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よろしくお願いします。
その他にも様々な内容を伝えた。あと、この事業の旗振りは国家御用達商会の看板を持つNamelessでやる事は既にゴードン内務卿からも正式に伝えられている。
俺は最後にこの計画の現場責任者にレイナ、副責任者にエミリアを置く事を伝え一旦話を終えた。もちろん俺は総責任者だ。部屋でお茶を飲んでいるだけではないぞ? 基本的に侯爵以上は後ろで控えておいてもらう形だ。金勘定をしてもらわないといけないからな。
そうして長時間にわたる会議は一旦お開きとなり解散となったのだった。これからは個人で指示を仰ぎに来る事になり、数日後のギルドの掲示板に張り出された瞬間から仕事は始まる事になる。
本来一つずつ積み上げていく工事が、ほぼバルボア中の人間の手によって一斉に横並びでスタートするのだ。期間は短縮できるだろうが、凄まじい数の人と金が動くだろう。Namelessの中枢メンバーをしばらく置いた方が良いか?
「すまないなレイナ、忙しくしないようにすると言っておいてこの有様だ」
「大丈夫です。この大役を仰せつかることが出来て幸せです。ここでもNamelessの商会をブチ上げてリンクルアデルでその名を不動のモノに......いや、まだリンクウッドがあったわね」
何やらレイナが悪い顔をしているが、幸せなら良いか......気にしないことにしよう。
「それでサポートはエミリア、君にも悪いな。社長になって早々で」
「お任せ下さい、レイナ副社長と同じです。私も燃えております。ここで経験を積んで私もレイナのような出来る女になって私もヒロシ様のもっと側に......」
最後の方が良く聞こえなかったが、この二人は何やら似たところがあるような気がするな。そう言えば元々知り合いと言っていたか。仲も良いようだし......まあ良いか。
「そう言ってくれると救われるよ。Namelessにおいては必要な人員は二人の裁量で好きに決めてくれ。今回は金を惜しんではダメだ。自分たちが動きやすく、楽にできる事を一番に考えてくれ」
「「畏まりました、ありがとうございます」」
「で、クロは基本的に俺の側。シンディはレイナとエミリアについてくれ」
「「承知致しました」」
そこで侯爵が口を開いた。
「ヒロシよ、お前はロングフォードをずっと留守にする訳にもいかんだろう? かと言ってたまにしか来ないってのも困る。だからお前、ロングフォードに帰る時は飛行船を使って良いぞ」
「え?」
「基本はワシとローランドが使用するのだが、必要な時は心置きなく言えばよい。陛下からもバルボアの飛行船を自由に使って良いとの許可を頂いておる」
「助かります。しばらくすれば船でローランドまで行けるようになるかと思いますので大丈夫とは思いますが」
「まあ、その辺は任せるから好きにしたらよい。先ほどお主が言った通りだ。今回のバルボアに関しては金を惜しんではダメだ。お前が長期間抜けるリスクを金で解決できるなら安いものだ。無駄遣いを推奨する訳ではないが、必要な時に必要な事をしなくてはならぬ」
「そうですね」
「だから遠慮はするなという事だ」
「ご配慮ありがとうございます」
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会議が終わって次の日から早速ギルドの改修工事が始まっている。街中にはビラが配られ今回の都市計画の内容や、それに携わる人員の募集、そして還付金の支給に関するなど。関係者は事ある毎にバルボア再生に向けた話を喧伝し、街はその噂で持ちきりらしい。
そして募集の日。商業ギルドと冒険者ギルドにはバルボア中の人間が殺到した。ギルド側の処理能力は追いついているだろうか? 商業ギルドに至ってはエリーゼとバーバラしかいないのだ。その場で即採用者も出して何人かは業務を始めているようだが。恐らくギルドの元職員だろうな。
俺はそれをみて呆然としたのだが、レイナは既に指示を出していたようでビラに書いた募集要項に必要事項を記入して持って来る段取りをしていたようだ。なので基本ビラをギルド職員に渡したら終わりだ。
ビラを持ってない人は何かに書いて持って来る。字を書けない人は誰かに書いてもらうか、ギルド側で対応する。これにより配ったビラは街の人が集めて持ってきてくれるので、街も汚くならないという算段だ。
そう言う訳で、人は殺到しているが皆用紙を渡すと右から左へと流れていくように移動し帰っていく。字を書けない人や紙を持ってない人が一部並んでいるだけだ。
「社長なら当然、いや、最低これ位は考えていらっしゃったでしょう。私など足元にも及びませんが」
「いや、レイナ。そんなに卑下する事はあるまいよ。期待以上だ。よくやってくれている、流石だと言っておこうか」
レイナよ、社長はもうお前でも良いかも知れんな。何が『流石だと言っておこうか』だ。何にも考えてなかったわ! とにかく募集が終わった後数日以内に仕事が振り分けられ、街の住民に仕事先の通達がいく。
その通達だが住所と名前が一致しないこともあるため広場にも掲示する方法をとるらしい。その間に工事関係に必要な道具などを調達しておくという段取りはもう済ましてあるとのこと。それでも分からない人は直接ギルドへ聞きに来ればよいのだ。
すげえ。俺レイナを呼んでなかったらこの時点で詰んでたかもしれんな。
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