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よろしくお願いします。
色々話を聞いて思ったことがある。この街は活気に溢れているがそれは冒険者によるところが大きい。
アルガスの街は南に海。その他三方は森や山に囲まれていて、その付近の村や町での討伐依頼や薬草などの採取、またそれら素材の売買をギルドで行う事で各商店へと素材が卸される。
もちろん素材を受取って個人で商店などに持ち込むのもアリだ。ギルドを通すとトラブルが避けられるメリットはあるが手間賃が引かれるからな。ギルドを利用するのは半々って所らしい。
俺が思いついたのは、素材を集めて商品の製造販売だ。何を製造するのかはまだ決めかねている。どのような素材があるのかもわかっていないからな。
でもこの中世のような世界であれば何か珍しい商品も作れるのではないかと思う。一応前世の記憶を引き継いでいるからな。それを応用する形で試してみようと考えている。
「と言う訳で、素材を見たい」
「それならギルドへ行ってみますか」
「お嬢様の仰せのままに」
いや、俺の言う事を聞けよ。いいけどさ。
しばらくしてギルドに到着した。ソニアさんが受付に行ってコロナちゃんに説明している。
「コロナちゃんはネコ獣人という事だが、この街に獣人はどれくらいいるのかね、クロード君?」
「知りませんね」
「ほほう、知らないと。あの出来る男セバスチャンに認められ、じいさんから直々に指名された君は意外と役に立たないということか。これは一度じいさんとゆっくり......」
「......大体3割程度ですよ。奴隷に落とされているのがその内1割くらい。余談ですがコロナさんの妹は病気がちでコロナさんの稼ぎもそれほど多くない。掛った医療費は借金で賄ったらしい。払えなければ姉妹もろとも奴隷商に連れていかれるとの噂です」
「ふむ、詳しいじゃないか。クロちゃん」
「別にこれ位普通です。あとクロちゃんは止めてください、子供ではありませんので」
そうムキになるところがまた面白い。『ガキじゃねぇんだ』なんて生涯言ったことがないぞ。
「リンクルアベルは人族の支配する国との理解だが、アルガスの街における獣人の地位は?」
「アルガスでは差別的なことはほとんどない。リンクルアデルで獣人の地位が低いのはバルボアらしい。獣人は殆ど奴隷だって話です。リンクウッドはそうでもないらしいが差別はあるようです。擁護派と言えるのはここアルガスとウエストアデル。ウエストアデルは獣人の国であるドルスカーナに隣接していることから商人達とのつながりも深い」
「上出来だ、クロちゃん」
「......」
「人族とそれ以外の種族間での住み分けはどうなっているんだ?」
「特に居住区に関しては区切りはありません。だけど獣人が多い地域、人族が多い地域、混在している地域と種族によってある程度まとまっていますね。多くはないですが異種族間での婚姻もあります。リンクルアデルは多重婚を認めており人によっては何人か妻を娶っている者もおります」
「そうなのか、主な種族として挙げられるのは?」
「人族が大陸の5割を占めていると言われています。次いで獣人が約3割。ほとんどがドルスカーナで生活してます。あとはドワーフなどですね。竜人族、エルフ族は絶滅種として長い間確認されてません」
「もしやと思ったがやっぱりエルフや竜人もいるんだな。あ、でも絶滅種って事はもういないのか。まぁ今は良いか。それで君は何の獣人なんだ? みたところ犬のようだが少し違う気もするが......」
「俺は狼獣人だ! 犬と一緒にしないで下さい!」
「なんだ犬が嫌いなのか?」
「そんなんじゃありません! 獣人には獣人の誇りがあるんです。それを勝手に犬や猫やら決めつけるのは失礼にあたる。分からない場合は『失礼ですが種族をお聞きしても?』位に聞くのが普通なんですよ」
「そうだったんだ。それは悪かった。いや本当に勉強になったよ。それでは改めて、クロードさんの種族をお聞きしても?」
「ちっ、狼ですよ」
舌打ちしたぞこの子。遅めの反抗期か? なんかここに来てずっとイライラしているような感じだ。
向こうでソニアさんが手招きしている。説明が終わったみたいだな。近づいていくとコロナちゃんもカウンターから出てきた。これから素材の解体場所へと移動するらしい。実際に見てみたかったからそれは有り難い話だ。
解体場所に到着するとそこには様々な魔獣が居た。精神耐性が上がってないとちょっとしんどかったかもしれない。だってそこら中で解体作業が行われており、ゴブリンの耳とかなんかの目玉とかが山ほど瓶の中に入ってるんだぞ。グロイわ! 使い道あるのかよ。
魔獣は大きく3つに分類される。一つは肉や皮。一つは骨や牙。最後に魔石だ。討伐系の依頼では討伐の証拠となる部位だけで良いらしい。
例えばさっき見たゴブリンの耳だ。確かに他は必要ないかも知れないな。では何故確認した後にゴブリンの耳をここに置いているのか聞いてみると、ゴブリンの耳はコリコリして酒のつまみに合うらしい。マジか異世界。クロードに目をやると『当たり前だろう』的な顔をしていた。
見慣れない魔獣に目が行きがちだが、その中に生きている緑色のスライムがいた。スライムは色々な種類がいるのだが種類によって食べるものが違うらしい。雑食かと思ってた。このスライムは死肉を主な餌としているのでここに飼っておくと掃除が楽になるとか。
あれだな、水槽に貝やらエビを放すのと似ているのかな?スライムは魔獣ではあるが益獣としても使用されているらしい。前に見たホスドラゴンと同じカテゴリーだな。
青いスライムもいるらしく植物などを主食としているらしい。増えすぎると良くないので定期的に討伐されているらしいぞ。主にギルドに登録した初心者に任される仕事だ。
処理された後は魔石だけが残るがスライムの魔石は小さい。手に取ってみるとラムネの瓶に入っているビー玉みたいだった。少しスライムの粘液が付着している。ゼリーと言うかなんと言うか...
”商売繁盛の能力よりスキル≪鑑定≫が付与されます。”
”対人でも使用可能ですがむやみに使うと常識が疑われるので注意が必要です。”
”スキル≪鑑定≫の付与により≪レジスト≫も付与されました。”
”≪レジスト≫は鑑定に対するレジスト、また魅惑系デバフ系の魔法をレジストする効果があります。”
うわ、びっくりした。いつも突然なんだよ。頭痛がなくなった分馴染んできたのかな? それは嬉しいけど。と言いながら、俺は手に持った魔石を見てみる。
”≪鑑定≫を行いますか? Yes/No”
Yesで。
”以降、≪鑑定≫を行う際に特定の言葉を念じることで鑑定が自動発動しますが登録しますか? Yes/No”
Yesで。
”特定の言葉を頭に思い浮かべて登録して下さい。”
えーと、鑑定って言葉だけだと誤作動しそうだな......『ヒロ、鑑定』で。
”登録が終了しました。”
登録したがヒロ鑑定で良かったのか?俺のセンスが試された気がする。因みに発音はラブ注入のイントネーションだ。では改めて、ヒロ、鑑定!
≪鑑定≫
リーフスライムの魔石 魔道具を作成する際に使用できます。
リーフスライムの外殻 不純物を取り除く効果があります。
俺は何かが閃いた気がした。
読んで頂いてありがとうございます。