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よろしくお願いします。
俺は今ソニアとクロードと共に街を歩いている。街を探索するのが目的だ。露店で物を買い、串焼きを買い、雑踏の雰囲気を感じる。
このアルガスの街はリンクルアデルで3番目に大きい街だそうだ。リンクルアデルには5つの領が存在して一つの国を成している。王都であるアデリーゼを中心に四方をそれぞれの領で囲む形だ。
街のサイズから順番に言うと、
1.アデリーゼ リンクルアデル中心に位置する街 王都
2.ウエストアデル リンクルアデル西に位置する街
3.アルガス リンクルアデル南に位置する街
4.バルボア リンクルアデル東に位置する街
5.リンクウッド リンクルアデル北に位置する街
となる。
この世界には当たり前に奴隷制度があって犯罪奴隷はもれなくリンクウッドに連れていかれるらしい。リンクウッドには鉱山がありそこでの発掘作業に充てられるとのこと。想像できるだけにこわい。
それ以外は街で働いたりしている。奴隷になる理由は様々で基本的に犯罪奴隷は奴隷紋が体のどこかに施されているが、借金などで将来奴隷でなくなる可能性がある場合は首輪をつけられる。
人権はある程度尊重されている。ただ【基本的に】とか【ある程度】ってのが引っかかるけどな。売る奴と買うやつがいる限り、そこにはなにがしかの闇というモノは必ず存在する。
それがその商売のどの過程で行われているかは知らないけどな。それに人は必ず物事に優劣をつけたがるものだ。奴隷と分かって優しくするタイプの人間ばかりではない。前世の歴史でもそうであったように。
「ヒロシ君は呑み込みが早いのね? もう長い間住んでるみたいよ?」
「いえ、紳士の嗜みとして故郷では空想とは言えこういう世界の文献を読んでおりましたので」
「へぇ、すごいわね。そのような書物があるのですね」
「えぇ、まあ。誰もが読んでる訳ではないと思いますが......」
「何が紳士の嗜みだよ」
「クロード! その言い方は失礼ですよ!」
「申し訳ありません、お嬢様。悪かったな」
「クロード!」
おやおや? クロード君は俺の事がお嫌いなのか? いいけどさ。中身がアラフィフの俺はそんなことで目くじらは立てない。長いリーマン生活と人生経験が生きている。
でも嘘は言ってないぞ。ラノベやらが好きな大人だっただけだ。人生何が役に立つのかホントに分かんないよな。
貨幣の価値だが正直まだよく分からん。日本と比べても仕方がないが串焼き2本が銅貨1枚だった。これを100円くらいの価値とみるのかどうか。原価はもちろん物価事情と通貨事情が分かんないからどうしようもないな。最高額の通貨は何だろうか?
ただ見た限り中世のようなこの街で、働く人は皆頑張っているように見えるし、その雰囲気は途上国のような熱気を感じる。
途上国の人間は出稼ぎに出ることに抵抗はないし、勉学に関しても貪欲だ。彼らのエネルギーはとてつもなく熱く、そして大きい。
少しでも金を稼ぎ、技術を盗もうとする姿勢には圧倒される。俺も前世は途上国で働いていたから彼らの情熱をこの身をもって感じたよ。
話が逸れてしまったが、税金を領ごとで設定しているのであれば話はもっとややこしくなる。同じ通貨で金の価値が変わりかねん。勉強することは多いぞ。まずは、何をするか......からだけどな。
そう言えば昨夜また例の声が聞こえたぞ。相変わらず一方的なアナウンスであったが、説明みたいだった。
要約するとこうだ。
”相原比呂士のスキルについてはその能力の特異性を考慮し、都度必要なものが付与されます。”
”スキルの内容については魂歴に上書きされるため、付与された瞬間に扱えるようになります。”
”スキルの内容に応じて体や精神も再編成されますが、基本構造に影響を与えることはありません。”
”相原比呂士の能力については特殊性、特異性の観点から能力とスキルの紐付けについて口外することが禁じられています。”
あとからソニアに聞いたけどスキルってのはいくつも持てるものではないらしい。発現は10歳前後から出始め、教会で成人の儀を行う際に神々の祝福によりスキル名が表示されるとか。
後は後天的にレベルアップ? した時に付与されることが稀にあるそうだ。そういう意味では確かに俺は特殊だな。迂闊に人には言えんぞ。だから俺の能力とスキルは殆ど文字化けだったんだな。パスで全部わかっちゃうからな。
「ヒロシ君どうかしましたか?」
おっと、少しボーっとしてたみたいだ。
「いえ、すみません。美味しい串焼きだなと思いまして」
「あら、気に入りました?この辺りは個人商店が多く並んでいてどれも美味しいのよ」
「クロードは街にはよく来るのかい?」
「お前に呼び捨てされる筋合いはない」
俺もお前にお前呼ばわりされる筋合いはないんだが。
「じゃぁ、クロちゃんで」
「子ども扱いするな!」
「クロード!」
難しいやつだ。ソニアさんも怒ってるぞ。ソニアさんは子供を2人も生んでるようには見えないくらい若くそして奇麗な人だ。いや、あどけなさがかすかに残る、かわいらしさと言うべきか。
「お嬢様。こいつがお嬢さんの事をいやらしい目で見てます。気を付けて下さい」
「クロード、いい加減にしないと怒るわよ?」
「......すみません」
クロード怒られてやんの。俺はソニアの後ろからクロードの顔をみて、ニヤッと笑ってやった。クロードの顔がみるみる赤くなってきてるぞ。クックック、俺はそう言うお茶目なことも忘れないデキル大人だ。
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