぜ。不思議だよな。


 しかしただの住民同士の喧嘩ならとやかく言う必要もないが、旧王族のアラン、ハイリル派の残党となるとリンクルアデルとしても放っておけないだろう。パッカードさんから報告は入るだろうが一応ローランドさんには伝えておくようにしよう。


 とにかくパッカードさんがその場を収めたので俺たちは前に出る事なくその場を後にしたのだった。

 


----------------------------



 神殿エリアにやって来た。ここはこのバルボアの名所となるだろう。神様の神殿跡を観光名所にするなど罰が当たらないか考えもしたが、神々はその辺りについて寛容であると信じている。ダメなら神託で言ってくるだろうしな。


「おお、ヒロシ様ではないですか。どうしたのですかこんな所まで」


 早速ドワーフのドッズが俺の方へとやって来た。この人混みの中で瞬時に俺を見つけるとはすごいな。


「いや単純に調子はどうかなと思っただけさ。でもすごいな。もう作業も進んでるんだな」


「ええ、Namelessの方々に大まかなデザインやら道具、全体イメージまで全て頂いておりますからな。これでまだチンタラやってたらレイナさんのカミナリが落ちますわ」


「へえ、たまにレイナも来てるんだな」


「いえ、たまにどころか毎日来てますよ、何名かと一緒にホスドラゴンに乗って。あちらに砂煙を上げて走る一団が見えるでしょう? あれがそうですね、丁度出て行ったところです」


 アイツはとうとうホスドラゴンまで操るようになってしまったか。砂煙を上げながら走り去る姿はなんだかカッコいい。今度レイナにはジプシー風の衣装をプレゼントしよう。


「そうか、レイナが何か無茶を要求していなければ良いのだが」


「そんな事ありませんよ! 常に体調を気遣ってくれて人も材料も豊富に用意してくれる。至れり尽くせりですぜ。これでサボって良いと考える奴は一人もいませんぜ」


「そうなのか」


「ええ、材料は大森林近くの森を船着き場造成のために伐採しているようで、それを全て寄こしてくれます。石畳に必要な資材も工具も全て。素晴らしい管理能力です。しかしレイナさんはこれも全てヒロシ様、あなたの教えであると」


「そうなの...ゴホン、ふむ」


「私の考えなどヒロシ様の考えの足元にも及ばないと零しておりましたな」


「そんなことは無いぞ?」


「ご謙遜を」


「いや、そうではなくだな」


「ええ、ええ分かっておりますとも。あなたはレイナさんが言ってた通りの人だ。こうやってお話をさせて頂くとよく分かる」


 アイツが俺の事をなんて言ってるのか凄い気になる。


 ラフ図を改めて見せてもらったがかなり大規模な公園になりそうだ。神殿跡地、資料館、プール、遊具、アスレチック、公園、商店、露店場、宿もあるな。これらが数か所ある。


「ドッズ、済まないがここに三つ加えて欲しいものがあるんだ。仕事を増やすようで悪いんだけどな」


「何なりと。今我々の中で仕事が増えて文句をいう奴など一人もいません。これも全ては貴方様のあの演説と国をも動かす貴方様の......」


「やめろ、言うな、やめるんだ。そんな事は良いのだ。それより一つはだな、ええと、そうだ。ウチの商会のアンジーを知っているか?」


「ええもちろん、今も事務所内でデザインを書いて頂いております。それを私の仲間が即座に図面に起こしているんです」


「そうか、仲間が帰ってきたんだな。良かったな」


「ええ、それもこれも全てはヒロ......」


「それは良いからアンジーの所へ行こう」



------------------------



「社長!? 皆さん、社長がお越し下さいました! 社長、わざわざ足を運んで頂き大変恐縮です。はっ、まさか何か問題が?」


「いや、そんな事は全くないから。ちょっとお願いしたい事があるんだよ。皆も気にしないで作業を続けて下さいね」


 俺は一斉に立ち上がり礼をしてくる社員達を制して話を進めた。気になるのは礼をしているほとんどはウチの社員じゃないだろう? 何故だ。伯爵家の関係者だからかな? きっとそうだろうな。


「早速本題だが、その前にお茶でも飲むか。クロ済まないが人数分の用意を頼む。ええと、もうそこのテーブルで良いか」


 俺たちは近くの大きなテーブルへと移動した。


『ヒロシ様、お茶等はこちらでやるので触るなと怒られてしまいました......』


『そ、そうか。最近この商会の方向性に疑問を抱く時があるが、ううむ、まあ今は放っておこう』


「で、社長お願いしたい事とは?」


「ええとね、このデザインなんだけど、入り口はここだろう? そのまま神殿に行く前に一つ公園を作ってくれないか。名前はそうだな、『バルボア記念公園』とでも名付けるか。今までの苦難を乗り越えてバルボアは生まれ変わるんだ。その記念公園とするんだ」


「な、なんという......」


「その決意と努力を後世に伝えるための公園だ。ここには何も要らない、ただの広場で良い。みなが地面に座れるような、ベンチで話をできるような環境が良いな。あっ、そうだな、何も要らないとは言ったが何か一つだけ公園の中央に記念碑みたいな物を建てるのはアリかもしれん」


「記念碑ですか?」


「ああ、今回で言えばこのバルボア解放を記念するための建造物と言えば良いか。住民の意見を聞ければ良いと思うが......」


「す、素晴らしいアイデアです流石社長! クッ、それに比べ私のデザインの何と陳腐なことか。私は自分が恥ずかしくてなりません。よくこれでデザイン責任者などと......」


「やめろ、お前はよくやってくれているから。なっ、気にするんじゃないぞ?」


「はい......それで二つ目は何でしょうか?」


 アンジーの目が灰色掛かってしまったぞ......いやアンジーよ、目に見えるほど落胆することは無い。本当によくやってくれてると思ってるから。再起動してもらえませんでしょうか。


お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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