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よろしくお願いします。

「黒砂糖からお酒が造れるのかい?」


「そうなんですよ」


 俺はトニーさんにラムと砂糖焼酎について話した。だが残念ながら俺には酒づくりのノウハウがない。たしかラムは蒸留させる、焼酎は麹を加えて発酵させる。このくらいだ。


「それだけ分ければ何とかなるかもね。お酒を造っている商会があるからそこに聞いてみるよ」


「いやらしい話だけど、傾いている商会があれば店ごと買うとかしてトニーさんのお抱えにした方が良いですね」


「実はそれもアテがあってね。今景気が悪いからどこの商店もしんどい状況なのさ」


「そこまで考えてるなら俺の出番はないですね。トニーさんがお酒の店を手に入れたら是非Namelessと取引して頂きたいのですがね」


「噂のNamelessと取引なんてこっちからお願いしたいね。どんな考えなんだい?」


「ウエストアデルで出来るワインを広めたいなと」


「ワインね。あまり出回ってないけど売れるかな?」


「そこは考えがありますので大丈夫です。上手くいけばドルスカーナでも人気になりますよ」


「そうか、じゃあお酒造りが上手くいけばもう一度話をしよう。その際、陛下には言った方が良いのかな?」


「お酒が出来たらキビサトの可能性の一つとしてアピールすれば良いと思いますよ。気に入るはずなんで工場の建設は国が持ちますよきっと」


「中々ヒロシ君は聡いね。そうしよう、恩に着るよ」


「いえいえ」


 そこへリリーがやって来た。


「へー、お兄さまと話す時は商人の顔になるのね」


「おっとリリーちゃん。そりゃあお金儲けの話ですからなぁ」


「何よ、手揉みなんかして気持ち悪い」


「これは悪徳商人のお約束というやつだ。ちょっとリリーちゃんには早かったかな? それよりバンボの子を焼いたものは美味しいだろう?」


「ま、まあ美味しいわね。でも食べ物なんかでつられないわよ!」


 そう言うと俺の方にビシッと指をさすリリー。


「へいへい、俺も取りに行ってこようかな」


 そして俺はトニーさんに断ってからその場を離れたのだった。



-------------------------



「なんだ、リリーはまだ納得していないのかい?」


「そんなことは無いんだけど......なんとなく?」


「片意地張ってないで素直にお兄さんと言えば良いじゃないか。実際彼の事を見てみると、サティは本当にいい男を見つけたと思うがな。国王と繋がりがある人間なんてそうはいないんだぞ? それも二人だ。父上と母上は小躍りしてたからな」


「それはそうなんだけど」


「サティに憧れるのは良いけど、そのサティが認めた男なんだぞ? そんな男はそれ相応の強さも持っているもんだと思うがなぁ。ホントに薬でなんとかしたとか思ってんのか?」


「流石にそれは......ないケド?」


「ありそうだな。困った妹だよ全く。あまり失礼をするんじゃないぞ? 彼はサティの旦那だけでなく、フェルナンデス家のパートナーであり、リンクルアデルの男爵嫡男であり、国王のメダルとかなんとか色々立場がある人間なんだからな」


「わ、分かってるわよ」


「ならいいんだけどな、心配だよ」


 私は兄の言葉を聞きながらお姉さまと話すヒロシを見ていた。



-----------------------------------



「明日はギルドへ行ってくるわ」


「なんだサティ、用事でもあるのか?」


「まあね。アッガスとボニータも来るみたいだし顔を出しておこうかと思って。あと、あなたフラワーリザードのしっぽが要るんでしょ?」


「おお、そうだった。美容液だけで効果が出ているからすっかり忘れていた。今更美容ドリンクの需要があるか分からんけどな」


 でも待て。鑑定にて知り得た物の効果は確定事項と言って良い。なら美容ドリンクにも相応の効果が見込めると見るべきだろうな。うむ、女性の美へに対する執着を舐めちゃイカン。ここは確実に手に入れることにしよう。


「やっぱりサティ、フラワーリザード頼むよ。出来れば定期依頼でお願いしてくれないか。仲介はトニーさんにお願いしてフェルナンデス家からの定期依頼にしてもらおうかな。数量についてはとりあえすNamelessが全部買おう」


「分かったわ」


 その後トニーさんとも話して快く引き受けてくれた。シュガの実とかを運ぶ際にも良いカモフラージュにもなるだろう。フェルナンデス家、いやこの街はこれから忙しくなる。その見返りとしての収入は驚くほどになるだろう。お義父さんもお義母さんも本当に喜んでくれた。良かったぜ。


「私も明日はリリーちゃんとお出かけよ」


「そうなの?」


「街をゆっくり見る暇がなかったから案内してもらうのよ。子供たちはシンディが見てくれるから久しぶりに楽しんでくるわ」


 ソニアはそう言うと、俺の後ろにリリーを見つけたのかこっちへと呼んだ。


「リリーちゃん、明日はよろしくね」


「ええ、ソニアお姉さま。明日は楽しみましょう!」


「ふーん、いいなぁ。どこにいくのさ?」


「何よ、あなた。どこでも良いでしょう?」


 リリーは俺の方を向いて舌を出した。頬っぺたをつねってやりたいぜ。


「ヒロくん、一緒にギルドに来ても良いのよ?」


「いいよ、明日はゆっくりするさ」


 明日は子供と水鉄砲大会、並びにフェルナンデス家の庭探検ごっこで決まりだな。この恐ろしくでかいフェルナンデス家の庭を皆で散歩しよう。実験に使った小屋なんて誰かが黙って住んでても誰も気が付かないんじゃないのかと心配になるぜ。





お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] >ラム酒と焼酎  一応、つっ込んどきますと、どちらも”蒸留酒”で、材料が違う程度で作り方はほぼ同じですよ。 参考資料:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%…
[良い点] 毎回、割と肩肘を張らずに気軽に読めるところが気に入っています。主人公も砕けている感じがして好感が持てます。 [気になる点] 以前はちょっと読み辛い感じがあったのですが、最近は試行錯誤してい…
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