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今日はこれで最後になるかと思います。

 なん......だと。


「じいさん、その話は本当なのかい?」


「本当よ」


 ソニアさんが代わりに答えた。


「おじいちゃんではなく、私が聞いたの。何かおかしな夢を見たって。同じ夢なんだって。おじいちゃんが呪いかもって言ってたけど私も後から思えばそうなんじゃないかって。でもドラゴンの呪いだとすると辻褄が合わないことがあって......」


 ドラゴンの呪いってなんだよ。


「ドラゴンが関係することと、死ぬかもしれないって言いだした時期が合わないの。レオンは夢の中でこれから死ぬことになるが、思い残すことはないかって誰かにしつこく聞かれたって言ってたわ。家族と離れることになるが良いか? とかもし違う国に行ったらどのように生きたいか? とか」


「似てるな......俺の時は明確に死ぬとは聞かされなかったけど」


「ええ、私も今聞いて驚いてるの」


「ヒロシよ、どう思う? レオンは生きているのかの?」


「すまないが、何とも言えない......としか言えない。俺が理解しているのは少なくとも2度と元の世界には戻れないってことだ。生きているか死んでいるかと言えば死んでいると考えるのが自然だろう。だって、レオンさんはここで息を引き取ったのだろう? それは事実だ。だから彼の場合は魂をどこか違う場所へ移し、生まれ変わっている可能性があるかもしれん。つまり転移ではなく転生だ。どこの世界かは分からんが、この世界ではないと思う。神様同士の約定があるそうだしな」


「つまり、レオンは転生しているかも知れないという事か」


「多分......だけどな。俺自身分かってないんだから。すまん、こんな言い方しかできないが。ただ一つ、レオンさんは前世、こちらの世界の事だな。その記憶の一切を失っているはずだ」


「そうなのか?」


「あぁ、俺も本来はこちらの世界についた時に全ての記憶はなくなるはずだったみたいなんだ。ただ、俺の持っている能力と言うか、そのようなもので記憶の消去が出来なかったらしい。だからレオンさんはそのまま転移したと言うより、神様に選ばれて転生したと言った方が良いかと思う」


「いや、十分じゃよ。既に他界したが、違う人間としてもしかしたら違う場所で元気に暮らしているのかもしれんとはな。大変な目にあってなければよいがの......」


「それは何と言うか、大丈夫だと思うぞ。向こう側の世界の神様が上手くやってくれると思う」


「どういうことじゃ?」


「これも一部俺の仮説が入るが、何かの事情で死ぬことが避けられない人間に、神様たちが手を差し伸べているらしい。何か目的もあるような感じだったけど、悪くはしないと思う」


「そうか、それならいいが」


「幼い子供と奥さんを残して逝くのは辛かっただろうな。その分神様も分かってくれてると思うぞ」


 祖父母とソニアはそっと涙を拭っている。説明が下手ですまんが言ってることは本当だ。レオンさんも新しい人生を頑張ってるだろう。大変だとは思うけどな。


「一つこっちからも質問だけど、レオンさんは夢の中で自分の思いは話したのかな?」


「ええ、しつこく聞いてくるから思いつく限りお願いしたと言ってたわ」


「なら間違いないさ」


 レオンさん、やるな。


 じいさんが立ち上がって窓を開けた。

 涙を拭き声をかける。


「セバス!」


 セバスがメイドを連れて入ってくる。お前ら目が赤いぞ、絶対に聞いてたろ?じいさんはお茶を入れ替えるように指示を出したあと俺の部屋を用意するように伝えた。


「ヒロシよ。そういう事だ。お前は神が遣わしたいわば世界の迷い人じゃ。神が遣わしたことに意味がないとは思えん。どうかアルガスの街、いやリンクルアデルの為に共に頑張ろうではないか」


「いや、気持ちは有り難いけど何ができるかわかんないんだけどね」


「追々見つけていけばいいさ。セバス、ヒロシに誰かひとり付き人をつけろ」


「畏まりました」


「おじいちゃん。私も手伝ってあげるわ」


「ソニア、そうかでは頼めるか。まずはこの街の事や常識など色々見て回るがいい。そして何か思いつくことが有ったら何でも言ってくれ」


「わかったわ」


「あぁ、助かるよ。本当に何から何まで済まない」


 しばらくして、セバスが一人の男性を連れてきた。年若く見た目は20歳前後か?


「旦那様、連れて参りました。この者は名をクロードと言いまして男爵家に13歳から仕えてもう7年になります。年もヒロシ様と近く、所作はもちろん文武両道でございます」


「そうか、クロード。くれぐれもよろしく頼むぞ。お前はヒロシの専任として仕えよ」


「畏まりました、旦那様」


「いいのかよ?そんなの。プレッシャーなんだけど」


「良いのだ。これ位はしたいようにさせてくれ」


 その時、俺はクロードの俺を見る目に暗い影が落ちていることに気づいていなかった。






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