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よろしくお願いします。

「アリス!」


「はい!」


「これより俺は研究の日々へと突入する。毎度悪いがサポートを頼むぞ」


「はい!」


「今回は色々とお世話になった。完成したら真っ先にお前に差し上げよう」


「...いえ、そんな...お気遣いをして頂かなくても」


「相変わらず殊勝な事だ。とにかく頼むぞ、あとそれをこっちに向けるな」


「分かりました」

 

 そう言うとアリスはセンチピードデビルの足を前掛けのポケットにしまった。何でそれがそんなちっちゃなポケットに入るのだ? 少々疑問に感じたがまあ良い、さっさと開始しようではないか。俺は部屋に山積みにされたキビサトとシュガの実と向き合った。アリスはたまに様子を見に来ますと言って出て行ったがな。


 部屋には積み上げられた材料、それとお願いしていた器具が揃えられていた。要するにこの二つの材料を結晶化するまで煮込めばよいのだ。まずはキビサトの球根を砕いて汁を絞り出す。煮込んで灰汁を取る。濾過をして煮詰める。シュガの実を適当なタイミングで放り込んで煮込んで濾過を繰り返せば、はいお砂糖の出来上がり。


 そんな軽い気持ちで始めた実験であったが全く上手くいかない。当たり前か、少々舐めていた。


「しかし、いくら煮てもドロドロで白くなる気配が全くない。何故だ。文句を言いたくはないが、鑑定もレシピまで書いてくれたら良いのに。いやいや、自分で言うのもなんだが、頂いた恩恵に文句を言うべきではないな。ごめんなさい」


 俺はアザベル様がいると思われる方向、勝手に決めただけだが、に手を合わせて謝っておいた。


 とりあえず冷やして固まったモノを見てみるとそれらしい形にはなっている。


「これでは黒砂糖だな。うむ、甘い。砂糖自体が出来るのは間違いないな。これはこれで色々と使い道はありそうだ。目指す白砂糖の低位版として売り出せばよいか」


 今ある砂糖、サトウダイコンみたいなもので作っている砂糖も実は黒砂糖である。つまりここ段階まではこの世界でも一般的に知られている製法という事である。現存のものはシュガの実は使用していないのでキビサトで黒砂糖の生産ができるだけでも当初の目的は達成したと言える。だがそこはやはりもう一段階レベルを上げたい。それでこそドルスカーナの主力になり得るのではないか?


「ムッフッフ、流石は俺様だけのことはある。向上心が留まる事を知らねぇぜ。ん?」

 

 出来上がった黒砂糖を食べていると、知らぬ間にアリスがそばに来ていた。黒砂糖をポリポリと齧っている。


「アリスじゃないか、丁度いい所に来た。実は黒砂糖が...なんだもう食べてるのか」


「はい、甘くておいしいです」


「そうだろう、そうだろう。これをもっと上品に仕上げるつもりだから楽しみにしておくと良い」


「......これで十分ではないでしょうか?」


「何を言っているんだ。大儲けするにはもうひと手間必要だ...グフフ」


「なぜか胸騒ぎがしますが大丈夫でしょうか?」


「バカモノ、それは胸騒ぎではない、期待でドキドキしているのだよ」


「だと良いですケド」


「当然だ」


「それじゃ、わたしはまた子供たちの方へ行っておりますので。後でまた来ます。これ少し持って行っても良いですか?」


「ああ、いいぞ。そうだな。皆にも分けてやるなら全部持って行ったら良い。なに、まだ材料はあるからな。また最初から作るさ。でも、ひとかけらだけ残してくれるか? 俺ももうちょっとだけ食べたい」


「分かりました、ありがとうございます」


 そう言って、アリスは出て行った。よし、それではまた頑張るか。だが頑張るにせよ一体どうすれば良いのか。俺はそう思って黒砂糖を口に入れようとして閃いた。これも鑑定してみるか。


≪鑑定≫

 キビサトの黒砂糖 甘い 甘味物を作るのに最適

 黒砂糖製造時に捨てている灰汁を戻し、再度黒砂糖とシュガの実と一緒に煮詰めると白くなるのだよ

 再度煮詰める際に膨張するので容器は絶対に密閉しない事


 『のだよ?』 なんだか鑑定っぽくない説明だな。いや今はそこじゃない。出来上がった黒砂糖に灰汁を戻して煮詰めると白くなるのか。よく分からん原理だが漂白作用が生まれるのかな? まあ細かい事は良い、いつもよりサービスが良い鑑定がそう言っているのだ間違いないだろう。


 これで出来たも同然だ。俺は残りのキビサトの球根を全部加工し黒砂糖を作り上げた。流石にかなりの時間が経過してしまった。眠くて仕方がないぜ。灰汁は違う鍋へとちゃんと分けて置いている。よし、この大量の黒砂糖は一気に全部漂白しよう。大丈夫だ、鑑定を信じるのだ。


 俺はでかい鍋に大量の黒砂糖、灰汁、そしてシュガの実を放り込み煮込み始めた。しかしなぜこの世界の鍋は全部魔女鍋なんだ。俺は大きなヘラで鍋をかき混ぜながら考える、答えなど出るはずもないが。おっと、そろそろきちんと密閉しておかなくてはな。キヒヒあと一歩だ。


 今回の魔女鍋は蓋にロックが掛かる金具がついている。それをパチンパチンと嵌め込むと俺は近くの椅子に座りコーヒーを飲む。さて後は完成を待つばかりと。これでNamelessに金が大量に舞い込むぞ。キヒヒヒ、楽なお仕事だぜ。シュガーキングになる日はもうすぐそこだウキョキョキョ。そう思う事しばらく、俺は突然ある事に思いに至った。


「鍋は密閉させるんだったっけ?」







お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。



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