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よろしくお願いします。

 振り返った時には既に遅かった。男は私たちのすぐ側にまで来ていた。


「お嬢ちゃんたち、ここで何の用だ? いや言わなくても良い。人間の方は知らんが狐の方はフェルナンデス家の娘だな。大人しく来てもらおうか。騒いでも良いがお薦めはしないな、中の男がどうなるか分かるだろ?」


「...仕方ないわね」


「大人しく来いやぁ」


 威勢のいい男に私たちは拘束され建物の中へと入れられたのだった。


「う、うう。リリーそれにソニアさんまで...お前らその人達は関係ない! 解放しろ!」


「そう言う訳にもいかねぇだろう? 外から覗かれたんだからよぉ。それにこいつらがいればお前ももう少し素直になるんじゃないのかぁ?」


「ぐっ、フェルナンデス家は恐喝には屈しない。しかしその人族には手を出すな。彼女は関係ない」


「だから関係あるってんだろうがダボがぁ!」


 男は狂ったようにトニーさんを殴っている。このままでは本当に死んでしまう。


「おやめなさい! なぜこんな事を。彼が族長の息子だと言う事はご存知でしょう」


「ああ、よおく知ってるさ。だから尚のことだ。こいつらがこの街の族長になってから住みにくくて仕方ねぇ。もう少し住み易くしてもらえるようにお願いしてるだけだ。俺たちが協力してやった方が街の連中は大人しくなるぜ」


「そのようなこと」


「別にコイツが死んじまっても構わねぇさ。誰に殺られたかどうせわかりゃしねぇ。その時族長はどうする? 次はそこの娘かもしれねぇなあ。もしかして一緒に帰れるかもな、首だけになってよ。ギャハハハハ」


「ゆ、許せないわ。そんな事させない!」


 リリーちゃんが動こうとしたその時、その腕をつかんだ男がいた。さっきから立っている男の一人だ。彼の力はかなり強いようで彼女は振りほどこうとしてもビクともしない。彼女は殴りつけられ壁に激突した。


「グッ」


「リリーちゃん!」


 私は駆け寄りリリーちゃんを抱き起こす。口から血が出ているけど大丈夫、良かった。


「それでお前はどこの誰だ、女!」


「私は...」


 ここで身分を明かすのは得策ではないだろう。こんどはロングフォードまで食い物にされてしまう。しかし、どうしたら良いのか? 逆にこの場を収めるには名前を出して金品を約束する方が良いか? トニーさんは決して安心できる状態ではない。......仕方がない。


「私はリンクルアデル、アルガスのロングフォード男爵家の者です。この場を収めると言うなら金品の受け渡しの話をしても良いわ」


「はあ? 本当かお前、嘘じゃねぇだろうなぁ?」


「いや、ラパンのアニキ恐らく本当だ。俺、国王の演説の時の来賓席でこの女を見たぜ」


「ほおう、そうかそうか。ではこの女は傷めつけて身代金のネタにしよう。ロングフォードはいくら出してくれるかなぁ」


「あなた...」


「アホがあ! はいそうですかと解放されると思ってんのか? 金とお前と引き換えだ。その頃までお前が生きていればだけどなぁ」


 ラパンと呼ばれた狼獣人は私に近づき無理やり立たせると頬を長い舌でベロンと舐めた。


「人族の女とヤルのは久しぶりだあ。おい、コンターニ、お前はその娘を好きにしても良いぞう。カッチーノ、お前はその後だ、良いな」


「ヘヘヘ、良いのかアニキ、うわっ、コイツ何しやがる!」


 リリーがコンターニと呼ばれる男に飛びかかった。だが、その横のカッチーノに直ぐに取り押さえられる。


「やめろ、ソニアお姉さまに手を出すな! やるなら私をやれ」


「うるせぇぞこのクソ女、良くもやりやがったな! カッチーノそのまま押さえてろ、ちょっと痛い目に遭わせてからゆっくり楽しんでやるとするぜ」


 リリーはコンターニに殴られ蹴られその場に倒れた。それを止めに入ろうとして私は後ろからラパンに引っ張られ壁へと叩きつけられた。


「面倒くせぇな、もうここでいいや。おい、トニーの坊ちゃんよ。この場でお前に見せてやるよ。良いなぁ特等席で見学できてよお」


「やめろ、やめてくれ! 頼む、分かった、言うことを聞く、だからやめてくれ!」


「クククク、これが終わったらゆっくり話をしようぜぇ」


 コンターニはリリーをこちらへと連れてきて私と一緒に壁に貼り付けるように立たされ両手を拘束された。ラパンはトニーさんの方へと歩いて行き、椅子こちらへと向くようにずらしている。


「アニキ、お先に始めますぜ」


 そう言うとコンターニはリリーの胸元へと手を伸ばし服を切り裂いた。そして手を延ばそうとしたその時。


 突然、入り口の扉が勢いよく開いた。



-----------------------------------



 馬車を飛び降りた俺は建物へと一直線に走って行った。


「ヒロシ様、いきなり正面突破はお勧めできません。まずは中の様子を確認してからでないと」


「分かった、そうしよう」


 近くの窓から中を覗くとリリーが男に酷い暴行を受けている。何を考えているんだあの男は。奥には椅子に縛られたトニーさん、そして壁際には殴られてうずくまっているソニアが見える。その時後ろから声がした。振り向くと三人の男が立っていた。


「おいおい、また見学者が増えたぞ。お前ら大人しくしろ、中の人間がどうなって良いのなら好きにしたらいいがな。しかし、女だったらオレにも分け前が来たのによぉ。ん? 一人狼の女か。プライドの高い狼獣人を蹂躙するのも悪くねぇなぁ。おい、こっちへ来いや!」


「ヒロシ様」


「ああ、もう話をする気もない。下っ端はもうどうでも良い。シンディ、やれ」


「はっ」


 三人は反撃を喰らうとは思ってなかったのだろう。クロとシンディに簡単に喉元を引き裂かれその場に崩れ落ちた。


「シンディは裏から回れ。クロ、幸い扉から彼女たちは離れている。お前は正面から扉を破って奴らの意識を向けろ。俺はそこの窓から飛び行ってソニアとリリーの救助にあたる」


「畏まりました。ヒロシ様、よろしいのですか? シンディと二人でも制圧できるかと思いますが」


「この状況を前にして黙っていられるわけもない。戦闘服に身を包む間はなかったが別に構わないさ。俺がヒロシだろうとマスカレードだろうと今は関係ない」


「そうですか、分かりました。突入の合図は私が扉を蹴り破った時で良いですね」


「ああ、そうしよう。ん? まて、今スキルを得た。ああ、これは好都合だ」


 俺はクロとシンディに獲得したスキルについて説明し、それぞれ散開した。


 俺の得たスキル。


 それは、『召喚武装』瞬時武装能力である。


 戦闘服を一瞬にして纏えるスキルだ。俺の頭にバルボア騒動での記憶が蘇る。ああセイラムの奴、アイツこのスキルを持ってたんだな。導く声に従い召喚コードを設定した俺は、ゆっくりとそれを口にした。


マスカレードナイト(召喚武装)




お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  毎日1~2話でもう200部。  いやはや、すごいペースですねぇ。 [一言]  今回は、ちょっと”おバカコメ”です(_ _) >”蒸着!”←何となく言いたくなる一言(笑)  相原ヒロシ…
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