表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

154/362

150

本日二話目となります。

よろしくお願いします。

「ううっ」


 私は意識を取り戻した。ここは......どこなのだろうか。脇にはアンジェとフランツ王子が倒れている。薄暗い部屋の一室。見た所窓には鉄格子が嵌められており、天窓が一つ。そこから丁度月明かりが私たちを照らしている。察するところ拉致されたのだろう。おじいさまが斬られたのをこの目で見た。おじさまは大丈夫だろうか? おじいさまの事だ、きっと無事だ。そう信じるしかない。


「アンジェ、フランツ王子、大丈夫ですか? しっかりして下さい。」


「う、ううん」


 ややあって二人とも目を覚ました。二人とも突然の出来事に現状が理解できていない。もちろん私もそうだ。ここはどこで、誰に拉致され、何の目的で連れて来られているのか? 部屋には質素なベッドと椅子が数脚置かれているだけでテーブルすらない。三人でベットの横に固まった所でライトが付いた。


「お目覚めですかな? アンジェリーナ王女、フランツ王子。あとはソニア嬢でしたか」


 男は執事と思わしき人物と護衛の人間を連れて中へと入ってきた。男についてはアンジェが知っているようだ。


「あなたは......アラン公爵ですね。ここはどこなのですか? 私たちは部屋で何者かに襲われたのですが......もしかして助けてくれたのですか?」


「助ける? ハッハッハ、聞いたか、ジェイソンよ? 相変わらず能天気な事だ。あなた方はここバルボアに国家独立の為にお越し頂いているんですよ。大切な駒としてね」


「独立......ですって?」


「そうだ、愚かなシュバルツの下ではこの先リンクルアデルに繁栄はない。だから余がバルボア国を統治し、いずれあの愚王に変わってリンクルアデルを治めてやろうと言うのだ」


「なんという事を。そのような事を父上がお許しになるとは思えません」


「だから能天気だと言うのだ。既に宣言が成された今、独立が認められなければ戦争になるだけだ。10日間の期限を設け話し合いの機会を与えはしたが、愚かなやつらは攻め込んでくるだろう。それがお前の父のやり方だ。」


「そんなこと......」


「何を都合の良い事を。話し合いなどする訳がないでしょう。」


「フン、男爵の孫娘か」


「城に押し入り、城内の人間はおろか男爵までもその手に掛け、国の跡継ぎを拉致しておきながら話し合いの場を設けているなど。あなたのやっていることは独立の為ではありません。これはクーデターです」


 そこまで言うと側にいたジェイソンと言う男が口を開いた。


「口を慎め、女。本来貴様などあの老いぼれとその場で切り捨てても良かったのだ。アラン陛下の指示で命拾いしたと言う事を忘れるな」


「君はヒロシと言う男に対して切り札になりそうだからね。まあ普通に考えて時間的に間に合うとは思えないが、本当にウインダムと同等の力を持つ者であれば脅威になる可能性がある。君は保険だ」


「その男が来なければお前は用済みだ。すぐに老いぼれの後を追わせてやる」


 それを最後に二人の男は部屋から出ていった。周りに見張りもいない。窓からの景色を見るに塔内に幽閉されているのだろう。入り口はひとつ。外から鍵がかけられている。フランツ王子はアンジェに抱きついてはいるが、泣いたり取り乱したりはしていない。私は王子を挟む形で腰かけアンジェと王子を抱きしめた。


「アンジェ、フランツ王子、大丈夫です。きっと助けが来てくれます」


「お姉さま、ゾイド男爵は本当に?」


「分かりません。でもおじいさまは強い方です。きっと大丈夫と信じるだけです。私たちも希望を持ちましょう」


 

 それから数日後の明け方、怒声が聞こえてくる。アンジェと窓から外を見ると同じ目線でリンクルアデルの飛行船がこちらに向かって着陸、いや突っ込んでくるようだった。着地も滑り込むような形でゲートからは騎士団が飛び出してきた。それに向かって魔獣や兵士たちが向かい、激突し、戦闘が始まった。


「アンジェ、言っておかないといけない事があるわ。覚悟して聞いて」


「お姉さま......」


「反逆者のアランは私たちは人質だと言いました。それはこの戦闘を見越していたからだと思います。しかし、この戦闘に負けた場合や、もしくはアランが敗北する可能性が高くなった場合、私たちはどうなるか分かりません。いえ、はっきり言うと命を落とす可能性が高いわ」


