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よろしくお願いします。
「あっ。あと、スバンというローランドの漁師もお願いします」
「スバンですか?」
「ああ、ラザック、問題ないだろう?」
「ええ、問題は無いかと思いますが」
「スバンと言う者はどうやって伝えるか......使いを出すか」
「ゴードンさんは一度戻るのですか?」
「そう考えておる。山が動き出したのでな。陛下には顔を出して一度話をしておくべきだろう」
「それではラザックを連れて行ってくれませんか? 彼はレイナもエミリアもスバンも全員知ってます。知ってるよな?」
「ええ、知っております。」
「良し、それなら大丈夫だな。ではラザックよ。これからアデリーゼへ帰るぞ。そのあとお前はローランドで皆を集めて四日後に再び王城へ来るのだ。そのままバルボアへ戻ってくるが問題ないな?」
「承知致しました」
「ローランドさん、すみませんがロングフォードに伝書鳩を飛ばしてもらえませんか。レイナと数名をローランドのええと何処にしようかな」
「ヒロシよ、問題ないぞ。ラザックよ、ローランド滞在中はウチの屋敷を使え。待ち合わせ場所にすると良い」
「よろしいのでしょうか?」
「構わん、むしろそちらの方が皆が迷わずに良い。直ぐに書面を用意するから屋敷に持って行くと良いだろう」
「ご好意恐れ入ります」
「よし、それでは動くか。それでは一足先に戻るからな。ラザックよ、用意が出来たら部屋まで呼びに来い」
そうして、準備のため慌ただしくゴードンさんとラザックは出て行った。動きが速くなってきた。ここから色々な事がいっぺんに動き出すぞ。
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「レイナ、バルボアから伝書鳩が届いたわよ。ヒロシさんだって」
「ソニア様、ありがとうございます。社長から? バルボアからですか? とにかく読んでみます」
「なんて書いてあるの?」
「まあ、新しい商売の話です。ソニア様、社長が私と他数名を連れてローランドまで来いと。そこから飛行船に乗ってバルボア入りするみたいです。驚きました、流石社長です」
「あらあら。レイナは忙しいけど大丈夫?」
「もちろんです、ソニア様。社長が助けを必要としているのです。ああ直ぐに準備をしないと。すみません、今日はこれで工場に戻ります。ケーキごちそうさまでした」
そう言うとレイナは馬車に飛び乗って出て行ってしまった。
「ホント仕事が好きなのねぇ」
走り去る馬車を見てソニアはふと口にした。
「ふふ、もしかしてそれだけでは無いのかしら?」
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「ええ! 俺が飛行船に? 冗談だろうラザック!」
「冗談でこんな事わざわざ言いに来るか。ヒロシ様直々のご指名だ。スバン、来れるよな?」
「もちろんだ。何を置いても行くぜ。しかし迎えの話は良いのかな?」
「それこそ向こうで確認すれば良いだろう。直ぐにローランドの屋敷まで移動するぞ」
「ええ! 俺なんかが入れるわけないだろう!」
「ローランド侯爵様より許可を頂いている。分かっていると思うが粗相をするんじゃないぞ」
「当たり前だろう! しかしヒロシ様ってのはどういう人なんだ? ちょっと信じられねぇぜ。それにお前はどうなっちまったんだ? なんと言うかあの騒動以降、全然顔つきが違うぜ。精悍になったと言うか...」
「お前もヒロシ様と関係してくると分かるさ」
「へー、あの暴れん坊だったお前がねぇ。あのバルボアが生まれ変わるってのを信じて疑ってないように見えるぜ? 生涯をかけてお仕えする相手に出会っちまったのか? ま、理由は聞かねえけどな」
「うるせえ。おっとその前に、Namelessへいってエミリアさん達も拾っていかないといけないんだ、直ぐに出るぞ」
「分かったぜ。ヒロシ様か......期待を裏切るわけにはいかねぇな」
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「そうか、ヒロシがそのような策を出してくるとはな」
「はい、陛下。しかし悪い策ではございません、むしろバルボアにしかできない妙案かと」
「確かにそうだ。これが上手くいくとバルボアは文字通り蘇る事になるだろう」
「公共事業にする事でバルボアの資金難も回避でき、領民にも仕事が与えられるでしょう。しかし問題はその資金をまず国が立て替える事ですが......」
「愚問だな、ゴードンよ。国の為に金を使うのだ。何を迷う必要があるものか。しかもその金は将来何某かの形で必ずリンクルアデルに戻ってくるのだろう? そうでもないとお前が余に勧める事はしないだろう?」
「仰る通りでございます」
「ドルスカーナの危機を救い、今度は二度までもリンクルアデルの危機を救うか......ゴードンよどう思う? 率直な意見を聞かせてくれ」
「率直な意見を申しますと神罰が下る恐れがございます」
「そうか......そうかも知れぬな。ならば今はバルボアの事だけを考えるとしよう。引き続きお前はローランド侯爵を支えてやってくれ。忙しくなるが頼むぞ。ああ、飛行船だがバルボアが作った飛行船の修繕が完了したようだ。落ち着くまではあれを好きに使うと良い」
「承知致しました」
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「ヒロシ様がアデリーゼに来てくれないのは何故ですか! お父さまは意地悪です!」
「いや、ワシが呼んでないわけではないぞ、決して」
「でも」
「でも、じゃない。アンジェよ、ヒロシは今バルボア再生に向けて動き出しておるのだ」
「では、私もバルボアに参ります」
「ならぬ」
「何故ですか! お父さまは意地悪です!」
「何度も意地悪と言うな。忙しいヒロシのとこへ行って邪魔しに来たと思われるぞ? それでも良いのか?」
「そ、それは......」
「ソニアもサティもロングフォードから動いておらぬ。それでも行くのか?」
「い、行きません。私は我慢のできる大人の女性になるのです」
「はっはっは、そうだ、それで良い」
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「ふむ、ロッテンよ。ヒロシは今、バルボア再生に動き出したと?」
「内偵の話ではそうなっているようですね」
「バルボアか。あの獣人差別と排斥が盛んだったという街だ。シュバルツにとっては最大の汚点と言っても良いだろうな」
「内偵と言っても街で噂になっているようですから、直接リンクルアデル王に確認しても大丈夫ですよ?」
「何某か協力する事もやぶさかではないがのう」
「そ、それでは私が参りましょうか?」
「ボニータが行って何を協力するのだ?」
「ええと、護衛とか?」
「何で疑問形なのだ。アイツの周りにも腕の立つ護衛は居るし、そもそもアイツに護衛が必要かどうかも分からんがな」
「確かにそうですけれど」
「ある程度渡りがついたらドルスカーナにも来るだろう。こっちの商売もあるからな。その時にゆっくり街でも案内してやれば良いではないか。焦ることは無いぞ? 今は女としての磨きをかけておれば良いのだ」
「そうですね。いやいや、私は別にあの男に興味などありませんよ?」
「何を今更......ん? なんだロッテン」
「珍しくまともな事を...ゴホン、何でもありません」
「たまには良いだろう。娘の将来の事でもあるのだからな」
「仰る通りでございます。ボニータも頑張るのですよ?」
「な、何のことか分からないけど頑張るわよ」
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そして数日後、全ての関係者がバルボア城の部屋へと集まった。
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