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よろしくお願いします。

「全員殺すだと? 思い上がりも甚だしい。ジェイソン!」


「はっ、行け! あいつらを殺せ!」


 周りに控えていた数人の男たちが一斉に動き出す。最初に仮面の男に近づいた男が一瞬重なったかと思うと、背中側に槍の穂先が飛び出てきた。そのまま持ち上げられ無造作に床へと投げ捨てられる。つまらなさそうにヒロシは倒れた男を見たかと思うと視線をアランへと向けたままシンディへと話しかけた。


「この部屋は一人じゃないのか? シンディ、雑魚は任せる。俺に近づけさせるな」


「分かりました、ご武運を」


 ジェイソンはその様子を見ると、奥にいる男に声を掛けた。


「フレディ! 出番だ。あの仮面の男を殺せ!」



-----------------------------------


 

 一人の男がゆっくりとヒロシに近づいてきた。同じく黒装束に身を包んでいる。ヒロシはチラッとソニア達に目を向ける。大丈夫まだ生きている。間に合った事に安堵すると共に沸き上がる衝動に抑えが利かない。


「俺の名前はフレデ......」


「喋るなと言っただろう、お前の名前なんぞ覚えた所で意味などない。そこをどけ」


 フレディはギリっと一瞬歯ぎしりを下かと思うと、一直線にヒロシへと肉薄した。しかしそれを容易く受け入れるヒロシではない。偃月刀を構え迎撃する。『青鷺火(あおさぎのひ)』から繰り出される高速連弾。


「蓮華の型、流れ四連」


 驚いたことにフレディは避ける事はせず、その斬撃全てを受ける。受けながらも懐へと入り込みヒロシの膝を蹴りつけ体勢を崩すと迷うことなく首筋へと拳を繰り出した。ヒロシは態勢を崩しながらも体を捻る事でそれを避け、偃月刀を横薙ぎに振るう。しかし、そこにフレディの姿はもうない。ヒロシの首筋には裂傷が走り、血が零れ落ちる。

 

「はっ、温いな。所詮は竹やりを振り回す事しかできぬ輩か。あと数センチずれていたら殺せたものを」


「ふん、お前は騎士の類ではなさそうだな? どう見てもナリと戦い方が暗殺者のそれだ」


 フレディは再びヒロシへの間を詰めるかと思われたが、手からナイフを投擲する。難なく偃月刀を操りそれを叩き落とすがその間にフレディは再び間合いの中へとその身を入れてくる。右手の短剣を躱し、蹴りを受け、接近戦の攻防が繰り広げられる。放った肘打ちを流れるように躱し、態勢を低くしたままフレディは伸び切った腕をヒロシの脇腹へと添える。伸びきった腕から威力のある攻撃など出せるはずもなく、ヒロシは腕を固めてそのまま関節を折ろうとしたその時......


デモンズハンマー(悪魔の一撃)


 衝撃音がしたかと思うと、ヒロシは横に弾かれ床へと転がる。仮面の下から血が流れ落ちるのが見える。すぐに態勢を立て直すが、それを許す間もなくフレディは追撃を仕掛けに迫る。手からはナイフが投擲され、避ける動作をして、偃月刀を戻す瞬間を狙い懐へと入り込む。


「エアバレット」


「デモンズフレイム」


 そしてそこから繰り出されるフレディの魔法。ヒロシは何度も攻撃を受け弾き飛ばされる。


「ガハァ」


「ウインダムを破った仮面の男(マスカレード)などと言うから多少は楽しみにしていたのだ。だが蓋を開けてみれば全くの期待外れだ。実につまらん。興味が失せた。そこで死ね」


 外から見ていても分かるくらいに一方的に嬲られている。致命傷は避けてはいるのだろうが、明らかに戦闘がかみ合っていない。本来槍のような武器は近接戦闘に向いてないとされる。中に入られると長尺の武器は回転が遅く、肉弾戦では相手にならない。


 だがそれは槍の特性を勘違いしている者が言う事である。フレディを一流とするならば長距離が得意とされる槍とも渡り合える。その技量次第によって、扱うものによってその特性は大きく変化するのだ。それはあらゆるレンジの武器を扱う者の全てに当てはまるだろう。


 長きに渡り薙刀と言う武器で戦国の世を駆け抜け、歴代の将軍家をその圧倒的な『武』で守護してきた『相川家伝月影流薙刀術』。現代にまで伝わる一子相伝のこの流派がその欠点を払拭していないとでも?


答えは......断じて『否』である。


「貴様、一体どこを見ている! もはや焦点も定まらぬか! 死ねぇ!」


「さっきからチマチマ鬱陶しいぞ、この羽虫が! どけぇ!」


 フレディがヒロシの体へと、その射程へと入り込むその僅か瞬間に突然横殴りに吹き飛ばされる。何だ今のは? 蹴られたのか、殴られたのか? 理解が追いつかぬままフレディは直ぐに立ち上がりヒロシへと対峙する。ヒロシは石突きを前に出しており、恐らく偃月刀を回転させてフレディへと攻撃したのだろう。


「ふん、まぐれが当たったくらいで喜ぶな。行くぞ!」


「言ったはずだ、邪魔するなら殺す」


「よそ見している余裕がある割には、吐く言葉には悲壮感が漂っているぞ。この負け犬が!」


「ああ、否定はしないさ。少しばかり焦っていたことはな。悪いがここからは本気で行かせてもらう」


 ヒロシは偃月刀の石突きを右肩上にあげ、刃を下向きにして左足先へと落とす構えを取った。その瞬間に体から発せられる威圧を含んだオーラは先ほどまでのモノとは質が全く変わっており、辺り一面を駆け抜ける。相手を見据えたヒロシはゆっくりと、そしてはっきりと言葉を紡いだ。


「相原家伝月影流薙刀術......その身に受けてみよ」


 

お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

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