「これでも王族の端くれです。覚悟はできております。ただフランツが不憫でなりません」


「私は最後まであなた達と一緒よ。ただ今は皆が来てくれることを祈りましょう。大丈夫、きっと皆が助けに来てくれるわ」



-------------------------------------



俺たちは穀物庫を抜けて城内へと侵入した。レイブンさんの言った通り城内にはほとんど兵士らしい兵士が居ない。元々少ない兵士が城外の戦闘に出ているのだろうが、いくら何でも少なすぎやしないか。たまに襲ってくる衛兵は脅威にもならず、シンディ、クロードとガイアスが倒している。脅威と言うよりもしかして雇われ兵なのかも知れないな。追いかけてくるわけでもなく積極的に襲ってくるわけでもない。バルボアもこのような忠誠度で良く独立などほざけたものだ。全て奴隷に落とすと言うのもあながち間違いではないだろう。


 そんな事を考えながらほとんどもぬけの殻になったような城内を走る。幽閉されていそうな塔と言えば北側に見えたあれだろう。ラースもその辺りで待機しているはずだ。渡り廊下の前あたりから兵士が倒れているのが見えた。胸に矢を受けている所からするとでラースがいるのだろう。一気に渡らせてもらう。


 塔の前に到着すると柱の陰からラースが出てきた。人質の確認は出来なかったらしいが、アランがこの建物に側近と入ったのは聞きだせたそうだ。恐らく柱から足だけ見えているあの兵士から聞き出したのだろう。なら後はやる事は一つだ。ドアを開け、階段を上り、人質を返してもらう。


「行くぞ」


 ガイアスがドアに手を掛けて思い切り押し込む。ドアにはかぎが掛かっておらず扉は両方に開かれた。


「けっ、兵士が少ないと思ったらここに集めてたってことかよ」


 俺たちが入ると正面には兵士が並んでいる。二階の広間、その真ん中に立つ男が話はじめた。


「何人かは初めましてになりますかな。私はジェイソン、陛下の側近だ。いずれはリンクルアデル軍務卿となる。すぐ死んでしまうだろうがお見知りおきを。ひいふうみい......8名か。お前達が死ねばリンクルアデルも手に入ったも同然と言う事だ。それではまた来世でお会いしよう。全員殺せ!」


 ジェイソンはそのまま後ろの扉から姿を消した。何が来世だと? すぐに会いに行ってやるから待っていろ。


「ヒロシさん、あいつらは俺とラースで引き受ける。隙を見て先に進んでくれ。」


「ヒロシ様、私も残りましょう。シンディはヒロシ様と共に行ってくれ」


「クロード、いいのか? ヒロシさんの護衛は?」


「ヒロシ様の護衛はシンディの役目です。フィルの代わりにお付き合いしましょう」


「上等だ。それじゃぁ行くぜ!」


 そう言うとガイアスとクロは飛び出して行った。俺たちも後に続く。ガイアスは両手から魔法を生み出し乱射する。ラースは次々と矢を放つ。クロは後方からの援護を受けひるんだ敵に一気に肉薄し攻撃を仕掛けて行く。それを横目に俺たちは二階に登ると今度はセイラムが魔法で兵士たちを一気に焼き払う。こういう時に広範囲で攻撃できる魔法は力強い。セイラムは兵士の落とした剣を拾いすれ違いざまに切り付けて行く。


「ガイアスさん、流石魔法剣士ですね。だけどセイラムさんとはちょっと戦い方が違うようだけど」


「俺は騎士様じゃないからな。騎士道ではなくその都度手っ取り早い方でやるだけだ。それを言うならお前もだクロード。執事にしておくには勿体ねぇぜ! ヒロシさん、先へ行ってくれ! すぐに追いつく!」


 俺は頷くと二階の広間を抜け三階へと向かった。ドアを開けるとそこには明らかに一兵卒の戦闘服とは違う男がいた。こいつ......しかいないのか?


「初めまして、ですな。ジャッジメントのリーメルト。どうです? ここからは騎士らしく一騎打ちと行きませんか? ウインダムとジャッジメント。リンクルアデルの行く末を占うには丁度良い」


「セイラム、誰だあのバカは? 付き合ってられるか。おいお前、俺はお前らの騎士道なぞ興味はないんだ。死にたくなかったらさっさと道を開けろ」


「別に通りたければ通れば良い。ただ一人はここに残ってもらう。勝った方が後から助けに行けるのだから構わないだろう? それともウインダムはやはり腰抜けばかりと言う事か」


「知るか、俺はウインダムでも騎士団でもないっつって......」


「いいでしょう、私が残るわ。皆は先に言って頂戴。先に進めるなら逆に都合が良いわ」


「お兄ちゃ......ヒロシさん、騎士団にも大義がある。カルディナの言う通り先に進めるなら進むべきだ」


「カルディナは大丈夫なのか?」


「騎士団の二番隊長の名は伊達ではないよ。この間はちょっと実力が出せなかっただけだよ」


「そうか。カルディナ、後から追いかけてこいよ」


「ええ、もちろんよ」



お読み頂きありがとうございます。

引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