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今日はまだまだ投稿します。
「もう、やめて下さい!」
ソニアさんが俺を庇うように抱き寄せ叫んだ。うわっ、ビックリした。いや、ちょっと。俺は大丈夫なんですけど。そう言おうとしたがソニアさんのお胸様が俺の顔へと押し付けられている。くそ、なんてことだ。お胸様の圧力に勝てねぇ。
「どうしてこんな酷いことを。こちらに非があるのは認めます。だけどやりすぎでは無いですか!」
「うるせぇ! もうそんな事はどうだっていいんだよ! どうしても許して欲しかったらこっちに来な! それで許してやるよ」
「それは......」
「お嬢様、やめて下さい。私が全て悪いのです。お前ら私を煮るなり焼くなり好きにしたらいい。だからもう勘弁してくれ」
いや、本当にそうだぞ。この場はお前が100%と言っていいほど悪いと思う。だからしっかり謝った方が良いぞ。特にこんな頭の悪そうな連中には。よく見るとクロードは少し震えている。
それが恐怖によるものなのか怒りによるものなのかは分からない。コイツにも何か過去があるんだろうな。俺はお胸様に顔を埋めながら横目にクロードを見て思った。
「お嬢様だと? ケケケ、おいテメェら聞いたかよ? 今夜はご馳走だぜ。金貨も手に入ったし女もお嬢様ときたもんだ。最高だぜぇ。おいくそ犬! おめぇはどの道あとで半殺しなんだよぅ。その面ぜってぇに忘れねぇからな。後でお嬢様を迎えに来いや! その時にゆっくり相手してやるよ。ヒャハハハ!」
ほらな、頭の悪そうな連中の考えることってのは大体こんなもんなんだよ。ソニアさんも震えている。もう限界だな。コイツらブッ殺す。後のことはそれから考える。
「なんの騒ぎだ?」
その時、奥から一人の男が降りてきた。ケビンさんだ。その横にはコロナちゃんと秘書のサティさんもいるぞ。コロナちゃんが呼びに行ってたんだな。偉いぞ。
「ああん? 誰だおっさん?」
「あなた達、言葉に気をつけなさい。この方はアルガスの盾のケビン、ギルド長よ」
「ちっ、ギルド長かよ」
「お前達、俺のお膝元でやらかすとはここらのモンじゃないな。どこのギルド所属だ? コロナ、受付の記録は? ん? ない? そうか。ではリンクルアデルの過去歴を調べてくれ。まぁ大方この街に着いたばかりで下見に来たってところか。粗方事情は聞いている。発端はお前らに非がないってことはな。だが、そのあとは頂けないな。今なら不問にしてやるがどうする?」
「アニキ、アルガスのケビンはちょっとやばいぜ。元Bクラスで老いても実力は未だ健在って話だ」
「あぁ、それくらい知ってるぜ。くそっ。今日は引いてやる。おい、クソ犬! 次会った時にブッ殺してやるからな。狂犬に目をつけられてタダで済むと思うなよ! お嬢様ともそれまでお預けだ」
「おい、聞き捨てならんな。この場でケリつけるか? 俺は謝らんけどな」
「けっ、冗談だよ、冗談。おい行くぞオメーら!」
そうしてツバを吐きながら狂犬の連中は出て行った。お前らも犬じゃねぇかよ。しかもパーティ名言ってるし。バカのやる事はよく分からん。おっと、ソニアさんに抱かれたまんまだった。
「ありがとう、ソニアさん。もう大丈夫です」
「あ、ヒロシ君ごめんなさい。大丈夫だった?」
「俺は大丈夫です」
「おう、ヒロシ。災難だったな。大丈夫か? 派手にぶっ飛ばされたみたいだけど」
「はは、格好悪いところ見られちゃいましたね。お恥ずかしい。でも、ありがとうございます。おかげで助かりました」
「まぁ、いいってことよ。気にすんな。それよりそこのお前。話を聞いたところお前が発端らしいな。あんなこと言ったらさっきのバカでなくても怒るぜ? 冒険者に何か恨みでもあんのかよ?」
「すみません、本当にすみません」
クロードは固く拳を握りしめひたすら謝罪を繰り返すのだった。その素振りからよっぽど辛い過去があることだけはなんとなく想像できた。
「あと、ヒロシ。気をつけろよ? 今調べた内容では、狂犬は北のリンクウッドで冒険者登録はしているが、問題ばかり起こしているようでな。黒い噂が尽きない連中だそうだ。傭兵じみた事もやっているとの話もある」
ケビンは用紙を見ながら話を続ける。
「はっきり言って半分盗賊みたいな連中だ。リーダーの男はジャギルという名前で当時のパーティーランクはC、ジャギルのレベルは40だ。ただし、10年以上前の資料でアテにならんだろう。何故今頃またギルドへ来たのかも理由はさっぱり分からん」
コロナちゃんは何枚かの用紙をケビンとサティさんに渡している。パスの内容が載っているんだろうが異国間でも閲覧可能なのか? それともギルド情報のみか? まぁ、細かいことは今は良いか。
「あぁ、気をつけるよ。忠告は有難く頂戴するさ。聞きたいんだけど、冒険者同士の決闘はどこでもありなんだよな? たとえそれが命のやり取りであっても」
「まぁ、正当な決闘であれば問題はない。が、どうする気だ?」
「いや、何も起こらないならそれが一番良いさ。万が一何かあった時にじいさんに迷惑をかけたくないと思ってね」
「中々律儀じゃないか。正直アイツらお前らを狙って来るぞ? ギルドとしては依頼を掛けてくれたら協力できるんだが」
「いいよ。俺がぶっ飛ばされたって聞いたろ? 逃げに徹するさ」
「まぁ、そう言う事にしておこう」
なんだ、ケビンのオッサンの目が俺の中を覗き込んでいるようだ。あっ、もしかして鑑定使ってんじゃないだろうな? 俺が視線で訴えかけるとケビンはニヤッと笑った。
「他言無用な事は十分理解しているよ。見たところで分からんかったしな」
「ならいいけどさ」
自動レジストあるっていったじゃん。仕事しろよ。
「お詫びと言ってはなんだが、しばらくサティを護衛に付けよう。彼女は中々強いよ。このギルドでもいやリンクルアデル全体を含めても間違いなく上位に入るであろう実力者だ」
「ギルド長、業務の方はよろしいのでしょうか?」
「まぁ、なんとかするさ。しばらくお嬢様の護衛をしてやってくれ。ゾイド宛の書面を用意するからちょっと時間をくれ」
見直しはしておりますが、誤字脱字があるかもしれません。
ご不便をおかけしてすみませんが、ご容赦下さい。