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よろしくお願いします。
アルガス、ロングフォードへと戻ってきた。今回は色々と大変だった。いや、本当に大変だった。しばらくはどこにも行きたくない。そんな話を絡めて俺はじいさんへと旅の土産話をしている。
「大変だったんじゃな」
「そうなんだよ」
「しかし、砂糖の件は英断だったろう。巨万の富より大きなものを手に入れたんじゃからな」
「結果的にそうなるかも知れないけどね」
「間違いないじゃろう。だがお前はダルタニアス王からも完全に目を付けられたな。そのボニータ嬢はどうするのだ? お前、アンジェリーナ姫とも...」
「それは言わないでくれ。そう言う目で見てないしさ」
「彼女たちや王はその目で見ているわい。まあお前の気持ちは大事だけどのう」
「そんな目で見てるかな?」
「恐らくのう。まあ別に知ったところでどうしようもないしの。ゆっくり考えれば良い」
「まあそうなんだけどさ」
そこでじいさんはポンと手を叩いて俺に言った。
「そうじゃ、近々シュバルツ陛下とダルタニアス王との会談が開かれるのは聞いておるか?」
「そう言えばダルタニアス王がそう言う事を言っていたのは覚えているよ」
「開催場所がロングフォードという事は?」
「え、そうなの?」
「ドルスカーナからアデリーゼまでは遠かろう? で、もう国家事業であるバイパス工事も終了する。そうなるとロングフォードは互いにとって良い場所になるという事だな」
「まあ、確かに」
「そんなわけで頼むぞ」
「何を?」
「恐らく陛下は家族で来るじゃろう。以前聞いた話ではエステに行きたいと言っておったらしいではないか。ドルスカーナからは間違いなくロイヤルジャックが護衛でつくはずじゃ」
「そうだろうな」
「お前にはお妃様方やらアンジェ、ボニータ嬢の相手を頼む」
「断る!」
「その意見は却下じゃな」
「えー」
「ロングフォードがホストをせねばならんのだ。放置する訳にはいかんだろう? 両陛下の相手より良いとは思うがな」
「そりゃあ、そうなんだけど。でもアンジェはともかくボニータは護衛だろ? 護衛の仕事から離れて良いのかね?」
「一人くらい離れても問題ないわい。それに屋敷に入った後は外からの危険はないだろうしな。逆にアンジェの護衛をロイヤルジャックの人間がしてくれるという考え方もある」
「確かに」
「加えてサティやお前、クロード達が傍にいるのだろう? そっちの方が屋敷より安全かも知れんわな。ガッハッハ」
「簡単に言ってくれるよ全く」
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そうして月日は流れ、シュバルツ国王がロングフォードに来る日がやって来た。飛行船で来るのかと思いきや馬車らしい。ウインダムを始めとした騎士団が周りを固めているから余程の事がない限り大事になることは無いだろうがな。
今回バイパス工事が完了し、ローランド側で開通式を行う事になっている。伯爵家は大忙しだろうな。アルバレスさんは元気にしているだろうか? とにかくその式典が終わり次第、そのままバイパスを渡ってくるのだ。
停泊する宿屋も完成している。メインとなる宿屋はじいさんが経営する。一度見に行ったがすごいホテルが完成していた。ちなみにホテルという呼称は男爵家のみ使用可能みたいだ。ちゃっかりしてるぜ。
大工たちも男爵家からの依頼と言う事で相当気合いを入れたらしい。休憩所の建設については多くの商会が手をあげたそうで相当揉めたみたいだ。レイナにはもう頭が上がらないよ。とにかく陛下御一行は当然このホテルに滞在する。
そしてその日はやって来た。昨日ローランド側で開通式を行い、そのまま陛下達はロングフォードに向けて移動を開始したと言う訳だ。
やがて遠くに見えてくるリンクルアデル王家の紋章を掲げた御一行。道一杯に広がってるぞ。まあ今日は王家の貸切りみたいなもんだけどな。歓声と共に迎えられた王家。しばらく出入り口付近で手を振ったりしてそのまま広場へと向かう。式典のあいさつを道路の真中でするのは避けた。
バイパスからついてくる者はもちろん、広場にはロングフォード中の人が集まっているかのようだ賑わいだ。Namelessも臨時休業として工場を止めている。みな陛下や王族を一目見たいのだ。俺達は広場にある建物の来賓席に着席している。
当然陛下は正面のメインシートに王族と一緒だ。今回俺は壇上に登ることは無い。男爵家としてじいさんが挨拶をしてくれている。関係者を見てみるとシュバルツ国王の家族は全員参加だぞ。いいのかアデリーゼは。公爵がいるのだろうが...あ、あとレイヴンさんが居ないな。お留守番か。
式典は滞りなく進んでゆき、今はゴードン内務卿から褒賞が授与されている。Namelessも頂いた。俺は来賓席から行こうとしたが、男爵家という事もあるのでレイナが代わりに授与されていた。
国家御用達商店と加盟店は盾と金一封を受け取った。簡単に言っているがこれは大変名誉な事なのだ。Namelessでも良く見える所に場所を作って飾るようにしないとな。
あと施工を請け負った商店が何店か呼ばれて前に出て行ったが泣きながら授与されてたぞ。加盟店もそうだ。納期が遅れたり問題があれば、即刻加盟店としての看板は剥奪される。ラザックに至ってはここから見ても未だに泣いてるのが分かる。そういやバルボアの件も含めて本当に世話になったよな。後で労いの言葉でもかけてやるか。
そして最後に陛下の挨拶となった。
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