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よろしくお願いします。

 朝食を済ませた後、俺達は直ぐにローランドに向けて出発した。ホテルは本当に素晴らしかった。ラザックも感動していたな。支払いを済まそうと思ったら必要ないと言われてしまった。じいさんから何事か言われているみたいだな。


 道路脇で休憩所以外の場所で露店を開いているのが目につく。毎日通っているのだろうか? 特に道路脇での商売を禁止している訳ではないので構わないが儲かっているのだろうか? 上手く馬車が停まるスペースを確保して店を出している。


 朝一で移動を開始したので上手くいけば夕方頃にはローランドに入れるだろう。たまに休憩所で休みを入れながら俺たちは予定通りローランドに到着したのだった。出口付近にはローランド家の衛兵が先導するために俺たちを待っていてくれたので助かった。


 ローランドさんの屋敷はまだ奥様であるサマンサさんたちが住んでいる。バルボアへ行っているのはローランドさんと数名のメイドを含む関係者だけのようだ。まあ、何がどうなっているのか分からないのにいきなり一族で引越しは出来ないだろうな。


「すみません、お世話になります」


「いいのよ、主人はバルボアだけど。もうすぐゴードン内務卿が来られるはずよ。さ、早く中へお入りになって」


 俺たちはサマンサさんに着いていった。しばらくしてゴードンさんもやってきてローランドの今後も含めての話を聞いた。本来準備が出来次第に一族で引越しするのが普通だが、バルボアの場合は領主が不在であること、またその立地からローランドと気軽に往来できないことがネックとなりこういう事になっている。


 ゴードン内務卿が俺に出した条件、それは、有益な話であれば国は公共事業として協力することであった。つまり国側と資金について話が出来ると言う事だ。これは大変ありがたい。


 ローランドさんから届く情報ではバルボアは資源もなく、民衆の暮らしは非常に厳しいものらしい。アザベル大森林が横断しているので気軽にローランドに働きに来ることもできない。


 逆にそれがバルボアの情報を遮断させる要因にもなっていたのだが。最後に俺は明日バルボアへ発つことを伝えて内務卿との話は終了となった。


 ゴードンさんはこれから直ぐにアデリーゼに戻って一緒にバルボアに行けるか陛下に聞いてみてくれるそうだ。来てくれたら心強いんだがな。よし、とにかく次はNamelessローランド支店だ。ラザックにはここで待っててもらう事にしている。


「エミリアさん、久しぶり。元気かい?」


「社長、クロードさん、遠くまで大変お疲れ様です。さあこちらへ」


 ローランド支店も立派な建物を構えており、この街でも有名な商会である。工場では以前ロングフォードから異動になったローグさんが頑張って動かしている。生産品目も増えてきておりほぼロングフォードと同じものを作れるようにまでなっている。


 会議室に入ると支店の役職者たちが勢ぞろいしており、一斉に立ち上がり礼をしてきた。これもレイナとエミリアさんの指導なのだろうか。驚いたがまあ良いか。


「レイナから何か聞いてるかい?」


「副社長からは社長とクロードさんが来るとだけ。詳細は社長の方から直接伺うようにと」


「そうか、関係者も全員ここにいるようだから早速話を始めるとしよう」


 俺は話した。現在のNamelessを取り巻く環境と事業計画。今後はウエストアデル、アデリーゼ、バルボア、そしてドルスカーナに支店を作る事。それに伴うNamelessの立場。格好をつけるつもりはないが、こういう時は格好を付けなくてはならない。


「リンクルアデルではリンクウッドを除く全ての領地にNameless商会の看板が上がる事になる。そして他国への進出。これには既にドルスカーナ国王であるダルタニアス王より了解を得ている」


「そのような話に。素晴らしい」


「そうだ、Namelessは過去例を見ない巨大企業、いや大商会になるだろう」


「「おお!」」


 会議室に歓声と拍手が沸き起こる。


「Namelessは知っての通りリンクルアデルで唯一の国家御用達商会でもある。商会が大きくなったからと言っていい加減な事をする訳にはいかない。むしろ、より強く、より信頼される商会であり続けなければならない。わかるな?」


「もちろんです、社長」


「しかし、商会が大きくなるにつれ命令系統や指示内容を正しく理解することが困難になってくる」


「そうですね」


「そこで大幅な組織変更を実施することにした。レイナ副社長一人が各支店を毎日のように管理する訳にはいかないのだ」


「はい、仰る通りだと思いますが......」


「そこでここローランドであるが、工場勤務であるローグ」


「はっ、社長」


「お前は明日よりローランド工場の統括とする」


「なんと!」


「驚くだろうがそう言う事だ。できるな?」


「......はっ、全身全霊で取り組みます」


「うむ」


 そして俺は次々と新しい役職を関係者へと伝えていった。みな驚いているがまだ分かっていない。新しい役職で得られるメリットとデメリットを。


 彼らは俺がただの視察に来たことではないことを理解し、その目は俺を捉えて離さない。こう言うのは得意ではないが虚勢を張ってでも威厳を持って伝えないとな。いつもはニコニコしていれば良いが、締めるところはキッチリやっておかないと業務に影響が出るのだ。



 

お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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