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数日後、ドルスカーナからダルタニアス様御一行が到着した。ロングフォードの街で両国王が会談を行うと言う事で街は大騒ぎとなっている。到着の際に両王家が並ぶのを一目見ようと各地からも人が押し寄せてきているようだ。
宿屋は満杯、ホテルも空室ゼロ、レストランや食堂は連日大賑わいである。挨拶は広場で行われ民衆で埋め尽くされた会場は両国の紋章旗で埋め尽くされた。
その場では両国がこれからも友好関係をより強めていく事が両国王の口から発せられ式典は終始平和的な雰囲気の中で執り行われたのだった。
そして今、ロングフォード伯爵家の応接室にて。
「久しいな、ダルタニアス王よ。息災か? 今回は遠路ご足労頂き痛み入る」
「ああ、問題ない。お前の方こそ大変だったな。あと変な言い方は止めろ、いつも通りレオンで良い」
テーブルを挟み両国のトップが顔を合わせていた。両王と王妃、そして両内務卿、壁際には両国の精鋭が数名。後はメイドと執事である。伯爵家での会談ではあるが、現時点では同席を許されていない。
まずは互いの近況を語り合い、しばし思い出話に花を咲かせたりしながら、話題は徐々に両国のこれから先の話へと方向転換していく。
「ドルスカーナの新しい産業について何か聞いておるか?」
「砂糖の件であるな?」
「そうだ」
「ヒロシから聞いたが、製造方法については聞いておらぬ。本来聞くべきだろうが......今回はそう判断した」
「はっはっは、賢王と呼ばれるお前の事だ、そう判断しただけの理由はあると言う事だな。そうだろう?」
「その通りだ。だからワシも何も聞かぬ。ドルスカーナが潤うのであれば、それはそれで良い事だ」
「その点ではシュバルツよ、本当に感謝しているのだ。ヒロシには大きな借りができた。そしてその製造方法を問い質すことをせぬ賢王にもな」
「今日はな...お前もそのつもりだと思うが腹を割って話をする事にしておるのだ」
「奇遇だな、ワシもそうだ。でなければ借りが出来たなどとは言わんわい」
「うむ、その上で言わせてもらうと、リンクルアデルに借りが出来たとは思う必要はない。共に繁栄出来たら良いのではないかと言うのが正直な思いなのだ。」
「そう思うか、シュバルツよ」
「お主の所も同じではないのか? アザベル様の神託でヒロシを政治利用することはできぬ。つまり国で囲う事は出来ぬのだ。なんと言うかな、利用ではないな...お互いに上手く使うと言うのか」
「こっちも同じだ。だがお主は上手くやっておるではないか」
「なあに、偶然だ」
「偶然とな? どこまで本心か分からんなぁ? 腹を割るんじゃなかったのか?」
「お主もサティが族長の娘ではないか」
「ああ、まあそうなんだが。しかし中々考えたじゃないか、ヒロシの親を伯爵に据えるとは。もちろん、そのゾイドであったか? 彼の実力も十分高いと聞いては居るがな。如何せんヒロシはリンクルアデルの人間だ。この地で爵位を持つことに関しては遅かれ早かれそうなっていただろう」
「そうだ、その通りなんだ。まぁなんだ。そうだな、已む無しというやつだ」
シュバルツはニヤリと笑う。それを見てレオンは少し不満気だが、直ぐに得意げな顔で返す。
「そうか、已む無しなら仕方あるまいな。しかしだなぁ、どうも末の娘が仮面の男と言うのに惚れておるようなのだ。もし結婚などしたらどうなるのかのぅ。いや、これはワシが望まぬとも王家に入る事になってしまうのかのぅ。困ったのぅ。これも已む無しかのぅ」
「ほほう、それは奇遇じゃなぁ。ウチは上の娘が仮面の男に惚れておるようでの。そうじゃのう、王家に入ってくる可能性も......あるかのぅ?」
「ほう? ヒロシはウチの娘の美しい毛並みを気に入っていると思うがな?」
「ウチの娘もヒロシとはそれはそれは仲が良いと思うておるがの?」
二人は視線を交わしたままバチバチと火花を散らす。
「「ぐぬぬぬぬぬ」」
「「おやめなさい!」」
と同時に両王妃より突っ込みが入る。
「あなた、一体何の話をしているのですか! みっともない!」
「みっともないとはなんだ! 毛並みが気に言っておるなどと戯言をぬかしておるのだぞ!」
「レオン、あなたもです。あれほどその話は当人に任すと言っておいたではないですか!」
「し、しかしだな、見ろこのシュバルツの顔を! この得意げな顔が許せん! 何がそれはそれは仲が良いだ!」
「「お黙りなさい!」」
首脳会議の席上で両陛下が王妃に説教をされると言う何とも奇妙な光景が広がっていた。ボコボコにやられた二人はその後王妃たちの話を聞くだけの飾りとなり、会談は順調に進んでいくのであった。
ちなみに王女の結婚については本人達に任す。ただし、王族とは気軽に会えるものではないのでその機会については王家がある程度王女たちの自由を認めてやると言う事で同意に至った。
神託を無視できない王達の苦肉の策ではあったが、当然のことながらこれを機にヒロシの周りでは様々な騒動が巻き起こる事になるが、それはまた別のお話......とはならないのであった。
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「ハクショイハクショイハックショーーーイ!」
「ど、どうしたのよ? ちょっと大丈夫?」
「ああ、サティ、ソニア。大丈夫だ...と思うが少し、いや酷い悪寒がするな」
「私みたいに風邪ひいたんじゃないの?」
「かも知れん」
「これから陛下やダルタニアス王と会食よ?」
「かつてこれ程までに気が進まない食事会があっただろうか?」
「そんな大げさな話とかないわよ」
「だと良いのだが」
皆の言う通り食事会では特に何かを言われることは無かった。気を張っていただけに拍子抜けではあるが無理難題を押し付けられる、と言うか俺がいつも自分で持ち込んでいる節もあるのだが......ような流れにはならなかったのだった。
しいて言えば今後ドルスカーナ側での商店の開業についてだ。ドルスカーナとウエストアデルは近いのだが、ロングフォードからウエストアデルまでが遠いのだ。
どこに行くにも馬車で10日間は覚悟しなくてはならないとかしんどいだろ。ウエストアデルまでの道のりに関しては少し考えていた事があるので、ゴードン内務卿と話をさせてもらうつもりでいた。
しかし、ゴードン内務卿からは出来ればバルボア復興に知恵を貸してもらえないかと言う事だった。確かにローランドさん大変だろうな。死にそうな顔になっているのが目に浮かぶ。
どっちから先にするべきか。金の事だけを考えるとドルスカーナ方面、つまりウエストアデルまでの輸送経路を確立する方が良いに決まっているのだがな。うーむ、しかしローランドさんも助けが必要だろう。
しかしだ......そもそも何か力になれる事があるのか。まずそれが問題なんだけどな。悩む所ではあるが、とにかくもう少し考えてみる必要があるな。
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